ネパール洪水復興へ2000万ドルの支援枠 損失・損害基金が初の災害対応

2026年10月25日 13:41

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記事提供元:Tech Times

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気候変動による損失・損害に対応する基金(FRLD)の理事会は2026年10月22日、ネパールの洪水被害に対する支援として、2160万ドル(約33億9000万円)を暫定的に確保することを全会一致で決めた。内訳は支援資金2000万ドル(約31億4000万円)と監督費160万ドル(約2億5100万円)で、資金の提供には正式な支援申請と理事会の承認が必要となる。

同基金が特定の災害への対応として資金を確保する初の決定だ。通常の募集期間外でネパールの申請を受け付ける試行的な措置も認めた。11月のCOP31を前に、被災国に支援を届ける速度と、基金の長期的な運用の在り方が問われている。

■岩盤と氷河の崩壊が引き起こした洪水

8月26日の災害は、ネパール・中国国境に近いランタン・リルン山で発生した。標高7234メートルの同山の斜面で岩盤と氷河の一部が崩壊し、水、岩石、氷、土砂が流下した。洪水はボテコシ川、トリシュリ川などの水系を下り、集落や水力発電施設、道路、橋に甚大な被害を与えた。

英国下院図書館がまとめたネパール国家災害リスク削減・管理庁の10月5日発表によると、ネパール国内の死者は1455人、行方不明者は5285人に上った。人的被害に加え、住宅や学校、医療施設、文化・宗教施設にも被害が広がった。

政府の災害評価を紹介したNepal Newsなどによると、被害を受けた民家は7570棟、学校は18校、医療施設は7カ所、文化・宗教施設は30カ所だった。ネパール紙ライジング・ネパールは、主にラスワ、ヌワコット、ダディンの3郡で約1万5000世帯が影響を受けたと報じている。

災害と気候変動の関係を調べたWorld Weather Attribution(WWA)は、長期的な温暖化が、もともと地質的に不安定だった斜面をさらに不安定にした可能性を示した。氷河の縮小や永久凍土の融解、雪から雨への降水形態の変化などが、崩壊に関わる要因として挙げられている。

WWAの分析では、岩石と氷の崩落が土砂を大量に含む流れへ変化し、下流で水が主体の急激な洪水となった。既存の防災対策が想定する規模や速度を超える複合災害であり、山岳地域では氷河湖だけでなく、岩盤や氷河の斜面も含めて危険を把握する必要がある。

■氷河災害への備えと気候資金

ネパールでは、氷河湖の決壊リスクが以前から指摘されてきた。ヒマラヤン・タイムズが紹介した国際山岳総合開発センター(ICIMOD)の調査では、2015年に国内で2070の氷河湖が確認され、別のリスク評価では21湖が危険性の高い湖とされた。

こうしたリスクに備えるため、緑の気候基金(GCF)は2025年に3610万ドル(約56億7000万円)の無償資金協力を承認した。国連開発計画(UNDP)によると、7年間の事業で監視・早期警報システムの拡充、危険性の高い4湖の水位低下、河岸の保護、自治体や住民の防災能力の向上を進める。

GCFによると、この事業は2025年7月に承認され、2026年3月に実施段階に入った。環境専門媒体Down To Earthは、事業の構想から承認まで約7年かかったと報じ、気候資金を必要な地域へ届けるまでの時間を課題として取り上げた。

同媒体はまた、アジア開発銀行(ADB)や国際金融公社(IFC)が支援したトリシュリ川流域の水力発電事業について、既知の気候・災害リスクへの対応を問う市民団体の批判を紹介している。洪水で発電施設や交通網が損なわれたことは、地域の復旧とともに、基幹インフラの防災を進める重要性も浮き彫りにした。

■支援要請から約7週間、正式申請が次の段階に

ネパールのスワルニム・ワグレ財務相とギタ・チョードリー農業・森林・環境相は、災害から5日後の8月31日、基金に支援を要請した。共同議長のカミラ・ミネルバ・ロドリゲス・タバレス氏とゲオルク・ボースティング氏の下で、9月から10月にかけて協議が進められた。

途上国側の理事らは、通常の日程を待たずに対応するよう求めた。Third World Networkによると、9月2日の臨時理事会開催要請には理事8人と代理理事6人が加わった。基金の次回定例理事会は12月に予定されていた。

カトマンズ・ポストによると、9月16日に非公式協議が開かれ、10月5日と8日には起草グループが決定案を検討した。共同議長が10月22日の臨時理事会開催を決めたのは10月15日で、ネパールの要請から45日後だった。

基金は今回、初期運用枠組み「バルバドス実施方式(BIM)」の通常の募集期間外で、新たな支援申請を受け付ける方式を試行する。BIMは2025年4月に採択された枠組みで、同年11月のCOP30で最初の公募が始まった。

ネパールは今後、資金の使途を具体化した申請を提出する。12月にフィリピンで開かれる次回定例理事会での審査が見込まれるが、10月22日の決定では送金日程は示されなかった。基金事務局は今回の対応から得られる教訓を評価し、長期的な運用モデルの検討に生かす。

■復興需要の約0.42%にとどまる支援枠

AFP通信によると、ネパール政府は復旧・復興に必要な費用を約47億8000万ドルと見積もっている。今回確保された支援資金2000万ドル(約31億4000万円)は、その約0.42%に相当する。政府の迅速被害・需要評価では、物的被害と経済損失は合わせて約27億ドルに上る。

