英Facewatch、店舗の顔認識に厳格な規制求める 半年で約30万件の警告

2026年10月25日 16:52

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記事提供元:Tech Times

(Pexels/Vitaly Gariev)

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英国の小売店にライブ顔認識を提供するFacewatchが、民間企業による利用に厳格な規制を求めている。同社によると、2026年上半期に小売事業者へ送った警告は29万7433件に上る。導入拡大とともに、犯罪防止の効果、誤認への対応、生体データの保護が議論の焦点となっている。

■125社超が利用、警察への通知機能も計画

Facewatchは、カメラ映像から顔をリアルタイムで照合するライブ顔認識を提供する英国企業だ。同社の公表資料では125社超の事業者が利用しており、顧客にはスーパーのSainsbury's、ディスカウント店のB&M、スポーツ用品店のSports Directなどが含まれる。

同社が公表した2026年1〜6月の警告件数は29万7433件だった。警告は、登録された人物と一致する候補を検出し、店舗側に対応を促すためのものだ。

専門媒体Biometric Updateが7月に報じたところでは、Sainsbury'sは55店舗から年末までに200店舗超へ利用を広げる計画を示していた。同社は試験導入について、記録された窃盗や暴力、反社会的行為などが46%減り、識別された対象者の90%超が再来店しなかったと説明している。

Facewatchは7月、重大な犯罪を繰り返す人物を検出した際に警察へ通知する機能を含む「Crime Management Platform」を、秋に投入する計画も明らかにした。Security Journal UKが伝えたニック・フィッシャー最高経営責任者の説明では、通知までの時間は平均4秒という。既存の小売顧客と試験する計画だった。

■小売犯罪の被害と対策費

英国小売協会(BRC)の2026年犯罪調査は、2024年9月〜2025年8月を対象としている。調査で把握した窃盗・損壊による損失は5億8300万ポンド(約1220億円)、犯罪防止への支出は9億8500万ポンド(約2070億円)で、両者の合計は15億6800万ポンド(約3290億円)だった。

同調査では、小売従業員に対する暴力や暴言などは1日当たり約1600件で、前年の約2000件から減少した。身体的暴力は年間4万3000件に上る。BRCは、従業員への被害が依然として深刻で、心身の健康や人材の定着にも影響すると指摘している。

国家統計局(ONS)によると、イングランドとウェールズで警察が記録した店舗窃盗は、2026年3月までの1年間で50万7086件と前年から4%減った。10月22日公表の最新統計では、同年6月までの1年間が51万9516件で前年同期比2%減だった。平均すると1分に約1件に相当する。

ONSは、店舗窃盗の届け出率が低いことも指摘する。警察の記録件数には、実際の犯罪の発生状況に加えて、小売事業者と警察の連携や届け出の変化も反映される。

■顔の照合と、人による確認を組み合わせる

Facewatchの仕組みは、入店者の顔画像を取得し、顔の特徴を数値化して、登録された「Subject of Interest(関心対象者)」のデータベースと照合するものだ。同社によると、登録には犯罪の発生を示す証言と、本人を疑う合理的な根拠が必要で、Facewatchが報告内容を審査する。

SecurityBriefが報じた同社の説明では、2種類のアルゴリズムによる照合と人による確認を経て、店舗へ警告を送る。この警告送信前の工程について、同社は99.98%の運用精度を掲げている。警告を受け取った店舗側も対象者を確認し、対応を判断する。

この運用では、照合の性能に加えて、登録情報の正確さ、警告画像の確認、店内で対象者を見分ける手順が重要になる。店舗スタッフの研修や、誤った対応を受けた人が問い合わせできる仕組みも、運用の質を左右する。

Facewatchは2026年6月、AIマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 42001:2023」の認証取得を発表した。同社によると、この用途で認証を得た英国の小売向けライブ顔認識事業者として初めてで、Tempo Auditsの審査では重大・軽微のいずれの不適合も指摘されなかった。認証は、リスク管理や説明責任、人による監督など、AIを管理する体制を対象としている。

■誤って退店を求められた買い物客

顔認識を導入した店舗では、無関係な買い物客が万引きの疑いをかけられた事例が報じられている。The Registerが2月に報じたウォーレン・ラジャ氏のケースでは、ロンドンのエレファント・アンド・キャッスルにあるSainsbury'sで、スタッフから退店を求められた。

同紙の取材にSainsbury'sは、別の登録対象者について正しい警告が出た後、店内の担当者がラジャ氏に声をかけたと説明した。CDWに勤務するラジャ氏は、Facewatchにパスポートの写しと顔写真を送り、本人の登録や警告がなかったことを確認してもらった。本人は、人前で疑われた経験が与える心理的負担を訴えた。

8月には、46歳のコメディーイベント主催者マット・アーノルド氏が、ロンドンのイースト・ダリッジ店のセルフレジで呼び止められ、退店を求められた。Retail Gazetteなどによると、同氏はFacewatchへの連絡を案内され、退店時には頭上のモニターに自分の顔が赤い丸で囲まれているのを見たという。この体験を「恐ろしい未来の一端」と表現した。

