NVIDIA、豪州8社と最大2GWのAI基盤整備へ―電力確保が2027年目標の焦点

2026年9月11日 23:22

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NVIDIAは、オーストラリアのクラウド・データセンター事業者8社と連携し、2027年までに最大2GWのAIインフラを整備する計画を発表した。各社が土地、電力、建物などを確保し、NVIDIAが「DSX」プラットフォームやGPU、ネットワーク、ソフトウェアを提供する。

最大2GWは計画全体の上限目標であり、現時点で稼働している容量や、全量の建設が確定したことを意味しない。オーストラリアではデータセンターによる電力需要の急増が予測されており、必要な電源と系統接続容量を確保できるかが、計画の進捗を左右する。

■8事業者が最大2GWのAI基盤を整備

NVIDIAは9月9日、Firmus、Sharon AI、IREN、Megaport、ResetData、CDC、NEXTDC、AirTrunkの8事業者と協力し、複数世代のNVIDIA DSX AIファクトリーを収容するための土地、電力、建物容量を拡大すると発表した。整備規模は2027年までに最大2GWとしている。

参加事業者がAIファクトリーを運営し、NVIDIAはDSXプラットフォーム、アクセラレーテッド・コンピューティング、ネットワーク、ソフトウェア、エコシステム支援を提供する。今回の発表は単一施設の建設契約ではなく、各事業者が個別に進めるインフラ整備を、NVIDIAの技術基盤を軸にまとめた協業計画である。

8社の計画には、発表以前から進められていた案件も含まれる。IRENは南オーストラリア州で800MW規模のBundeyキャンパスを開発しており、CDCはオーストラリアとニュージーランドで550MWを超える容量を運用し、さらに800MWを建設中としている。

Sharon AIは、NVIDIA Quantum InfiniBandとSpectrum-X Ethernetで接続する最大6万8000基のNVIDIA GPUを展開する計画を示した。ただし、この数字はNVIDIAとの2026年6月の協業で示された最大4万基の追加GPUだけではなく、同社が進める複数の展開計画を合わせた規模である。

NVIDIAの発表には計画全体の投資額や、2GWのうち許認可、資金調達、電力契約、建設が完了している容量の内訳は示されていない。IRENの800MWもBundeyキャンパス全体の計画容量であり、その全量が今回の協業だけに割り当てられると明示されたわけではない。

■電力を基準に設計するNVIDIA DSX

技術的な基盤となるNVIDIA DSXは、施設、コンピューティング、ネットワーク、ソフトウェア、リファレンス設計を一体化したAIファクトリー向けプラットフォームである。利用可能な土地、電力、建物を前提に、AI処理能力と電力効率を高めることを目的としている。

AI向けデータセンターでは、GPUの調達数だけでなく、限られた電力からどれだけ多くの処理結果を得られるかが重要になる。DSXは、GPU、ラック、冷却、ネットワーク、電力配分、運用ソフトウェアを施設全体で調整し、ワット当たりのAI処理性能を高める設計を採る。

DSX MaxLPSは、施設の固定された電力枠の中で、GPUやラックに割り当てる電力を動的に調整するための設計・運用フレームワークである。NVIDIAは、45℃の液冷入口温度に対応するシステムや動的電力管理などを組み合わせることで、同じ施設電力枠に収容できるGPU容量を最大40%増やせるとしている。この数値はNVIDIAが示した設計・試算上の値であり、実際の効果は施設構成やワークロードによって変わる。

DSX OSは、コンピューティング、電力、冷却、ライフサイクル管理、障害対応、マルチテナント運用を調整するオープンでモジュール型のソフトウェア群である。DSX Simは、施設を物理的に構築する前後にシミュレーションやデジタルツインを利用し、熱、電力、設備構成などを検証するために使われる。

DSX Flexは、系統から受け取る負荷制限、需要応答、価格などの信号に応じて、AIワークロードの実行を調整する仕組みである。電力会社からの供給、オンサイト発電、再生可能エネルギー、蓄電設備など、複数の電源を組み合わせる施設の運用にも対応する。

こうした需要調整技術は、電力供給が制約となるオーストラリアで重要性を増す。ただし、施設側の消費電力を一時的に調整する技術と、新たな発電設備や系統接続容量を確保することは別の課題である。

■各社が担うインフラの役割

IRENは、南オーストラリア州のBundeyキャンパスにNVIDIA DSXの設計を採用する。同キャンパスは800MWの開発容量を計画しており、IRENが保有する土地、電力、データセンター開発、GPU導入の能力を組み合わせる。

CDCは、オーストラリアとニュージーランドで550MWを超えるデータセンター容量を運用し、さらに800MWを建設中としている。同社は、再生可能電力やチップ直接液冷に対応した施設を通じ、高密度なアクセラレーテッド・コンピューティング基盤の拡大を進める。

Sharon AIは、NEXTDCの施設を利用した既存のコロケーション基盤などを通じて、NVIDIA GPUを使ったAIクラウドを展開する。2026年6月に発表したNVIDIAとの6年間の協業では、72MWの新規データセンター容量と、最大4万基のGrace Blackwell GB300 GPUの導入を計画していた。この協業後、同社が示したAIファクトリー容量は計132MWで、そのうち102MWが顧客と契約済みとされた。

NEXTDCは、液冷に対応する高密度データセンターとクラウド接続基盤を提供する。NVIDIA DGX-Ready Data Centerの認定事業者でもあり、AIシステムを収容する施設側の役割を担う。

