形状記憶効果もつ高エントロピー合金の開発に成功 新素材に期待 NIMS

2019年10月18日 09:23

従来の合金(左)と高エントロピー合金(右)(写真:NIMSの発表資料より)

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 物質・材料研究機構(NIMS)は16日、形状記憶効果をもつ高エントロピー合金の開発に成功したと発表した。高温でも使用可能なアクチュエータ等への応用が期待できるという。

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■各国がしのぎを削る高エントロピー合金開発

 高エントロピー合金は、5種類以上の元素を等量混合して得られる合金のことだ。

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 合金は従来、主要となる構成元素(溶媒)にほかの元素(溶質)を添加することで形成された。一方で高エントロピー合金は、ランダムに元素が混合しているため、溶媒と溶質との区別ができない。

 欧米、韓国、台湾などで国家プロジェクトとして、高エントロピー合金の研究が開始され、日本でも文部科学省による研究プロジェクトが始まったばかりだという。

 これまでの合金探索事例の大半は、1種類の主要元素に少量の異種元素を添加した合金だった。他方高エントロピー合金では、これまで開拓されてこなかった組成範囲を探索する必要がある。そのため、未発見の優れた特性や新しい機能をもつ合金開発が期待されている。

■アクチュエータ等に応用可能な形状記憶合金

 NIMSとソウル国立大学の研究者から構成されるグループは、面心立方格子構造をもつfcc合金のうち、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルが20%ずつ混合されたカンター合金に着目した。

 カンター合金の周辺で組成を変化させて新たな合金を探索し特性を調べた結果、温度変化により可逆的に結晶構造が変態する(マルテンサイト変態)高エントロピー合金が発見された。一部の合金は、変形したあとでも加熱後に元の形状へと戻る形状記憶効果をもつことも確認された。

 形状記憶合金としてニッケル・チタン合金や鉄系形状記憶合金等が知られているが、従来の合金では元の形状へと戻る温度の範囲が限られていた。研究グループの発見した高エントロピー合金では、形状が回復する温度の上限が700ケルビン(約427度)まで向上した。

 研究グループは今後、熱処理や加工による形状記憶特性や寿命を調査し、さらに優れた特性をもつ合金開発を目指すという。また形状記憶合金の使用が期待されているパルプ継ぎ手や、高温アクチュエータなどへの応用を目指すとしている。

 研究の詳細は、Scientific Report誌オンライン版にて9月11日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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