Sainsbury'sは人的ミスだったと説明し、謝罪とともに150ポンド(約3万1500円)分の買い物券を提供した。アーノルド氏はそれをフードバンクへ寄付した。同店では調査や追加研修のため顔認識の利用を一時停止したが、TechRadarは10月16日、Facewatchが警告送信の再開を確認したと報じている。

別のケースでは、カーディフのB&Mでバイロン・ロング氏が75ポンド(約1万5800円)相当の商品を盗んだと疑われた。Biometric Updateによると、防犯映像を確認した結果、同氏が買い物の代金を支払っていたことが分かった。Facewatchは人的ミスと説明し、市民的自由を擁護する団体Big Brother Watchは本人に代わって情報コミッショナー事務局(ICO)へ苦情を申し立てた。

■データ保護法と買い物客の権利

英国の民間企業による顔認識利用には、英国一般データ保護規則(UK GDPR)と2018年データ保護法が適用される。政府は2026年4月の議会答弁で、民間企業向けの独立した専用法を導入する計画は当時持っていなかったと説明した。個人の識別に用いる生体データには、特別な保護が求められる。

ICOはデータ保護法に基づいて調査し、違法な処理の停止などを命じる権限を持つ。生体情報や監視カメラを担当するコミッショナーも制度の監督・助言を担い、2026年2月の協議への回答では、犯罪防止に技術を使う民間組織も新たな規制の対象に含めるよう求めた。

EUのAI法は、公衆が利用できる場所での法執行目的のリアルタイム遠隔生体識別を原則禁止し、限定された例外に厳格な条件を課している。また、遠隔生体識別システムを高リスク用途として扱う枠組みを設けている。英国では、民間の店舗利用について既存のデータ保護法を軸に監督している。

Facewatchは、取り扱う個人データの管理者を自社と定め、導入店舗に利用を知らせる掲示を求めている。処理の根拠としては、犯罪の防止・発見に関する正当な利益や、実質的な公共の利益を挙げる。同社のプライバシー通知によると、照合で一致しなかった生体データは直ちに削除する一方、検出した顔画像などは事後の事件確認のため7日間保持する。

買い物客には、条件に応じてデータの開示、訂正、消去、処理への異議申し立てなどの権利がある。Facewatchは、開示に先立ち本人確認を求めるとしている。一方、TechRadarの店舗取材では、顔認識の対象にならずに買い物する選択肢として、別の店を使うよう案内された。

■従業員の安全を支える別の取り組み

店舗の安全対策では、技術と従業員支援を組み合わせる動きもある。小売向け技術を提供するSAIと、1832年設立の慈善団体Retail Trustは、10月15日に提携を発表した。Retail Trustによると、SAIは英国の大手スーパーやファッション小売企業などと取引している。

提携発表によると、SAIの「SAI One」は、同社が特許取得済みとするVisual Language Model(VLM)を使い、コンピュータービジョンと生成AIを組み合わせて、店内映像から状況を把握する。SAIは顔認識や暴力防止システムから得る収益を慈善目的に振り向け、従業員の安全・健康や、更生支援などに充てるとしている。

発表時点でSAIは、小売事業者、犯罪・司法関係者、更生支援団体、技術企業などが参加する「Safer Stores」の立ち上げを準備していた。Retail Trustとの提携では、同団体が提供してきた従業員の心身の健康を支える活動を土台に、安全な職場づくりを進める方針だ。

小売労組USDAWも、Sainsbury'sが2025年9月に発表した顔認識の試験導入を歓迎していた。ジョアン・トーマス書記長は、試験結果を見守り、責任ある、証拠に基づいた犯罪対策を同社と進めると表明した。

■規制の基準と、当事者の声

TechRadarが10月16日に報じたところでは、Facewatchは顔認識の開発・利用に対する厳格な規制を支持し、内務省とも意見を交わしている。民間企業の利用には高い基準を設けることを望むという。

明確な基準は、事業者が負う責任を分かりやすくする一方、監査や管理体制の整備には費用がかかる。Facewatchのように認証や運用体制を整えた企業と、新規参入者にとって、その負担は異なる。制度づくりでは、技術の性能、管理体制、利用者の権利をどう評価するかが重要になる。

Big Brother Watchは顔認識の拡大停止を求める署名活動を行っている。TechRadarによると、10月16日時点の署名は4万1000件を超えていた。同団体は10月27日に英国議会で被害当事者の会合を開く予定で、Sainsbury'sにも参加を呼びかけている。

警察の利用を巡っては、ショーン・トンプソン氏と同団体のシルキー・カーロ氏がロンドン警視庁の方針を争った。高等法院は2026年4月21日に請求を棄却し、原告側は控訴の意向を示した。この訴訟に参加した平等人権委員会(EHRC)は、監視対象者の選定と利用場所・目的の結び付きなどを問題視し、人権保障に適合しないとの見解を提出していた。

内務省は、法執行機関による顔認識や生体情報の利用に関する新たな法的枠組みについて、2025年12月4日から2026年2月12日まで公開協議を実施した。協議では、関連する公的・民間組織への適用範囲も論点となった。小売店での利用拡大は、従業員の安全を支える仕組みと、買い物客への説明や救済手続きを、どのように制度へ組み込むかを問いかけている。

元記事: Facewatch Scanned UK Shoppers 300,000 Times: Now It Wants Rules That Could Lock Out Rivals

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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