「スワッ!事件」の米雇用統計改善の緊急対応でまず「リターン・リバーサル」に狙い目=浅妻昭治

2013年11月11日 10:52

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【浅妻昭治のマーケット・センサー】

  「これは事件ですね」である。サプライズを通り越している。前週末8日に発表された米国の10月の雇用統計である。非農業部門の雇用者数が、20万4000人も増加し、10~12万人増と観測していた市場予想を大きく上回り、8月、9月の雇用者数も上方修正されたからだ。10月1日から財政協議の不調で一部政府機関が閉鎖され、雇用状況にアゲインストとなると観測されていたのとは、まったく逆転したことになった。

  この結果、何が起こったか?ドル高、株高、債券安である。円相場は、一気に1ドル=99円台に乗せる円安・ドル高となり、ニューヨークダウは、167ドル高と急反発して史上最高値を更新、債券安で長期金利は、2.7%台へハネ返った。市場では、来年2~3月と誰もがほぼ一致して予想していたFRB(連邦準備制度理事会)の量的緩和策第3弾(QE3)の縮小が、次回の12月17~18日開催のFOMC(公開市場委員会)に前倒しされるとの観測が強まったことが背景である。

  にわかにFRBの次の一手がクローズアップされ、11月13日のバーナンキFRB議長の講演会、14日の次期議長に就任するイエレンFRB副議長の議会公聴会での発言などが、大きな株価材料として急浮上することとなった。雇用統計の改善が、一過性の特殊要因による好転にとどまるのか、それとも金融政策の新たなステージ入り、株式市場のトレンド転換の引き金になるのか見極めようとするムードが強まるためだ。週明けの東京市場はもちろん、韓国、中国、アジア各市場の新興国市場の動向に神経を尖らし、相場の方向性を探る動きが強まることは間違いない。

  この緊急事態にどう対処するか?もしトレンド転換の前触れであるとすれが、もちろん「リターン・リバーサル」が狙い目となる。これまで下げが厳しかった銘柄ほど良く戻るとする投資テクニックの定石にトライする価値が生じてくる。「悪いヤツほど良く上がる」である。現に前週末8日の米国ADR(預託証券)市場で、円換算値の株価が最も上昇率が高かったのは、アドバンテスト <6857> で、これに野村ホールディングス <8604> 、三井住友フィナンシャルグループ <8316> などが続いた。

  アドバンテストの株価は、今年9月に今3月期業績を下方修正、通期純利益が、期初の黒字転換予想から連続赤字に落ち込むことを嫌って年初来安値1061円まで突っ込み、10月の1288円の戻り高値へこの急落幅をリカバリーする底上げを演じたが、同高値時で発表した今期4~9月期(第2四半期、2Q)業績が赤字転落して着地したことで再度、急落し前週末に安値目前の1087円と売られる場面があったばかりである。野村HDも、10月29日に発表した今期2Q累計決算が、大幅続伸して着地し、中間配当も増配したが、第1四半期の3カ月分に比べ2Qの3カ月分の利益が3~4割も減益となったことを売って、700円台で下値を試す展開となった。「リターン・リバーサル」狙いでは、この下げた分だけ戻してくれることが期待できることになる。

  もしこの「リターン・リバーサル」狙いが有効なら、それこそ候補株は数限りなく多い。そのなかでもインパクトが大きいのは、この10月中旬以来の2Q累計決算発表時に今期業績を下方修正したり、利益水準が市場予想に届かなかったりで売られた主力株ということになり、緊急リサーチする必要が高まる。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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