SAP、7-9月期売上高が初めて1.8兆円超―クラウド受注残は28%増

2026年10月24日 13:57

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記事提供元:Tech Times

MichaelBr90, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

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独ソフトウェア大手SAPは10月21日、2026年第3四半期(7~9月)の総売上高が前年同期比13%増の102億7000万ユーロ(約1兆8100億円)となり、初めて四半期で100億ユーロ(約1兆7600億円)を超えたと発表した。クラウド売上高は26%増、今後12カ月に売上計上を見込む契約済みクラウド受注残は28%増となった。同社は通期のクラウド売上高とクラウド・ソフトウェア売上高について、従来予想レンジの上限寄りを見込むとした。

■クラウド売上高は26%増、営業利益も拡大

1972年創業で54年を迎えたSAPの総売上高は、前年同期の90億7600万ユーロ(約1兆6000億円)から102億7000万ユーロ(約1兆8100億円)へ増加した。米ドル換算では約115億米ドルとなる。為替変動の影響を除いた恒常為替レートベースの増収率は12%だった。

クラウド売上高は、前年同期の52億9000万ユーロ(約9310億円)から66億6800万ユーロ(約75億米ドル)に増加した。報告通貨ベースの増収率は、第1四半期の19%、第2四半期の22%から26%へ高まった。恒常為替レートベースでは、それぞれ27%、24%、25%だった。

基幹業務向けクラウド製品群のCloud ERP Suiteは、前年同期比29%増の59億2400万ユーロ(約1兆400億円)となった。第1四半期の23%増、第2四半期の25%増を上回り、恒常為替レートベースでは28%増だった。クラウドとソフトウェアの合計売上高は、前年同期の80億1600万ユーロ(約1兆4100億円)から15%増の92億4900万ユーロ(約104億米ドル)となった。

非IFRS営業利益は、前年同期の25億6600万ユーロ(約4520億円)から18%増の30億3000万ユーロ(約34億米ドル)だった。国際財務報告基準(IFRS)に基づく営業利益も18%増の29億3000万ユーロとなった。CFOのドミニク・アザム氏は、コスト管理とクラウド事業の成長によって売上高と利益を同時に伸ばしたと説明した。

SAPによると、クラウド売上高の伸びには、財務上の困難から回復した顧客に関する複数四半期分の売上計上など、当四半期固有の押し上げ要因も含まれる。以下を含む米ドル換算額は、10月22日にEuronextが掲載した1ユーロ=1.12342米ドルに基づく概算である。

■今後12カ月のクラウド受注残は241億ユーロ

Current Cloud Backlog(CCB)は、期末時点で契約済みのクラウド売上高のうち、今後12カ月に計上するとSAPが見込む金額を示す。9月末のCCBは、前年同期の188億3900万ユーロ(約3兆3200億円)から28%増の241億4400万ユーロ(約271億米ドル)となった。恒常為替レートベースでは26%増だった。

2026年のCCBは、第1四半期末の219億3200万ユーロ(約246億米ドル)、第2四半期末の229億2900万ユーロ(約258億米ドル)から増加した。第3四半期の前四半期比増加額は12億1500万ユーロ(約2140億円)だった。前年同期比の伸び率は報告通貨ベースで20%、27%、28%と高まり、恒常為替レートベースでは25%、26%、26%と推移した。

CCBは、これから売上に転換する契約済み需要を把握する手掛かりになる。複数年にわたる契約の履行義務を含む残存履行義務(RPO)に対し、対象を今後12カ月のクラウド売上高に絞っているためだ。企業がクラウド投資を評価する際には、契約の拡大と実際の利用開始・売上計上を、時間軸に沿って見るための指標となる。

CEOのクリスチャン・クライン氏は、顧客がクラウドとデータ基盤、Business AIに投資していると説明した。決算説明会では、RISE with SAPの契約にAIやSAP Business Data Cloudが加わり、対象となるソリューションの範囲が広がっているとの見方も示した。クラウドERPへの移行と、データの統合やAIによる業務自動化を組み合わせた提案を進めている。

