フレゼニウス、WuXi Biologicsと最大37候補のバイオシミラー開発契約
ドイツの医療大手フレゼニウスは2026年11月2日、WuXi Biologicsと、今後10年間で最大37候補のバイオ後続品(バイオシミラー)に独占的にアクセスできる開発契約を結んだと発表した。候補を選んで開発を進める仕組みにより、販売済み製品と開発品を合わせたポートフォリオを、現在の29分子から最大66分子へ拡大する。
■最大37候補を選択し、世界での独占販売権を確保
フレゼニウスによると、今回の契約は、これまでに発表されたバイオシミラー業界の開発契約で最大規模となる。拡大後のポートフォリオが対象とする先発医薬品の売上高は、公示価格ベースで3700億ユーロ超に相当する。同社は、この規模を2030年以降の事業成長につなげる方針だ。
対象候補は13の治療領域にまたがる。がん、免疫、消化器分野での既存事業を強化するとともに、神経、腎臓、心肺分野にも広げる計画で、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体薬物複合体(ADC)、融合タンパク質を含む。
個別の開発候補は、市場の魅力、開発リスク、期待収益というフレゼニウスの基準に沿って選ぶ。選択した候補ごとにWuXi Biologicsへ受託業務の対価を支払い、研究開発投資は各プログラムの進展に応じて増やす仕組みだ。候補の選択と投資の拡大を段階的に判断できる点が、契約の特徴となる。
フレゼニウスは、契約対象製品の承認に関する権利を含め、世界での独占的な商業化権と、商業化による経済的利益を確保する。候補ごとの長期的な製造戦略も同社が決め、選んだ製品を子会社mAbxienceへ段階的に移管する選択肢を持つ。
■初期対象はポライビーとテッペーザの後続品
初期開発では、ポラツズマブ ベドチンとテプロツムマブに重点を置く予定だ。ポラツズマブ ベドチンは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に使うADCで、日本では中外製薬が「ポライビー」として販売している。テプロツムマブはモノクローナル抗体で、日本ではアムジェンが活動性甲状腺眼症の治療薬「テッペーザ」として販売している。
バイオシミラーの開発では、先発品との構造や機能の比較が重要になる。米食品医薬品局(FDA)は、製造工程で生じる生物製剤の変動を管理し、先発品との高い類似性と、安全性・有効性に臨床上意味のある差がないことを示すよう求めている。製造工程の開発と分析評価を一体で進める能力が、品質の裏付けを支える。
WuXi Biologicsは、受託研究・開発・製造を一貫して担うCRDMOとして、細胞株開発、製造工程の開発、分析法開発、治験用・商用製造、薬事対応を支援する。同社の拠点網は中国に加え、欧州、米国、シンガポールにも広がる。フレゼニウスは今回の開発に、この世界的なネットワークを活用する予定だ。
二重特異性抗体は、異なる二つの標的を認識するよう設計された抗体で、分子の形式に応じた製造・品質管理が必要となる。ADCではさらに、抗体と細胞毒性薬物をリンカーで結合する工程が加わり、タンパク質の製造に加えて結合反応の管理が重要になる。
GaBI Journalに2023年に掲載された技術解説は、ADCの特性解析で、抗体当たりの薬物数、薬物の結合部位、反応副生成物、薬物が結合していないリンカーの有無などを調べる必要性を挙げた。高次構造や凝集の評価も、品質を理解する手掛かりとなる。ADCの後続品には、ザイダスが2021年にインドで発売したトラスツズマブ エムタンシン製剤「Ujvira」という先行例がある。
■mAbxienceの完全子会社化で製造基盤を強化
フレゼニウスは2026年9月30日、mAbxienceの残り45%の株式を取得する契約を締結し、同日取引を完了した。取得額は最大7億5000万ユーロ(約88億5000万円)で、製造拠点の承認取得に応じた5000万ユーロ(約88億5000万円)の条件付き支払いを含む。フレゼニウスは2022年8月から55%を保有しており、今回の取引で完全子会社化した。
スペインに本社を置くmAbxienceは、スペインとアルゼンチンに製造拠点を持ち、バイオシミラーの開発・製造と受託開発製造を手掛ける。フレゼニウスの発表では、2025年の売上高は3億2000万ユーロ超で、販売済み製品は4品目、開発候補は8品目となっている。完全子会社化により、製造能力への投資や製品選択をグループ内で判断しやすくなる。
製造技術の改善も進めている。mAbxienceとHPは2025年、AIと、実際の工程を仮想空間で再現するデジタルツインを用いた共同プロジェクトを公表した。両社によると、実際の製造データを使ってモノクローナル抗体やバイオシミラーの製造工程をモデル化し、工程の予測性、一貫性、効率の向上を目指す。
ミヒャエル・ゼンCEOは、WuXi Biologicsとの契約とmAbxienceの完全保有を組み合わせ、2030年を超えてバイオ医薬品事業を成長させる方針を示した。外部の開発能力を活用しながら、自社の製造・販売基盤へつなげる戦略となる。
■特許・独占期間の満了が市場拡大の背景に
