世界の原子力発電量、2025年に過去最高―2050年目標の559GWは具体化せず

2026年9月10日 13:36

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記事提供元:Tech Times

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世界の原子力発電所による発電電力量は2025年、2年連続で過去最高を更新した。一方、世界原子力協会(WNA)がまとめた2050年の設備容量見通しでは、各国政府が掲げる目標のうち559GW分が、建設中、計画中、提案中のいずれにも該当する具体的なプロジェクトを伴っていない。目標の達成には、個別の建設計画への落とし込みに加え、既設炉の運転継続、規制・資金調達体制、サプライチェーン、人材基盤の強化が必要となる。

■発電量は2年連続で過去最高

WNAが9月7日に発表した第2版「世界原子力発電見通し」によると、世界の原子力発電電力量は2025年に2702TWhとなり、2024年の2667TWhを35TWh上回った。2024年も当時の過去最高だったため、記録更新は2年連続となる。原子力は2025年の世界の総発電電力量の約9%を占めた。

世界の原子炉の平均設備利用率は83.7%だった。設備利用率は、一定期間に実際に発電した電力量を、その期間中に定格出力で連続運転した場合の発電可能量で割った指標である。燃料交換や保守、設備トラブル、系統上の制約などによる停止や出力低下が反映される。

WNAは、原子炉の運転年数が長くなることに伴う設備利用率の全般的な低下は確認されなかったとしている。既設炉を安定して運転しながら、新たな設備容量を追加できるかが今後の供給拡大を左右する。

米国の事業用発電設備では、2025年の原子力の設備利用率は91.0%だった。風力は34.2%、事業用太陽光発電は24.4%である。発電方式ごとに運転条件や役割が異なるため単純な優劣を示す数値ではないが、原子力が長時間にわたり発電を継続できる特性を表している。

電力需要の増加が見込まれるなか、電源ごとの出力特性を踏まえ、送電網、蓄電設備、需要調整、出力を調整できる電源を組み合わせることが重要になる。原子力の高い設備利用率は、こうした電力システムの構成を検討するうえでの一つの要素となる。

■2050年の政府目標と具体的案件に559GWの隔たり

WNAは、各国政府の目標が実現し、具体化しているプロジェクトが運転を開始するとともに、既設炉の多くが運転を継続した場合、世界の原子力発電設備容量が2050年に1457GWへ達する可能性があると試算した。これは、2020年を基準として世界の原子力発電設備容量を2050年までに約1200GWへ拡大する「原子力3倍化」の目標を200GW以上上回る水準である。

原子力3倍化の宣言は2023年の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で22カ国により始まり、その後、支持国は38カ国に増えた。

もっとも、1457GWは確定した建設計画の合計ではない。WNAによると、各国政府の2050年目標に含まれる設備容量のうち559GWは、現時点で建設中、計画中、提案中の具体的案件に反映されていない。

さらに、建設中や計画中の案件がすべて予定どおり完成するとは限らず、既設炉が想定より早く閉鎖される可能性もある。1457GWという見通しは、各国による政策の実行、プロジェクトの具体化、既設炉の運転継続がそろった場合の到達可能な規模として捉える必要がある。

WNAは原子力産業を代表する国際的な業界団体であり、今回の見通しも各国政府の目標や事業計画を基礎としている。報告書は、政策的な支持を、資金、制度、許認可、供給網、人材を備えた実行可能なプロジェクトへ転換することを優先課題に挙げた。

■建設中は82GW、2030年代半ばに着工加速が必要

世界で建設中の原子力発電設備は82GWに増えた。2025年には11基が着工し、このうち9基が中国、2基がロシアだった。計画中、提案中、潜在的案件を合わせた設備容量は416GWとなった。

現在建設中の設備は、今後10年程度の容量拡大を支える中心となる。WNAは、建設中の82GWのうち54GWが2030年までに、残る28GWが2035年までに運転を開始するとの見通しを示している。

一方、2050年の政府目標を達成するには、それ以降の建設を大幅に加速する必要がある。WNAの分析では、2030年代半ばまでに原子炉の着工ペースを現在の約6倍へ引き上げる必要がある。

