新たな物理現象「iTMC効果」を発見、磁気メモリ開発等に応用可能か

2017年6月4日 07:28

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iTMC効果の概念図。(画像:北海道大学発表資料より)

iTMC効果の概念図。(画像:北海道大学発表資料より)[写真拡大]

 北海道大学、東北大学、ブラウン大学(米国)などの国際共同研究グループは、未知の現象である「逆磁気キャパシタンス(iTMC)効果」を発見した。新しいタイプの高感度磁気センサー、磁気メモリなどの開発に道が拓かれる可能性があるという。

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 既に知られていた現象として、TMC効果、というものがある。磁場の影響によって、キャパシタンス(電気容量、電気が溜まる量のこと)が順方向に変化する現象のことである。

 iTMC効果というのは、端的にいえばこれの逆で、磁場によってキャパシタンスが逆方向に変化する現象であるが、これまでは観測例が知られていなかったのだ。

 今回の研究に用いられたのは、鉄と、酸化鉄である。いずれもポピュラーな物質であり、ありふれたマテリアルであるが、研究グループはこれに着目した。誰もが知るように、鉄は磁石にくっつく。酸化鉄も磁石にくっつくのだが、鉄と同じ方向に磁化させると、電流を担う電子のスピン(回転)が鉄とは逆向きになるという性質を持つ。

 これを利用すれば、TMC効果の逆の現象を見出せるではないか、というのが今回の研究のアイデアだ。

 このアイデアのもと、研究グループは、鉄と酸化鉄の間に薄い酸化アルミニウムを挟んだ、「磁気トンネル接合」なるものを作成した。すると、これを磁場の中にセットしたとき、鉄と酸化鉄の磁化が並行であるときキャパシタンスは小さく、反平行のとき大きくなることが明らかになった。これが、逆磁気キャパシタンス効果である。

 また研究グループは、これが未知の現象であったことから、周波数特性や直流電力依存性などの因子を操作して、様々な検討を繰り返し、再現性を確かめている。

 この研究が発端となってこの分野の研究が進めば、将来的には、パソコンやスマートフォンに搭載される不揮発性メモリ、磁気カードリーダーやGPSなどに用いられるセンサー素子などへの応用が可能になるのではないかという。

 なお、研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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