【視点】中国メモリ大手、ASML製DUVを3年分確保か―米規制法案は既設装置の保守も焦点に

2026年9月10日 13:10

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記事提供元:Tech Times

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Financial Timesが9月8日に報じたところによると、中国のメモリ半導体大手、長鑫存儲技術(CXMT)と長江存儲科技(YMTC)は、今後3年間の計画済み能力拡張に必要なASML製の深紫外線(DUV)露光装置を確保したという。具体的な装置台数や機種、企業別の内訳は明らかになっていないが、追加販売が制限されても、両社が短期的な増産計画を進められる可能性を示す。

米議会で審議されている半導体製造装置の対中規制法案は、新規販売だけでなく、対象施設に設置済みの装置に対する保守や技術支援も規制対象に含める。このため、両社が装置を事前に確保したとしても、既設装置の継続運用を支える部品供給や校正、修理、ソフトウェア更新を巡る問題は残る。

■3年分の能力拡張を支える装置を確保か

Financial Timesの報道によると、CXMTとYMTCが確保したASML製DUV露光装置は、両社が計画する今後3年間の生産能力拡張を支えられる規模だという。これは3年間の操業に必要な半導体製造装置をすべて備蓄したという意味ではなく、現時点で予定されている増設計画を対象にした推計である。

DUV露光装置は、光を使ってシリコンウエハー上に回路パターンを形成する装置である。ASMLの液浸DUVシステムは波長193ナノメートルの光を使い、レンズとウエハーの間を超純水で満たすことで解像度を高める。複数回の露光や成膜、エッチングを組み合わせるマルチパターニングにより、EUV露光装置を使わずに微細な回路を形成することもできるが、工程数や製造コストが増えやすい。

今回報じられた備蓄は、将来の販売停止に備えた装置の先行調達とみられる。もっとも、必要な装置の種類や生産工程は工場によって異なるため、「3年分」という期間は無制限の拡張余力を意味しない。装置の設置時期、生産ラインの立ち上げ、歩留まり、部品供給なども実際の増産ペースを左右する。

■CXMTとYMTCが生産規模を拡大

CXMTは中国の主要DRAMメーカーで、2026年第2四半期の世界DRAM売上高に占めるシェアは、Counterpoint Researchの推計で10%となった。Samsung Electronicsが38%、SK hynixが25%、Micron Technologyが24%で、上位3社の合計は87%だった。

CXMTの10%は売上高ベースのシェアであり、生産量や製造能力そのものを表す数字ではない。メモリ価格や製品構成にも左右されるが、中国企業が世界のDRAM市場で存在感を強めていることを示す指標となる。

YMTCはNANDフラッシュを主力とする。Counterpoint Researchによると、2026年第2四半期のビット出荷量ベースのシェアは14%で、SamsungとSK hynixグループに続く世界3位となった。公開された数値ではキオクシアも14%だが、Counterpoint ResearchはYMTCが僅差で上回ったとしている。

一方、YMTCは売上高では世界5位にとどまった。比較的単価の低いコンシューマー向け製品の比率が高く、高価格帯のエンタープライズSSDの構成比が相対的に低いため、出荷量の順位と売上高の順位には差がある。

■新規販売だけでなく既設装置の保守も対象

米下院には2026年4月2日、「Multilateral Alignment of Technology Controls on Hardware Act(MATCH法案)」が提出された。半導体製造装置と関連部品を巡り、米国と同盟国・パートナー国の輸出規制を整合させることを目的とする法案である。

下院法案はCXMT、YMTC、SMIC、Huawei、Hua Hong Semiconductorなどを挙げ、これらの企業による先端半導体製造装置へのアクセスを制限する方針を示している。最低限の対象には液浸DUV露光装置などが含まれ、販売だけでなく、設置、校正、修理、ソフトウェアやファームウェアの更新、訓練、工程支援といったサービスも広く規制対象に想定されている。

上院にも4月13日、同名の法案S.4281が提出され、上院銀行・住宅・都市問題委員会へ付託された。いずれも審議中の法案であり、9月9日時点で法律として発効した規制ではない。

CXMTとYMTCが能力拡張用の装置を先行確保しているなら、新規販売の禁止だけでは、両社の短期的な増産計画を直ちに止められない可能性がある。一方、保守や交換部品、技術支援まで制限されれば、設置済み装置の安定運用にも影響が及び得る。その影響の大きさや表面化する時期は、各工場の装置構成、保守体制、予備部品、代替技術の成熟度によって変わる。

■精密光学技術が保守と代替を左右す

ASMLの露光装置には、ドイツのZEISS Semiconductor Manufacturing Technologyが供給する精密光学系が使われている。両社は1980年代から協力し、1997年に戦略的パートナーシップを結んだ。ZEISSはDUVとEUVの双方に対応するリソグラフィー用光学系を開発している。

露光装置は長期間使われる精密機器であり、導入後も校正、修理、部品交換、ソフトウェア更新などが必要となる。ASMLは保守と装置改良を「Installed Base Management」として事業化しており、同事業の2026年第2四半期売上高は27億6200万ユーロだった。

この事業規模は、露光装置の競争力が新品の供給能力だけで決まらず、設置後の継続的な支援にも支えられていることを示す。輸出規制が保守まで対象とする場合、影響は新工場への装置導入だけでなく、既存ラインの稼働にも広がる可能性がある。

■中国製DUV装置の量産規模は限定的

Financial Timesは、中国の宇量昇科技が2026年に液浸DUV露光装置12台の生産を目指しているとも報じた。当初報じられていた5台から引き上げられた目標だが、ASMLの世界的な生産規模と比べると限定的である。

ASMLは2026年の液浸DUV生産能力を約130台とし、2027年にはそこから30%増やす計画を示している。2028年についても、さらに30%引き上げる可能性を検討している。

中国製装置が一部の生産ラインに導入されても、ASML製装置の設置基盤を短期間ですべて置き換えられるとは限らない。生産台数に加え、露光精度、処理能力、稼働率、歩留まり、部品供給、保守網といった条件を満たす必要があるためだ。中国企業にとって、確保した装置が支える期間に国内装置の量産能力と信頼性をどこまで高められるかが重要になる。

■ASMLの中国売上比率は低下する見通し

ASMLは2026年7月、同年の売上高見通しを430億~450億ユーロに引き上げた。2026年第2四半期の売上高は93億2600万ユーロ、純利益は29億1800万ユーロだった。

同社は、中国が2026年の売上高に占める比率を約20%と想定している。2025年通年の33%からは低下する見通しで、輸出許可を巡る不確実性が中国向け事業に引き続き影響する。

今回報じられた先行調達は、規制の発表から実際の供給制限までに時間差があると、対象企業がその間に装置を確保できることを示している。新規販売の規制が将来の能力拡張を制約する一方、保守規制は既設装置の運用に作用するため、両者は異なる時間軸で影響を及ぼす。

MATCH法案が成立するか、また同盟国の輸出管理制度にどこまで反映されるかは確定していない。それでも、CXMTとYMTCによる装置確保の報道によって、政策上の焦点が新品の販売だけでなく、部品供給や保守、技術支援を含む装置のライフサイクル全体へ広がっている。

元記事: China Memory Giants Stockpiled ASML Scanners: Servicing Ban Is Only Lever Left

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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