課題は、原子炉の基数だけではない。大規模な原子力プロジェクトには長期の準備、許認可、資金調達、機器製造、建設、試運転が伴う。個別に一基ずつ進める方式ではなく、共通設計や供給網、人材を複数の案件で継続的に活用する「プログラム型」の整備が重要になる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、過去10年間に世界で着工した原子炉の94%は中国またはロシアの設計だった。2025年末時点では世界で建設中の設備容量の半分を中国が占めており、中国とロシア以外の国々が継続的な建設能力を確保できるかも大きな論点となる。

■既設炉の運転継続も容量確保の柱

WNAは、新規建設を進める間に低炭素電力を確保する手段として、既設炉の維持と運転期間の延長を重視している。既設炉の運転継続には、安全審査、経年劣化への対応、設備更新、規制当局の承認が必要となるが、新たな用地で原子炉を建設する場合とは異なり、すでにある設備や送電接続を活用できる。

米国では、原子炉の運転認可は当初40年間で、審査を経て20年単位で更新できる。60年を超えて最長80年までの運転を可能にする後続認可更新についても、安全性と環境影響の審査が行われている。

フランスでは原子炉ごとに10年ごとの定期安全レビューが実施される。1300MW級原子炉については、規制当局が40年超の運転継続に必要な条件と安全性向上策を示しており、今後は各原子炉の状態を踏まえた個別審査が進められる。

運転期間は一律に決まるものではなく、各原子炉の設備状態、安全対策、規制審査、事業上の判断に左右される。2050年の設備容量を見通す際には、新設炉の進捗だけでなく、既設炉がどの程度運転を継続できるかも重要となる。

■燃料供給網と人材の整備が建設拡大を左右

原子力設備の拡大には、ウランの採掘や転換、濃縮、燃料加工から成る燃料供給網の確保も欠かせない。特にウラン濃縮能力は限られた事業者に集中しており、原子力発電を拡大する国にとって、長期契約と供給先の多様化が課題となる。

米国では2024年8月にロシア産低濃縮ウランの輸入禁止が発効した。ただし、原子炉や米国の原子力関連企業の運営を維持できる代替供給源がない場合などには、2028年1月1日まで一定量の輸入を認める免除制度が設けられている。国内濃縮能力の増強と、同盟国などからの調達拡大が必要とされている。

人材面では、原子力技術者だけでなく、原子力規格に対応した溶接工、建設管理者、品質保証担当者、規制当局の審査担当者など、幅広い専門職が求められる。建設が長期間途絶えれば、個人の技能だけでなく、設計、調達、施工を組織として継続する能力も失われやすい。

このため、WNAは人材育成を単独の研修事業としてではなく、複数の建設案件が継続する長期的な事業計画と結び付ける必要があるとしている。供給網や規制体制についても、後続案件で繰り返し利用できる枠組みの構築を求めた。

■日本は原子力建設能力の「再始動国」に分類

第2版の報告書は、各国を政策、制度・インフラ、プロジェクトの成熟度、目標達成の見通しによって分類した。日本は、相当数の原子炉と成熟した制度を持つ一方、近年は継続的な建設が行われていない「再始動国」に位置付けられた。

同じ分類にはベルギー、オランダ、スウェーデン、ブラジル、南アフリカなどが含まれる。こうした国々では、当面の設備容量の確保は、既設炉の運転期間延長、設備改修、出力向上、停止中の原子炉の再稼働による部分が大きいとWNAは分析している。

日本には既存の産業基盤や規制制度がある一方、継続的な新設を再開する場合には、設計審査、工程管理、部品供給、人材育成を複数の案件にわたって維持できる体制が必要となる。世界的な原子力拡大の議論は、日本にとっても既設炉の活用と将来の建設能力をどのように組み合わせるかという問題につながる。

■目標から継続的な実行段階へ

2025年の発電量記録は、現在稼働している原子炉が世界の電力供給で引き続き一定の役割を担っていることを示した。一方、2050年の設備容量を大幅に増やすには、政府目標の表明だけでなく、建設地点、設計、事業主体、資金、許認可、供給網を備えた案件へ移行しなければならない。

559GWという具体的案件を伴わない容量は、原子力3倍化を巡る最大の実行上の課題である。既設炉の安全な運転継続、建設中案件の完成、後続案件の具体化を並行して進められるかが、2050年の見通しを左右する。

元記事: Nuclear Broke Output Records in 2025; Its 2050 Tripling Plan Has 550 GW With No Project

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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