バイオシミラーの市場機会は、先発品の特許や規制上の独占期間の満了によって広がる。GeneOnlineは2025年3月、世界の製薬業界で2025~2030年に2360億ドル(約37兆3000億円)規模の売上高が特許切れに直面すると報じた。こうした先発品市場の競争環境の変化が、後続品の開発投資を促す背景となっている。
調査会社IMARC Groupは、2025年の世界のバイオシミラー市場を329億ドル(約5兆2000億円)と推計し、2034年には2104億ドル(約33兆2000億円)に拡大すると予測している。同社は、主要な生物製剤の特許満了、医療費抑制への需要、製造技術の進歩などを成長要因に挙げる。
市場参入後の競争には、先発品側の価格対応や医療制度、保険償還上の扱いも影響する。バイオコン・バイオロジクスが公表した市場解説は、先発品が値下げでシェアを維持する場合と、後続品への数量の移行に対応して価格を下げる場合を示している。開発企業にとっては、製造と承認取得に加え、販売条件や供給体制の構築も重要になる。
今回の契約は、フレゼニウスの2026年通期見通しや、2025年比でバイオ医薬品事業の売上高をおおむね倍増させる2030年目標に上乗せする長期投資と位置付けられる。同社は開発の進展に伴って研究開発費が増え、将来の売上高・利益への貢献に先立ち、開発期間中の収益性に影響すると説明している。
■米BIOSECURE法は政府調達と連邦資金の利用を制限
米国では2025年12月18日、2026会計年度国防授権法の一部としてBIOSECURE法が成立した。同法は「懸念のあるバイオテクノロジー企業」(BCC)を特定し、連邦政府による対象企業の機器・サービスの調達や、連邦契約の履行、助成・融資資金を通じた利用などを制限する枠組みを定める。
米行政管理予算局(OMB)には、成立から1年以内となる2026年12月18日までにBCCリストを公表する期限がある。その後、実施指針の策定と連邦調達規則(FAR)の改定を経て、指定経路に応じて改定の60日後または90日後に制限が発効する。
既存契約には経過措置も設けられている。対象企業に関するFAR改定から5年間は、適用される発効日前に締結した契約や合意に基づく機器・サービスについて、一定の制限から除外される。このため、契約締結時期、機器・サービスの取得時期、連邦契約などでの用途が、適用関係を判断する要素となる。
WuXi Biologicsとは別法人のWuXi AppTecは、2026年6月8日に公表された1260Hの中国軍事企業リストに追加された。同社は6月11日に指定を争う訴訟を起こし、8月7日にはコロンビア特別区連邦地裁が、訴訟係属中の指定の執行を差し止める仮処分を認めた。
WuXi Biologicsはケイマン諸島で設立され、香港証券取引所に独立して上場する企業で、銘柄コードは2269だ。法律事務所Ropes & Grayは、同社が1260Hリストに記載されておらず、WuXi AppTecの親会社、子会社、承継会社にも当たらないとして、WuXi AppTecの指定に伴う影響を検討している。
供給網を巡る政策論議の背景には、海外受託企業との広い取引関係がある。米業界団体BIOが2024年に行った調査では、回答したバイオ医薬品企業124社の79%が、中国に拠点を置くか中国資本の受託開発製造企業などと、少なくとも一つの契約・製品取引を持っていた。米新興バイオテクノロジー国家安全保障委員会(NSCEB)は2025年4月、新興バイオ技術に5年間で最低150億ドル(約2兆3700億円)を投資するよう提言している。
■開発拠点とデータ管理も実務上の論点
国境をまたぐ開発では、各拠点の法制度に応じたデータ管理が必要となる。中国の2017年制定の国家情報法第7条は、組織と国民に対し、法に従って国家情報活動を支持し、援助・協力する義務を定める。2021年のデータセキュリティ法第35条は、国家安全の維持や犯罪捜査のためのデータ取得について、承認手続きと関係組織・個人の協力を規定している。
サイバーセキュリティ法には、重要情報インフラの運営者が中国国内で収集・生成した個人情報と重要データを国内に保存し、必要な国外提供に安全評価を求める規定もある。提携に伴うデータ管理では、業務を担う拠点、データの種類、保管先、越境移転の条件を具体的に把握することが重要になる。
WuXi AppTecは2024年、BioCenturyに対し、国家情報法に関連して中国当局から独自データや機密情報の提供を求められたことはないと説明した。今回の提携では、WuXi Biologicsの世界的な開発拠点網と、フレゼニウスが決定する製造戦略を組み合わせる。開発候補の選択、製造拠点の整備、各市場の規制への対応を並行して進めることが、長期契約を製品化につなげる鍵となる。
元記事: Fresenius Signs Largest-Ever Biosimilar Deal With WuXi Biologics; US Ban Decision Due in Six Weeks
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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