PATEO、車載AI BoxにNVIDIAとByteDanceのAI搭載―通信圏外でも音声対話

2026年11月5日 12:40

印刷

記事提供元:Tech Times

(PATEO.com)

(PATEO.com)[写真拡大]

中国の車載通信・コックピット技術企業PATEOは2026年11月3日付の発表で、NVIDIAの音声認識モデルとByteDanceの言語モデルを組み込む「AI Box」の詳細を公表した。同社によると、車載ハードウェア上でAI推論を実行し、通信が制限される環境でも基本的な音声対話機能を利用できる。

■既存の制御チップにAI演算能力を追加

AI Boxは、NVIDIAの車載コンピューティング基盤「NVIDIA DRIVE AGX Thor」を採用する。既存のメイン制御チップを維持しながら、AI処理用の演算能力を追加する構成だ。

PATEOは、モジュール型のソフトウェア構成と車両システムとの統合により、自動車メーカーや車両プログラムごとにモデルを展開・調整できるとしている。ソフトウェア更新だけでは大規模モデルや複数の入力を扱うAI機能に対応しにくい既存車両についても、演算能力を増設する方法を提示する。

音声認識にはNVIDIA「Nemotron 3.5 ASR」、言語処理にはByteDanceとの協業で統合した総パラメータ数350億の「Doubao」を用いる。PATEOの発表では、音声合成と、意味分類や要求の拒否を担う20億パラメータの言語モデルも組み合わせる。

同社によると、このモデル群はクラウドに接続せずに推論を実行し、多言語の音声対話や、入力された音声を逐次処理するリアルタイム音声認識を支える。オンラインサービスやクラウド経由の更新によって、利用できる機能を拡張する構成だ。

■350億パラメータを支える演算性能とメモリ

NVIDIAが公開するDRIVE AGX Thor開発プラットフォームの仕様では、AI演算性能は最大1000 INT8 TOPS、メモリ帯域幅は最大273GB/秒となる。INT8 TOPSは8ビット整数演算の処理能力を示す指標で、1000 TOPSは毎秒1000兆回の演算に相当する。

車載で会話を継続するには、ピーク演算性能に加え、メモリの容量とデータ転送能力も重要になる。PATEOは、会話やAIエージェントの処理に伴って文脈が蓄積すると、キー・バリュー(KV)キャッシュが大きくなり、メモリへの要求が増えると説明している。

KVキャッシュは、応答生成で使う過去の計算結果を保存し、同じ計算の繰り返しを減らす仕組みだ。扱う文脈が長くなるほど保存・読み出しするデータが増えるため、メモリ帯域幅の不足は応答の遅延につながり得る。

Doubaoは「混合エキスパート(MoE)」型のモデルである。入力に応じて内部のエキスパートと呼ばれるネットワークの一部を選んで使い、モデル全体の規模を確保しながら、各入力の処理に必要な演算量を抑える構造を採る。

■音声・視覚・センサーを組み合わせて車内を支援

PATEOの「AI Agent」プラットフォームは、音声、視覚、センサーからの入力を組み合わせ、利用者の要求や車内の状況を解釈する。同社によると、車両の安全上の許可範囲で車内機能やオンラインサービスを呼び出し、並行するタスクや処理に時間のかかる要求を管理できる。

利用場面としては、音声やジェスチャーで運転席と助手席の空調を個別に調整する操作を挙げる。長時間の高速道路走行中にはドライバーの疲労を検知し、窓を開けるか、シートマッサージを作動させるかを尋ねるという。

空気環境の悪い地域では、位置情報や学習した運転習慣に基づき、窓を閉めて内気循環に切り替えることを提案する。また、「Sentinel AI」は駐車違反、洪水、火災などのリスクを認識して警告する機能と説明されている。

ユーザーの許可を得て、好みや習慣を記憶し、その後の対話や提案を個人に合わせる機能も備える。音声による指示への応答に加え、車内外の状況に応じた提案まで扱うことが、PATEOの示す利用像だ。

■2027年の量産と継続収益型サービスを目指す

PATEOは北京で開催されたAuto China 2026で、ByteDanceおよび有力な新エネルギー車メーカーとの共同開発を公表した。同社によると、新世代車向けの採用指名を獲得しており、その車両プログラムの量産開始は2027年第2四半期を見込む。自動車メーカー名は公表していない。

事業面では、ハードウェア納入に加えてAI機能の展開・利用から継続収益を得る「車載Tokenomics」戦略を進める。利用量に応じたAIサービスや演算資源の課金を検討し、導入後のサービス運営へ事業を広げる構想だ。

2026年6月には、Xunce Technology、Saimo Technologyとの協業で、トークンを基盤とするフィジカルAIの世界モデルや「TokenOS」の共同開発を掲げた。Saimo Technologyの開示資料では、トークンをAIモデルの呼び出し、データ処理、エージェントのタスクなどを計測・課金する内部単位と定義している。同月に発表したMininglamp Technologyとの提携では、車載AIの演算基盤、車内向けサービス、トークン経済の商用化に取り組む。

PATEOは、国内の有力なロボティクス向けコンピューティング企業からも案件の採用指名を受けたとしている。車載向けに培った対話技術とハードウェア設計をロボティクスにも展開し、AI Boxを軸に、車内システムの供給から継続的なAIサービスの提供へ事業領域を広げようとしている。

元記事: PATEO, NVIDIA and ByteDance Just Redefined What a Car’s Voice Assistant Can Actually Do

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード