スペースXとテスラ、合併検討へ特別委員会―マスク氏「いいアイデア」

SpaceXとテスラが合併を検討する特別委員会を設置した。(写真:unitysphere © 123RF.com)[写真拡大]
SpaceXとテスラの最高経営責任者(CEO)を兼ねるイーロン・マスク氏は10月20日(米国時間)、両社が合併を検討する特別委員会をそれぞれ設置したと明らかにした。SpaceXの2026年第3四半期決算説明会で、統合は「いいアイデア」だと支持する考えを示した。
両社の特別委員会は、株主の要請を受けて設置され、独立取締役で構成される。マスク氏は、自身が利益相反のある立場にあるため、委員会の協議には参加できないと説明した。
■合併検討が具体化、取引条件は協議中
マスク氏は説明会で、両社の特別委員会が取引条件の合意に至っておらず、今後合意できる保証もないと説明した。合併を確実視する見方は行き過ぎだとしたうえで、各委員会が案をまとめ、株主投票にかける必要があると述べた。
同氏は、AIソフトウエア、半導体設計、半導体製造計画「Terafab」、ロボティクス、宇宙への輸送などを協力による利点が大きい分野として挙げた。ショットウェル社長兼COOも通信分野に言及した。マスク氏は統合を「いいアイデア」だと支持しつつ、最終的には両社の特別委員会と株主の判断に委ねられるとの認識を示した。
両社の事業が重なるという認識は、以前から示されていた。ロイターによると、マスク氏は7月22日のテスラの第2四半期決算説明会で、SpaceXとの協業が多方面に広がり、重なりが増していると説明し、企業の統合には適切な手続きが必要だと述べていた。
SpaceXのグウィン・ショットウェル社長兼最高執行責任者(COO)も、6月に統合の可能性に言及している。TechCrunchによると、同氏はCNBCのインタビューで、合併すればマスク氏の負担が少し軽くなるかもしれないと語った。
■SpaceXは161%増収、AI事業と通信が成長
SpaceXが10月20日に発表した2026年7~9月期決算は、売上高が前年同期比161%増の146億ドル(約2兆3100億円)だった。同社によると、衛星通信などのConnectivity部門と、AIを扱うSuper Intelligence(SI)部門が成長を牽引した。
純利益は44億ドル(約6950億円)で、前年同期の純損失11億ドル(約1740億円)から黒字に転換した。調整後EBITDAは88億ドル(約1兆3900億円)だった。調整後EBITDAは、利払い・税金・減価償却などの影響に加え、同社が定める項目を調整した非GAAPの利益指標だ。
SI部門の拡大に伴い、計算基盤への投資も進む。SpaceXによると、計算設備の公称電力容量を示す「nameplate compute」は9月30日時点で1.7ギガワットとなり、前年同日の0.6ギガワットから増加した。
SpaceXは6月12日、ナスダックに銘柄コード「SPCX」で上場した。ロイターによると、IPOでは当初約5億5556万株を1株135ドルで売り出し、750億ドル(約11兆9000億円)を調達した。公開価格に基づく企業評価額は1兆7700億ドル(約280兆円)だった。
同社の四半期報告書によると、追加販売枠の全量行使を含む最終的な販売株数は約6億3890万株で、手数料などを差し引いた手取額は856億7500万ドル(約13兆5000億円)だった。従来の最大記録だったサウジアラムコのIPOは、2019年12月の当初調達額が256億ドル(約4兆400億円)、追加販売分を含めた総額が294億ドル(約4兆6500億円)で、SpaceXはこれを上回った。
■半導体、Grok、蓄電池で深まる接点
両社の協業を象徴するのが、AI向け半導体を製造するTerafab計画だ。SpaceXの開示資料では、テスラの車両や人型ロボット「Optimus」向けの推論用半導体と、宇宙環境向けの半導体という二つの用途が示されている。
テキサス州知事室の8月6日の発表によると、Terafabの量産工場は同州グライムズ郡に建設される計画だ。一方、テスラはギガファクトリー・テキサスの北側敷地で、量産に先立つ研究用施設の建設を進めている。
AIサービスの連携も進んでいる。マスク氏は7月のテスラ決算説明会で、車内へのGrok導入に加え、コンピューター上の作業を支援する「Digital Optimus」でのGrok活用に言及した。日本ではTesla Japanが7月21日、対応車両へのGrokの無線ソフトウエア配信開始を発表している。
資本と製品の取引も両社を結び付けている。テスラの第2四半期報告書によると、同社は3月にSpaceXへ出資し、4~6月期に保有株式の評価に伴う約10億ドル(約1580億円)の利益を計上した。SpaceXの報告書では、2026年上半期にテスラから3億2900万ドル(約520億円)の大型蓄電池「Megapack」を購入したことが確認できる。
ロイターは、テスラがSpaceXの一部プロジェクトにバッテリーや製造技術を供給していると報じている。半導体、AI、エネルギー設備にまたがる接点は、統合の事業上の利点を考える土台となっている。
■株主承認と統合後の議決権が焦点
テスラは「TSLA」、SpaceXは「SPCX」として上場しており、統合案は取締役会や株主の手続きを通じて判断される。マスク氏は、テスラ側では投票に参加した株式だけでなく、全株式の50%の賛成が必要になると説明し、株主の支持を得る難しさを強調した。
議決権の違いも重要だ。ロイターによると、マスク氏はIPO後もSpaceXの議決権の82%超を保有している。Ars Technicaは、テスラでの議決権は約20%であり、統合時の評価額や交渉条件によっては、同氏が統合会社で議決権の過半数を握る可能性があると指摘している。
Ars Technicaによると、合併への言及があった10月20日時点の時価総額は、SpaceXが約2兆ドル(約316兆円)、テスラが約1兆5000億ドル(約237兆円)だった。株式を対価とする取引では、交換比率と統合後の株式・議決権の設計が、両社の株主にとって重要な交渉事項となる。
具体的な取引案がまとまれば、必要な規制上の審査や、米証券取引委員会(SEC)への開示手続きも焦点になる。両社の協業を一つの企業にまとめる利点と、各社の株主が受け取る価値をどう両立させるかが、今後の協議の中心となる。
元記事: Elon Musk Says SpaceX, Tesla Merger Is a ‘Good Idea,’ But There’s a Catch
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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