資金不足は基金全体の課題でもある。The Wireによると、10月22日時点で拠出約束は約8億2200万ドル、受け取った拠出金は約6億2968万ドルだった。一方、BIMの最初の公募には119カ国から176件の申請があり、要請総額は約28億ドルに達した。

初期運用枠の規模は約3億5000万ドルで、申請額はその約8倍となる。BIMでは1件の申請で求められる支援額の上限が2000万ドル(約31億4000万円)とされ、ネパール向けの支援枠もこの水準に設定された。

Climate Home Newsによると、アントニオ・グテーレス国連事務総長は9月の国連総会演説で、基金に用意された資金を極めて少ないと批判し、先進国に規模の拡大を求めた。拠出約束を実際の資金に変えることと、増大する需要に合わせて資金を積み増すことの両方が必要になっている。

■迅速支援を長期モデルへどうつなぐか

10月22日の理事会では、今回の対応を今後の制度にどう反映するかを巡り、意見の違いが表れた。AFP通信によると、EUのヤン・ドゥシク氏は、ネパール向けの措置を前例とは位置付けず、長期モデルの構築に向けた学びとして扱う考えを示した。

Third World Networkによると、ドイツ代表も、今回の試行が長期モデルを先取りすることを避けるよう求める一方、危機への迅速対応などから教訓を得ることに期待を示した。日本代表は例外的な対応として決定を支持し、今後の理事会で迅速な資金提供方式を長期モデルの一部として議論する必要があると述べた。

パキスタンのアリ・タウキール・シェイク氏は、学びの範囲をあらかじめ限定する姿勢に反発した。エクアドルのワルテル・シュルト氏も、教訓を得る過程に制限を置くべきではないと主張した。争点は、今回認めた募集期間外の対応を、将来の災害支援の仕組みにどう生かすかにある。

基金は、2022年のCOP27で設立が合意され、2023年のCOP28で運用開始に向けた制度が整えられた。損失・損害を国際的に支える構想の源流には、バヌアツが1991年に提案した、海面上昇による被害を対象とする保険制度がある。脆弱な国々の長年の要求が、ようやく個別国への資金確保に結び付いた形だ。

■国際法上の責任と、資金を届ける仕組み

損失・損害に関する国際的な議論には、協力による資金支援と、国際法上の国家責任という二つの側面がある。パリ協定第8条は損失・損害への対応に関する協力を定め、2015年の協定採択決定第51項は、第8条を責任や賠償の根拠としないと規定した。基金は、脆弱な途上国への支援を提供する制度として運用されている。

国際司法裁判所(ICJ)は2025年7月23日、気候変動に関する各国の義務について、全会一致で勧告的意見を示した。気候条約、慣習国際法、人権法上の義務を整理し、義務違反が国家責任を生じさせることを確認した。

ICJによると、違法行為と損害の間に十分に直接的かつ確実な因果関係があるなど、国家責任に関する一般的な要件を満たす場合、原状回復や金銭賠償などによる完全な賠償が求められる。勧告的意見自体には法的拘束力がないが、今後の責任追及や紛争解決で参照される法的な基準を示した。

The Climate Watchによると、国際環境法センターのリエン・バンダム氏は、今回の決定を必要な連帯の表れと評価しつつ、気候被害への救済や賠償を法的義務として位置付けるよう求めた。基金への資金拡充を巡っても、被害の規模に見合った対応を求める声が強まっている。

■COP31へ、恒常的な迅速対応を求める声

The Wireによると、Fill the Fundキャンペーンの国際調整役で、Satat Sampada Climate Foundation創設ディレクターのハルジート・シン氏は、今回の決定を歴史的な第一歩と評価した。その上で、災害のたびに特別な交渉を重ねる方式から、数日で支援を動かせる恒久的な迅速対応制度へ進むよう求めた。

同紙が伝えたインドの元気候交渉担当者アジャイ・マトゥール氏も、運用上の重要な前進と評価しながら、追加の申請・承認手続きによる遅れを懸念した。国際太陽光同盟の事務局長を務めた同氏は、他の資金源が支援の大部分を担う場合、その枠組みとルールを利用して迅速に支援する方法を提案した。

350.orgのキャンペーン責任者サビオ・カルバリョ氏は、COP31での気候資金の実行を富裕国に求めた。Climate Action Network Internationalの事務局長タスニーム・エソップ氏も、未払いの拠出約束を実際の資金に変え、基金を被害の規模に応じて拡充する必要があると訴えている。

The Climate Watchによると、Refugees Internationalのジョスリン・ペリー氏は、地域組織が少額助成に直接アクセスできる簡素な窓口を求めた。対象には、復旧を担う非公式団体や未登録の集団も含めるべきだとしている。同媒体が伝えたActionAid USAのブランドン・ウー氏は、被災地への送金の具体的な日程を示すよう求めた。

COP31は2026年11月9~20日、トルコのアンタルヤで開かれる。ネパール向けの正式申請と並行して、各国が基金の資金をどこまで積み増し、被災後の迅速な支援を長期的な運用にどう組み込むかが焦点となる。

元記事: Loss and Damage Fund Gave Nepal $20M; World Court Already Said States Owe Reparations

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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