Megaportは、完全子会社Latitude.shを通じてNVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティングへの接続を広げる。Megaportのネットワークを利用し、利用者に近い場所でAI推論を実行できる環境の構築を目指す。

Firmusは、オーストラリアで進める大規模AIインフラ構想「Project Southgate」を拡張する。ResetDataは液浸冷却を採用した計算基盤を提供し、企業、政府、研究機関向けのオーストラリア国内データ処理を支援する。AirTrunkは、チップ直接液冷などに対応するAI向けデータセンター設備の拡張を進める。

■急増するデータセンターの電力需要

オーストラリア・エネルギー市場運営機関の2026年版Electricity Statement of Opportunitiesでは、データセンターによる電力消費の大幅な増加が見込まれている。

同機関が採用するStep Changeシナリオでは、全国電力市場におけるデータセンターの年間電力消費量は、2025~26年度の約5TWhから2035~36年度には約34TWhへ増える。全国電力市場の運用需要に占める割合は、約3%から約13%へ上昇する見通しである。

予測の基礎となった調査では、2026年6月時点でデータセンター案件に関連する系統接続要望が計66.9GWに達した。これは、すべてが建設されることを示す数値ではなく、開発の初期段階や重複する計画を含む案件総量として捉える必要がある。調査対象となった案件の中には、計画から外れたり、開発段階が後退したりしたものも少なくない。

したがって、66.9GWを今後確実に接続される電力需要とみなすことはできない。一方、申請や計画の規模は、データセンター事業者が発電設備、送電網、変電設備、接続審査をめぐって競合する可能性が高まっていることを示す。

NVIDIAと8事業者による最大2GWの計画についても、2027年までに全量が稼働するとは発表されていない。既存施設や、電力と建物をすでに確保している案件は比較的早く展開できる可能性があるが、新規の発電設備や系統接続を必要とする案件では、許認可や建設工程が進捗を左右する。

■大規模データセンターの新基準も検討

オーストラリア政府は、大規模データセンターが電力料金、系統の信頼性、水資源、周辺インフラに及ぼす影響への対応を進めている。

Anthony Albanese首相は2026年7月、大規模データセンターに対し、新たな電力供給への投資や接続費用の負担を求め、消費量に見合う電力を系統へ供給できる「ネットジェネレーター」とする方針を表明した。エネルギー、水利用、建設場所などに関する全国的な基準を整備し、2027年初めの法案提出を目指すとしている。

もっとも、記事公開時点では制度の詳細や適用範囲が確定した法律として施行されているわけではない。既に承認された案件にどこまで適用されるか、電力供給をどのような方法で確保すれば基準を満たすかなどは、今後の制度設計に左右される。

NVIDIA DSX Flexのような需要応答技術は、系統の状況に合わせて施設負荷を調整する手段となる。一方、政府が検討する基準への適合には、需要調整だけでなく、新規発電、蓄電設備、長期電力契約、接続設備への投資などを組み合わせる必要が生じる可能性がある。

■HeidiとAtlassianのAI開発を支援

NVIDIAは、インフラ拡大によって計算資源やNemotronオープンモデルを利用しやすくなるオーストラリアの企業として、ヘルスケアAI企業Heidiと、JiraやConfluenceを手掛けるAtlassianを挙げた。

Heidiは、NVIDIA Nemotronモデルと独自の臨床データを利用した医療向けAIの開発を進めている。患者の履歴や診療ガイドライン、診療時の文脈を扱う用途では、モデルの性能に加えて、患者情報の保護、アクセス管理、医療分野の規制への対応が重要になる。

Atlassianは、企業内検索や情報活用を支援するAI製品Rovoの開発にNVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティングを利用している。教師ありファインチューニングや強化学習などを通じ、複雑な企業データを対象とする検索性能の改善を進める。

両社が今回のオーストラリア国内インフラをどれだけ利用するかは明らかにされていない。それでも、医療情報や企業内データを扱うAI開発では、データの保存場所だけでなく、適用法、契約条件、運用主体、アクセス権限を管理できる計算基盤への需要がある。

■最大2GWは上限目標、実現には個別案件の進捗が必要

NVIDIAの発表で示された最大2GWは、8事業者による複数の既存案件と新規案件をまとめた目標である。計画全体の投資総額、事業者ごとの容量配分、建設済み容量、電力契約済み容量などは公表されていない。

また、2027年という表現は整備計画の目標時期を示すもので、2027年末までに2GWすべてが稼働すると保証するものではない。NVIDIAは土地や発電所を直接整備するのではなく、DSXを中心とする技術基盤を提供し、各事業者が施設の資金調達、建設、電力確保、運営を担当する。

オーストラリアには、再生可能エネルギー資源、アジア太平洋地域と結ぶ通信網、データセンター事業者、技術人材といった強みがある。その一方で、AI向け計算基盤の拡大は、電力供給と冷却設備を含む大規模なインフラ投資を必要とする。

今回の発表により、オーストラリアのAIインフラ計画には最大2GWという共通目標が示された。実際にどこまで、いつ稼働するかを判断するには、各事業者の電力契約、系統接続、許認可、資金調達、着工状況を個別に確認する必要がある。

元記事: Nvidia Calls Australia 2GW Sovereign AI Hub; Grid Queues Won’t Supply All Partners in Time

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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