Questyle「MEX」を国内披露、電流モード増幅と10バンドPEQを搭載

(questyle.com)[写真拡大]
Questyle(クエスタイル)は11月7日、東京で開催された「秋のヘッドフォン祭 2026」で、USB接続のポータブルDAC/ヘッドホンアンプ「MEX(エムイーエックス)」を国内披露した。独自の電流モード増幅に、専用アプリで設定する10バンド・パラメトリックEQを組み合わせた製品だ。日本では2026年12月に一般販売を始める予定で、税込価格は3万3000円を予定している。
■デュアルDACと小型アンプ回路を搭載
MEXは、スマートフォンやPCからUSB経由で音声信号と電源の供給を受ける、バスパワー駆動のDAC/ヘッドホンアンプだ。デジタル音声をアナログ信号に変換し、有線イヤホンやヘッドホンへ出力する。内蔵バッテリーを持たず、持ち運びや接続の手軽さを重視している。
DACにはESS Technology製「ES9219Q」を2基、アンプにはQuestyle独自のSiPカレントモードアンプモジュールを4組搭載する。対応する音声形式は最大384kHz/32ビットのPCM、ネイティブDSD256、DoP DSD128だ。DAC段とアンプ段を連動させる設計として、同社がTTAと呼ぶ3段階アーキテクチャを採用した。
出力端子は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスの2系統を備える。公表仕様では、300Ω負荷時の最大出力レベルは3.5mm側が2V、4.4mm側が4Vとなっている。3.5mm端子はCTIA規格のマイク付きイヤホンやヘッドセットにも対応する。
電源管理にはTOREX製の回路を採用し、DC/DCコンバーターと低ノイズのLDOレギュレーターを組み合わせる。日本総代理店のマギウェイは、DAC、プリアンプ、ヘッドホンアンプに安定した電源を供給する設計と説明している。音量調整は64段階で、ゲインはH/M/Lの3段階から選べる。
外装はCNC加工のアルミ合金フレームと曲面サイドパネルで構成し、基板が見えるスケルトン構造を取り入れた。OLEDディスプレイでは音量、ゲイン、フィルター、サンプリングレート、再生モードを確認できる。AV Watchの発表会報道によると、王豊碩CEOは内部を見せる設計について、技術への自信を表すものと説明した。
■電流領域で増幅と負帰還を行うCMA
Questyleの中核技術が、電流モード増幅を意味するCMA(Current Mode Amplification)だ。同社は、信号の増幅と負帰還処理を電流領域で行うことで、高速動作、広帯域、低ひずみを目指す技術と説明している。
この方式を理解する手掛かりは、アンプ内部でどのような形の信号を扱うかにある。電圧の変化を電流の変化へ変換して増幅し、出力に適した電圧信号へ戻す、というのが基本的な考え方だ。回路の応答速度には、内部の容量を充放電する電流や、入出力段の設計などが関わる。
SiPは「システムインパッケージ」の略で、複数の半導体チップや部品を一つのパッケージにまとめる実装技術を指す。機能を単一の半導体チップへ集積するSoCとは、集積する単位が異なる。QuestyleはCMA回路を小型モジュールにすることで、携帯機器への搭載を進めてきた。
同社は2012年に中国・深圳で創業し、据え置き型のCMA800RやUSBドングル型のM15などにも電流モード増幅を採用している。関連する米国特許US 9,614,483 B2は、2014年3月18日を優先日とし、2017年4月4日に登録された。MEXは、こうした増幅技術にアプリによる音質調整を組み合わせる位置付けとなる。
マギウェイの公表値では、MEXの全高調波ひずみと雑音を合わせたTHD+Nは300Ω負荷時に0.0002%未満、SN比は125dBだ。過去のM15についてQuestyleは、増幅回路の帯域幅を最大1MHz、THD+Nを0.0003%と説明していた。製品を比較する際には、こうしたメーカー公表値の測定条件も確認したい。
■PUREとTUNEで音作りを切り替える
MEXは、本体のスライドスイッチでPUREとTUNEの2モードを切り替える。PUREはQuestyleが設計した基本の音を楽しむモードで、接続してすぐに使える。TUNEでは専用アプリ「Questyle」と連動し、プリセットEQやパラメトリックEQによる音作りを行う。
10バンドのパラメトリックEQでは、帯域ごとに周波数、ゲイン、Q値を設定できる。ゲインはその帯域を強めたり弱めたりする量、Q値は調整する範囲の鋭さに関わる指標だ。低音の量感を変えるほか、気になる帯域を絞って抑えるといった使い方ができる。
