カネカ、多彩な事業基盤と高い技術活かした化学の力で成長へ挑む

2020年7月13日 07:21

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 カネカは7月6日、医療機器事業において、消化器事業と電気生理事業の取組みを強化すると発表した。グループ会社のリバーセイコーを7月1日から完全子会社化、カネカメディカルテックへ社名変更し、医療機器の製品開発から営業企画を併せ持つ医療機器事業会社へ再編する。これによりカネカとの連携をさらに強化し、ブランド力を高める。

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 カネカは、1949年に鐘淵紡績の非繊維事業を分離継承し、鐘淵化学工業として設立された。当初は、苛性ソーダ、搾油、石鹸、食油、酵母、食品類、紙、エナメル電線、化粧品、澱粉など多くの事業を営んでいた。

 2004年に創業時の社名を「カガク(化学)でネガイ(願い)をカナエ(叶え)る」意味も込めた現社名に商号変更し、現在では次の4つのソリューションユニット(SU)体制で多彩な事業を展開している。

 2020年3月期の売上高は6,015億円。SU別の構成比は、社会インフラ・モビリティの軽量化、燃費向上の発展を支える優れた素材や、生分解性ポリマーなどを提供するMaterial SU(以下MSU)が40.2%、健康増進ニーズに応える素材やサプリメント、農業・畜産・水産分野でのソリューションを提供するNutrition SU(NSU)が26.2%。

 以下、住宅や生活インフラの省エネ・スマート化ニーズに対応する素材、サービスソリューションを提供するQuality of Life SU(QSU)が25.7%、医療デバイスやバイオ医薬、再生・細胞医療などのヘルスケア事業を展開するHealth Care SU(HSU)が7.7%、、グループの損害保険・生命保険の代理業務、構内作業を行うその他が0.2%を占めるカネカの動きを見ていこう。

■前期(2020年3月期)実績、今期見通しは非開示

 前期実績は売上高が6,015億円(前年比3.1%減)、営業利益は前年よりも100億円減の260億円(同27.8%減)であった。

 営業利益減少の要因としては、新型コロナの影響で苛性ソーダ、変成シリコーンポリマーが中国で大きく減少したMSUが53億円、医療機器の技術導出と低分子医薬品の出荷がずれ込んだHSUが17億円の減益。また中国サプライチェーンの停滞とマレーシア工場の操業制限でQSUが9億円、休校による給食減と還元型コエンザイムQ10の米国出荷がずれ込んだNSUが3億円、研究開発費などの増加で全社調整その他が18億円の減益となった。

 今期見通しは、新型コロナウイルスの影響を合理的に算定することが困難なため現時点では未定とし、可能となった段階で速やかに開示するという。

■中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)による推進戦略

 2022年3月期に売上高7,500億円(対前期比24.7%増)、営業利益600億円(同130.8%増)を目指して、次の戦略を推進する。

 1.先端事業群(先端光学材料、太陽・住宅用蓄電池、医療機器、機能性食品素材)、大型新規事業群(生分解性ポリマー、有機EL照明、オプトエレクトロニクス)による成長牽引。

 2.先端技術をマーケットニーズに結び付けるR&B(リサーチ&ビジネス)開発体制の強化。

 3.米州、欧州、アジアに地域統括会社を設置、Glocalの拠点から地域別の成長戦略を推進。

 4.先端事業、大型新規事業と併せ既存コア事業の生産基盤拡大・競争力強化への重点投資、先端技術獲得に向け海外中心の積極的M&A推進。

 多彩な事業基盤を生かし、高い技術力に磨きをかけ社会の願いを叶えようとするカネカの動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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