アッヴィ、ネクセラのIBD新薬候補を最大14億7000万ドルで導入へ 腸管バリア修復を狙う

2026年11月5日 23:01

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記事提供元:Tech Times

(Jiří Suchý/Abbvie.com)

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ネクセラファーマは2026年11月4日、炎症性腸疾患(IBD)向けの経口薬候補NXE0033744について、英国子会社がアッヴィと世界独占ライセンス契約を締結したと発表した。契約一時金と条件付きの開発・販売マイルストーンの合計は最大14億7000万ドル(約2320億円)となる。

NXE0033744は、消化管局所でEP4受容体を活性化し、炎症の抑制に加えて腸管バリアの維持と粘膜修復を促すよう設計された低分子化合物だ。第1相試験を完了しており、ネクセラは消化管選択性と標的への作用を裏付けるデータが得られたとしている。

■契約一時金1億ドル(約158億円)、追加支払いは開発・販売の進展に連動

契約を締結したのは、東京に本社を置くネクセラの英国子会社Nxera Pharma UKだ。アッヴィは、潰瘍性大腸炎やクローン病を含むIBDを対象に、NXE0033744の全世界での独占的な開発・商業化権を取得する。

ネクセラは契約一時金として1億ドル(約158億円)を受け取り、さらに開発・販売マイルストーンとして最大13億7000万ドル(約2160億円)を受領する権利を持つ。これに加え、純売上高に応じた段階的ロイヤルティーも設定されている。取引の完了には、米国のハート・スコット・ロディノ法に基づく手続きを含む独占禁止法上のクリアランス取得が必要となる。

両社は2022年から、神経疾患に関わるGタンパク質共役受容体(GPCR)を標的とした複数の創薬プログラムでも協業している。ネクセラは2026年6月30日、この協業で4件目の研究開発マイルストーンを達成し、1000万ドル(約15億8000万円)を受け取ると発表していた。

ネクセラのクリストファー・カーギル社長兼CEOは、今回の契約について、独自の創薬基盤「NxWave」の可能性を示すものと位置付けた。アッヴィの免疫疾患領域と世界的な臨床開発の経験を生かし、EP4を標的とするアプローチが患者の治療成果につながるかを検証していく考えを示している。

■炎症の抑制と腸管バリアの維持を目指す

IBDは、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を含む、慢性的に炎症と再燃を繰り返す疾患の総称だ。腸の内側を覆う上皮は、腸管内の内容物と体内を隔てるバリアとして働く。上皮細胞の傷害や細胞死によるバリアの破綻と、免疫反応による炎症は、互いに悪化を促す関係にある。

アッヴィの既存薬では、スキリージ(リサンキズマブ)が炎症性サイトカインであるインターロイキン23(IL-23)を阻害する。リンヴォック(ウパダシチニブ)は、JAK1を優先的に阻害するJAK阻害薬で、JAK-STAT経路を介する炎症性サイトカインのシグナル伝達を抑える。

NXE0033744が標的とするEP4は、体内の脂質メディエーターであるプロスタグランジンE2の受容体の一つだ。第5染色体上のPTGER4遺伝子にコードされるGPCRであり、活性化すると細胞内の環状AMP(cAMP)を増やすなど、複数のシグナル伝達に関わる。

ネクセラによると、NXE0033744は腸管上皮と腸管の免疫細胞に局所的に作用するよう設計されている。同社は、抗炎症作用と上皮バリアの恒常性維持、粘膜治癒を通じて、免疫系を標的とする治療薬を補完できる可能性があると説明している。

■EP4と上皮細胞死を結ぶ基礎研究

EP4を標的とする根拠の一つが、腸上皮細胞のネクロプトーシスに関する研究だ。ネクロプトーシスは、細胞膜の傷害と細胞内容物の放出を伴う、制御された細胞死である。細胞の断片化と除去が進むアポトーシスとは異なる過程をたどる。

代表的な経路では、RIPK1、RIPK3というタンパク質キナーゼを経て、細胞膜を傷害するMLKLが活性化される。細胞から放出される傷害関連分子パターン(DAMPs)は周囲の免疫反応を促し得る。上皮の傷害が進むと、腸管内の細菌などに対する防御も損なわれ、炎症の増幅につながる。

エアランゲン・ニュルンベルク大学のJay V. Patankarらは2021年、Nature Cell Biologyに、EP4の活性化がヒトおよびマウス由来の腸上皮細胞でネクロプトーシスを抑え、実験的な大腸炎の炎症収束を促すと報告した。研究では、EP4のシグナルがRIPK1に関わる制御を通じ、TNFによって誘導されるMLKLの活性化と細胞膜への移行を抑えることが示された。

ヒトの遺伝学的研究も、この受容体を調べる手掛かりとなっている。2007年のゲノムワイド関連解析(GWAS)は、第5染色体の5p13.1領域とクローン病へのかかりやすさとの関連を報告した。疾患に関連する遺伝的変異と、近傍にあるPTGER4の発現量との関連も示され、その後の研究でもこの領域の疾患関連性が確認されている。