フィルターはローシェルフ、ピーキング、ハイシェルフ、ローパス、ハイパスの5種類を用意する。アプリではEQカーブを確認しながら操作でき、数値を直接入力する調整にも対応する。作成した設定は保存して呼び出せる。
パラメトリックEQは、音楽制作で長く使われてきた技術だ。1971年にはダニエル・フリッキンガーが周波数を可変できるEQを導入し、1972年にはジョージ・マッセンバーグがAES大会で「Parametric Equalization」を発表した。周波数、増減量、帯域の形を調整する発想を、MEXでは携帯機器とアプリから利用できる。
DRE(ダイナミックレンジ拡張)とDACのデジタルフィルターは、PURE/TUNEの両モードで設定できる。マギウェイはDREについて、微小信号やアナログ回路のノイズフロアに着目して実用的なダイナミックレンジを広げ、特に低ゲイン時に効果を発揮する機能と説明している。DACフィルターはリニアフェーズ・ファストロールオフとハイブリッドフェーズ・ファストロールオフの2種類で、左右バランスの調整も可能だ。
今後は、音質設定にチューニングコードを付けて保存、共有、読み込みを行う「Q-Code」機能を追加する計画だ。Webブラウザーから操作する機能も予定している。これらの提供時期や対応環境は、決まり次第案内するとしている。
■会場ではPEQを実演、アプリはiOSとAndroidに対応
ステーションコンファレンス東京で開かれた発表会には、創業者兼CEOの王豊碩氏が登壇した。藤本健氏、野村ケンジ氏による解説や実演も行われ、田村響華氏が進行を務めた。
AV Watchによると、藤本氏はアプリのバー操作や数値入力によるPEQ調整を紹介した。野村氏は、愛用するイヤホンやヘッドホンの耳障りに感じる部分を狙って調整し、好みの音へ近づける使い方を提案した。また、バッテリーを内蔵しないMEXのノイズ対策と、PUREモードの音を評価した。
同媒体によると、自身の楽曲で聴き比べた田村氏は、藤本氏がPEQを調整したTUNEでは鮮明さを感じ、PUREでは全体がまろやかに感じられたと話した。基本の音と、好みに合わせて調整した音を本体スイッチで往復できる点が、実演の軸となっていた。
専用アプリはiOSとAndroid向けに提供され、EQ/PEQ、ゲイン、DACフィルター、DRE、左右バランスなどを設定できる。2026年11月8日時点のApp Storeでは、開発元を「深圳旷世之声文化科技有限公司」と表示し、プライバシー欄でデータを収集しないと申告している。
■国内価格と購入時の比較ポイント
MEXはApple MFi認証の接続方式を採用する。国内の製品仕様では、対応OSとしてWindows XP以降、macOS、iOS 14以降、Android 5.0以降を挙げている。接続端子はUSB Type-Cで、USB-CケーブルとUSB-A変換アダプターが付属する。
日本では2026年12月に一般販売を始め、税込3万3000円での販売を予定している。事前予約販売サイト「ミミゴト」では、11月7日から29日まで先行販売を実施する。11月8日時点では、一般販売予定価格から20%引きの2万6400円となる数量限定プランを用意しており、価格は税込・送料込みだ。
携帯型DAC/アンプの比較対象には、TOPPING G5、Shanling UA5、iFi audio GO bluなどがある。2026年11月8日時点の国内掲載価格は、オレメカTOPPING店のG5が税込4万円で売り切れ表示、e☆イヤホンのUA5が税込3万2780円。GO bluは国内公式サイトで税込3万4100円を市場予想価格としている。
機能面では、ShanlingのUA5はUSB給電と内蔵バッテリーを使うハイブリッド給電を切り替えられる。iFi audioのGO bluはBluetooth受信とUSB音声入力に対応し、有線ヘッドホンを接続して使う製品だ。MEXを選ぶ際には、USBから給電する構成、電流モード増幅、アプリでの10バンドPEQという特徴を、接続方法や音作りの用途と合わせて比べられる。
元記事: Questyle MEX Dongle DAC Debuts in Tokyo: First Current-Mode Pocket Amp
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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