■Jouleは利用者の意図を業務の実行につなぐ

SAPが掲げるAutonomous Enterprise(自律型エンタープライズ)は、人が業務の方向性を定め、AIアシスタントとエージェントが連携して処理を進める構想だ。Joule Workは、その利用者向けの窓口となる。達成したい内容を自然言語で伝えると、Joule Assistantsが必要なエージェントを調整し、SAP製品と他社システムにまたがる作業を支援する。

SAPの説明では、Joule Assistantsは財務、調達、人事、サプライチェーン、カスタマーエクスペリエンスなどの業務領域を担当する。利用者の意図を解釈し、複数の処理やエージェントを調整する役割だ。同社の学習資料では、5つの業務領域に50超のアシスタントを展開する構成が紹介されている。

専門のJoule Agentsは、データの分析や業務ルールの確認、APIを介した操作、ワークフローの実行などを担う。対象にはSAP S/4HANA、SAP Ariba、SAP SuccessFactorsなどが含まれる。SAPは10月のSAP Connectで、Sapphire以降に20超のアシスタントと200超のエージェントを開発したと説明し、年末までに400超のエージェントを目指すとした。

業務実行には、既存のデータ、アクセス権限、監査証跡を活用する。SAPによると、顧客は自律性の水準を管理できる。利用者が成果を指定し、アシスタントが処理を組み立て、エージェントが権限の範囲内で実行するという役割分担が、Jouleの基本となる。

■企業データを参照する基盤と開発・管理ツール

SAP Business AI Platformは、SAP Business Technology Platform(BTP)、SAP Business Data Cloud、SAP Business AIを統合した環境として位置付けられる。BTP上のAI FoundationはAIの開発・運用を支える技術基盤で、その一部であるgenerative AI hubがモデルへのアクセスやプロンプト管理などを提供する。SAPはJoule Studioで70超のモデルを利用できると説明している。

モデルにはAnthropicのClaudeなどの外部モデルに加え、SAP独自のモデルもある。SAP-RPT-1.5は、表形式の構造化データを扱うモデルだ。SAPは、顧客データを取得して予測時の文脈として利用する機能などにより、企業の業務データに基づく予測を支援するとしている。

SAP Knowledge Graphは、業務のデータ項目やプロセス、その関係を構造化し、AIが必要な情報や処理を見つけるための文脈を与える。SAPによると、700万超のデータ項目の関係を対応付けている。エージェントが企業固有の業務情報を参照しながら動くための基盤であり、データと業務ルールの整備が導入時の重要な作業になる。

カスタムエージェントの開発や拡張にはJoule Studioを提供する。SAPは、LangChain、Pydantic AI、LlamaIndexへの対応に加え、n8nを組み込んだ視覚的なワークフロー開発環境、Vercelとの提携による独自のWeb画面の開発支援を発表している。SAP HANA Cloudを利用し、セッションやタスクをまたいで情報や利用者の好みを保存・再利用する長期記憶機能も打ち出している。

エージェントの把握・管理を担うSAP AI Agent Hubは、エージェントと業務、アプリケーション、データとの関係を可視化する。SAPは2026年5月時点で、150社が同Hubを利用し、管理対象が10万超のエージェントに達していると発表した。開発ツールと管理基盤を組み合わせることで、企業は導入後の運用や監督も含めて設計することになる。

■他社AIとの連携と実行環境の統制

SAPはNVIDIAと、Joule Studio runtimeへのOpenShellの組み込みを進めている。OpenShellは、エージェントがアクセスできる資源や実行できる操作を制御するための実行環境だ。SAPは9月の説明で、OpenShellによる実行時の隔離と、Joule Studio側の業務権限・ポリシー・監査を結び付ける共同開発を紹介した。

他社のエージェントとの連携には、Linux FoundationがホストするAgent2Agent(A2A)プロトコルを活用する。安定版のバージョン1.0は、独立したエージェントが互いの能力を見つけ、タスクを受け渡し、進行状況や結果を共有するための仕様だ。電子メールの標準が異なるサービス間の通信を支えるように、エージェント間の共通のやり取りを定める。

A2AにはJSON-RPC、HTTPとJSONを使う方式、gRPCの標準的な通信方式がある。Agent Cardと呼ぶ情報で能力や接続先、認証条件を示し、OAuth 2.0、OpenID Connect、相互TLSなどの仕組みを利用できる。MicrosoftとSAPはMicrosoft 365 CopilotとJouleのA2A連携を発表し、SAPはGoogle CloudとのGemini Enterpriseを含む連携も進めている。