これらの知見は、EP4を活性化して上皮細胞の生存や修復を支えるという開発方針の基礎となる。NXE0033744では、この受容体の働きを消化管で引き出し、炎症とバリア傷害が続く状態の改善を目指す。

■全身への曝露を抑える設計とNxWave

EP4は腸管のほか、骨、血管、肺などにも存在し、血管拡張や免疫調節を含む幅広い生理作用に関わる。こうした受容体を薬で活性化する際には、標的組織以外への作用も考慮する必要がある。NXE0033744は、全身への曝露を最小限に抑えながら、消化管局所で作用するよう設計された。

創製に使われたNxWaveは、GPCRの立体構造を基に化合物を設計するネクセラの創薬基盤だ。膜に埋め込まれ、構造が変化しやすいGPCRを安定化する「NxStaR」を用い、X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡などで構造を調べる。

化合物探索の「NxHit」では、仮想スクリーニング、GPCR向けの化合物ライブラリー、DNAコード化ライブラリーによる探索などを組み合わせる。「NxDesign」では、構造情報と計算化学などを使い、活性、選択性、薬物動態、安全性を考慮して開発候補を最適化する。

この技術基盤には、そーせいグループが2015年に買収したHeptares Therapeuticsの研究開発が受け継がれている。2024年のブランド統一に伴い、そーせいグループはネクセラファーマに、Heptares TherapeuticsはNxera Pharma UKに社名を変更した。

■第1相で腸管選択性と標的への作用を評価

ネクセラの前身であるそーせいグループは2024年3月21日、当時HTL0033744と呼ばれていた同候補薬の第1相試験で、最初の被験者への投与を実施したと発表した。第1相では、安全性や薬物動態、薬力学的な指標を調べた。

完了したプログラムには、単回漸増投与と反復漸増投与、潰瘍性大腸炎患者のコホート、インドメタシン負荷コホートが含まれる。ネクセラが2026年11月4日に公表した説明資料によると、潰瘍性大腸炎患者6例を含む評価で、経口投与後に腸管組織中の高い薬物濃度が確認された。

インドメタシンは、プロスタグランジンの産生を抑える非ステロイド性抗炎症薬だ。ネクセラによると、予備解析ではNXE0033744がインドメタシン誘発性の小腸透過性亢進を約50%抑制した。同社は、この結果を消化管で標的に作用していることを示す薬力学的なデータと位置付けている。

ネクセラは、第1相で懸念すべき有害事象は報告されなかったとしている。同薬は未承認の開発候補であり、今後はIBD患者における寛解や粘膜治癒への効果、安全性を臨床試験で評価していくことになる。11月4日時点で、アッヴィは今後の開発計画を公表していない。

■持続的な寛解と粘膜治癒への需要

米疾病対策センター(CDC)が2026年8月に公表した2023~2024年の全国健康面接調査に基づく推計では、米国でIBDと診断されたことがある18歳以上の成人は約410万人、成人全体の1.6%だった。世界については、武田薬品工業が2026年の発表で、IBD患者数は2032年までに1000万人を超えると予測されるとしている。

治療選択肢が増える一方、寛解の達成と維持には課題が残る。武田薬品は2025年5月の解説で、潰瘍性大腸炎では寛解を達成する患者が20~30%にとどまると紹介し、新たな治療アプローチの必要性を指摘した。

FiercePharmaが2026年7月に報じた、Nimbus TherapeuticsとBack Bay Life Science Advisorsによる米国の消化器専門医36人の調査でも、同様の課題が挙がった。中等症から重症の潰瘍性大腸炎について、回答者の81%が臨床的寛解の達成を、最も緊急性の高い未充足ニーズの上位3項目に選んだ。

■アッヴィのIBD開発に新たなアプローチ

アッヴィにとって、スキリージとリンヴォックは大きな事業基盤となっている。同社の2026年第1四半期決算によると、世界売上高はスキリージが44億8300万ドル(約7080億円)、リンヴォックが21億1900万ドル(約3350億円)で、合計66億200万ドル(約1兆400億円)だった。為替影響を除く前年同期比の成長率は、それぞれ29.2%、20.2%となった。

第2四半期の世界売上高は、スキリージが55億500万ドル(約8700億円)、リンヴォックが25億2500万ドル(約3990億円)だった。報告通貨ベースの前年同期比では、それぞれ24.4%増、24.5%増となる。これらはIBD以外の適応症も含む製品全体の売上高だ。

10月30日の第3四半期決算説明会で、アッヴィは2026年通年の売上高予想をスキリージ218億ドル(約3兆4400億円)、リンヴォック103億ドル(約1兆6300億円)とし、合計321億ドル(約5兆700億円)を見込んだ。また、IBDではスキリージと開発中の抗α4β7インテグリン抗体ABBV-382を組み合わせる第2b相試験も進めている。

NXE0033744の導入は、こうした開発に消化管局所でのEP4活性化というアプローチを加える。腸管バリアの維持と粘膜修復を狙う作用が、持続的な疾患コントロールの改善にどこまでつながるかが、今後の臨床開発の焦点となる。

元記事: Skyrizi and Rinvoq Cannot Prevent Gut Cells from Dying; AbbVie Paid $100M for IBD Drug That Can

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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