FeNi磁石材料の高純度合成に世界初成功、レアアースフリー磁石の実用化に期待

2017年10月23日 11:51

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NITE法で合成したFeNi超格子のSTEM-EDX像。(a)は左図の結晶上面から原子像を観察した結果、(b)は左図の結晶側面から原子像を観察した結果。(画像:新エネルギー・産業技術総合開発機構発表資料より)

NITE法で合成したFeNi超格子のSTEM-EDX像。(a)は左図の結晶上面から原子像を観察した結果、(b)は左図の結晶側面から原子像を観察した結果。(画像:新エネルギー・産業技術総合開発機構発表資料より)[写真拡大]

 モーターの省エネ化に資する、レアアースフリー磁石の開発が期待される。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、鉄(Fe)とニッケル(Ni)が原子レベルで規則的に配列される超格子磁石材料の高純度合成に世界で初めて成功した。

【こちらも】レアメタルを一切使用しないFeNi磁石を作製することに成功―東北大・牧野彰宏氏ら

 問題はモーターである。今日、モーターというものは文明の下支えの要をなす存在である。現状でも、日本の総消費電力の過半を、モーターが占めている。その上、自動車の電動化などの動きを受け、その需要は今後さらに拡大していくと見られる。

 であるからして、モーターの省エネ化は、国レベルの、そして全地球的レベルの、中長期的エネルギー戦略において最重要課題の一つとなっている。

 モーターの効率において重要なものは、磁石や鉄心(軟磁性材料)などの磁性材料である。現在生産されている永久磁石には、いわゆるレアアース、重希土類元素(主にジスプロシウム)を必要とするものが多い。

 レアアースは産出地が限定的であるため、供給に様々なリスクがある。レアアースそのものをたとえば海底などから回収する方法論を開拓しようとする動きもあるが、それとは別に、レアアースを必要としない高性能磁石、レアアースフリー磁石の研究も進められている。

 レアアースフリー磁石となる素材の一つに、FeNi超格子磁石材料がある。1960年代に隕石の中から発見され、その性質については分析されていたが、その後50年以上に渡って、高純度合成に成功したものは誰もいなかった。しかし、デンソー、東北大学、筑波大学の産学連携グループが、ついにこれを成功させたのである。

 今後の展望としては、これをモーター用の永久磁石に適用するための、材料形状や成形法を検討していきたいという。

 なお、研究の詳細は、英国の科学雑誌Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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