SAPの日本語イノベーションガイドでは、Joule WorkとJouleのA2A機能の一般提供予定を2026年第4四半期としている。一方、10月の発表ではJoule Workの顧客向け展開を開始したと説明しており、提供は段階的に進められている。SAPはAIマネジメントシステムの国際規格ISO/IEC 42001の認証も取得している。

■ノバルティス、ネスレ、PwCが活用を紹介

SAPは10月6日に米ラスベガスのSAP Connectで、顧客の取り組みを紹介した。ノバルティスはJoule Sourcing Assistantを共同開発し、試験導入を開始した。調達担当者が戦略や仕入先との関係構築に注力できるよう、手作業の削減を目指している。

ネスレは、140カ国にまたがるSAP S/4HANAへの変革を基盤として、JouleとAccounts Receivable Assistantによる売掛金管理の支援を紹介した。SAPの発表によると、リスクや業務上の状況に応じて回収業務に優先順位を付け、次に取るべき対応を提案する。

PwCはBilling Assistantを活用し、請求処理の問題を早期に見つけ、請求の正確性や顧客対応を改善する取り組みを説明した。SAPとPwCは、同分野での協業をさらに広げるとしている。試験導入から実務での活用まで、各社の導入段階や対象業務に応じた展開が進む。

SAPは、Anthropic、Microsoft、NVIDIA、Amazon Web Services、Google Cloud、Palantirとの提携も拡大している。内容は、Claudeなどのモデル利用、エージェント間連携、実行環境、データ統合、クラウドERP移行支援などに及ぶ。AIの応答生成に加え、企業データへの接続と業務実行を支える環境を整える狙いだ。

■通期は従来レンジの上限寄り、クラウド比率は65%に

SAPは2026年通期のクラウド売上高について、恒常為替レートベースで258億~262億ユーロ(約290億~294億米ドル)の上限寄りを見込む。クラウド・ソフトウェア売上高も、同363億~368億ユーロ(約408億~413億米ドル)の上限寄りとした。第2四半期まで維持していた売上高の予想レンジを据え置き、その中での見通しを上方に寄せた形だ。

一方、通期のCCB成長率は恒常為替レートベースで、2025年の25%からわずかに減速するとの見通しを維持した。この予想は、第4四半期のマクロ経済環境が安定することを前提としている。2026年通期と第4四半期の業績発表は、2027年1月28日に予定されている。

第3四半期のクラウド売上高は、総売上高の約65%を占めた。10年前の2016年第3四半期は、クラウドのサブスクリプション・サポート売上高が7億6900万ユーロ(約1350億円)、総売上高が53億7500万ユーロ(約9460億円)で、比率は約14%だった。売上構成は、継続的にクラウド中心へ変化している。

オンプレミス製品の保守などを含むソフトウェアサポート売上高は、前年同期比5%減の24億3400万ユーロ(約4280億円)となった。SAPは顧客のクラウド移行が進むことで、今後数年のサポート売上高の減少率が高まると見込む。RISE with SAPやSAP GROWによるクラウド導入と、AI・データ機能の拡充を並行して進めている。

経営体制でもAIへの注力が進む。SAPは2026年3月に組織再編を発表し、7月1日付で製品・開発組織の一部の運営責任を暫定的にクライン氏へ移した。新設したSAP Business AI Platform & CTOとSAP Autonomous Suiteの責任者が、同氏に直接報告する体制となった。

クライン氏は規制についても発言している。2025年のTIMEのインタビューでは、欧州共通の枠組みと開発・試験段階の自由度を求め、過剰な規制による競争上の不利益を懸念した。資本市場では、Cinco Díasが2024年10月にSAPの時価総額がASMLを上回ったと報じた。Stock Analysisによると、2026年10月21日時点のSAPの時価総額は2702億5000万米ドル(約42兆4000億円)で、2026年6月にはCinco DíasがASMLを欧州最大の上場企業と報じている。

元記事: SAP Crosses €10 Billion Quarterly Revenue as Joule AI Agents Drive Cloud Backlog to Record

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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