ニュージーランドの大型昆虫「ウェタプンガ」1万1214匹を放野、2島で野生繁殖が複数世代続く

(Aucklandzoo.co.nz)[写真拡大]
ニュージーランドの大型昆虫ウェタプンガを飼育下で増やし、野外へ戻す取り組みが査読付き論文にまとめられた。2025年までに計1万1214匹が10地点へ放野され、継続調査が行われた2島では野生生まれの個体が複数世代にわたり確認された。研究チームは、この2島で新たな個体群が定着したと評価している。
■一つの島に残った大型昆虫
ウェタプンガ(Deinacrida heteracantha)は、コオロギやバッタを含むバッタ目で最も重い昆虫とされる。オークランド動物園によると、雌の成虫は平均約40グラムで、卵を抱えた雌では71グラムの記録がある。夜行性で飛べず、主に植物の葉を食べる。
かつてはニュージーランド北島のノースランド、オークランド周辺、グレート・バリア島にも分布していた。しかし、森林の農地化や持ち込まれた哺乳類による捕食の影響を受け、20世紀半ばにはハウラキ湾のテ・ハウトゥル・オ・トイ(リトル・バリア島)に限られるようになった。同島の面積は約31平方キロメートルで、ネコは1980年、太平洋ネズミは2004年に根絶された。
ネズミの根絶後、一定の調査時間内に見つかったウェタプンガは2005年の78匹から2009年の171匹へ増えた。それでも、唯一の野生個体群から多数を直接移して新たな個体群をつくる方法には、供給源への影響が懸念された。保全関係者は少数を採集し、飼育下で増やした子を放野する方針を選んだ。
■6匹から始まった飼育繁殖
2008年12月、雄3匹と雌3匹がテ・ハウトゥル・オ・トイからオークランドの施設バタフライ・クリークへ移された。その後は2009年と2012年に同施設へ各12匹が追加され、2012年にはオークランド動物園も別の繁殖群を設けた。動物園の繁殖群には2016年、2021年、2024年にも各12匹が加えられた。
論文によると、両施設は飼育室を摂氏10~22度に管理し、雌には産卵用の湿った土を用意した。餌にはカラカやカラムなどの在来植物の葉、湿った落ち葉、魚用フレークを使った。特に若い幼虫には、タンパク質源となる魚用フレークが重要だった。
飼育記録では、卵が孵化するまで平均約9.5カ月かかり、2年後も孵化する卵があった。幼虫は約14カ月の間に10回脱皮して成虫になる。雌1匹から孵化した幼虫の数は個体によって異なり、最大記録は1350匹だった。
当初は幼虫を個別に飼っていたが、オークランド動物園は網張りのケージでまとめて育てる方法を導入し、バタフライ・クリークも採用した。同じケージには孵化時期の近い幼虫を入れ、20匹を適切な飼育密度とした。大きさの異なる幼虫を混ぜると共食いが起きやすく、条件の整った群れでは放野時までの生存率が最大80%に達した。
■10地点へ放野、2島で定着を確認
論文に記録された放野先は、ハウラキ湾とベイ・オブ・アイランズの8島と、オークランドの本土にある柵で囲まれた2カ所の地域公園だ。最初の放野はモトゥオラ島で2010年、ティリティリ・マタンギ島で2011年に行われた。2025年までの放野は45回、計1万1214匹に上る。
小規模な放野では、個体を竹筒の隠れ場所に入れて木の枝に取り付けた。多数の若い幼虫を運ぶ場合は、通気性のある容器を使い、夜間に木へ放した。論文では、移送・放野中の死亡は記録されていない。
最初の放野先となった2島では、それぞれ2カ所を重点的に調査した。研究チームは観察日と飼育下で得た発育データを照らし合わせ、2025年時点で3カ所に野生生まれの第4世代、ティリティリ・マタンギ島の1カ所に第5世代とみられる個体がいたと推定した。世代数は個体ごとの血統を追跡した値ではなく、発育期間を用いた推定である。
夜間調査では、放野先のモトゥホロパパ島で探索者1人・1時間当たり最大28.5匹、オタタ島で最大11.2匹を確認した。供給源のテ・ハウトゥル・オ・トイでネズミ根絶後に記録された値は最大1.4匹だった。こうした発見数は放野先での生息を示す一方、残る地点で複数世代にわたる存続を判断するには、調査を続ける必要がある。
■森林での役割と残る調査課題
ウェタプンガは在来植物の葉を食べ、排せつ物を通じて養分や種子を森林に運ぶ。オークランド動物園は、こうした働きに着目してウェタプンガを「森の庭師」と表現している。放野先で個体群が増えることは、その地域の森林でこうした働きが広がることにもつながる。
飼育群のもとになった個体は限られている。近縁のクック海峡巨大ウェタを調べた先行研究は、移送先で遺伝的多様性を保つため、血縁関係のない基礎個体を少なくとも70匹確保するよう提言した。ウェタプンガの最初の2島には、複数回の採集に由来する最大78匹を基礎個体とする子が放たれており、2018~2019年に採取されたDNA試料は今後の遺伝的評価に使われる。
本土の放野先はシェークスピア地域公園とタファラヌイ地域公園で、いずれにもマウスが残る。研究チームは、マウスがいる環境でウェタプンガの個体群が長期的に定着するかを調べている。ほかの島でも継続的な放野が行われてきたため、野生生まれの世代を確認するには、放野終了後の観察が重要になる。
■ほかの昆虫保全へ広がる知見
昆虫の保全では、飼育繁殖で放野数を確保し、放野後も世代をまたいで調査するための方法が求められる。2025年に米国科学アカデミー紀要に掲載された資金配分の分析では、調査対象となった1992~2016年の保全資金の82.9%が脊椎動物向けで、無脊椎動物向けは6.6%だった。ウェタプンガの取り組みは、大型の無脊椎動物について飼育、放野、定着調査を一連の成果として記録した事例となる。
論文の筆頭著者でニュージーランド自然保護局の名誉研究員でもあるクリス・グリーン氏は、飼育管理や放野方法、個体群の存続について得た知識を共有できると同局の発表で述べた。同氏は、同様の取り組みが考えられる昆虫として、カンタベリーの希少なゾウムシ(Hadramphus tuberculatus)や在来のクワガタムシ類を挙げている。このゾウムシは2004年の再発見に続き、2024年には別の生息地でも確認された。
知見はマホエヌイ巨大ウェタ(Deinacrida mahoenui)の飼育繁殖にも生かされている。ニュージーランド自然保護局によると、オトロハンガ・キウイ・ハウスは2021年以降に300匹超を飼育下で繁殖させ、2025年11月には97匹をロトカレ景観保護区へ移した。政府は2026年9月、この繁殖事業へ国際観光客税から7万5000ニュージーランドドル(約664万円、同年10月8日の1ニュージーランドドル約88.5円換算)を拠出すると発表した。
■保全上の区分も変化
ニュージーランドの脅威分類制度では、ウェタプンガは取り組みの初期に「国内絶滅危惧」に分類されていた。2022年の評価では「国内増加中」となった。自然保護局によると、後者は個体数が小さいながら増加しており、中期的な絶滅リスクが残る区分だ。
テ・ハウトゥル・オ・トイとウェタプンガを大切に守ってきたマオリのガーティ・マヌヒリは、島からの採集を承認し、事業を継続して支えてきた。ニュージーランド北部の地域団体も資金調達、放野、現地での観察に参加した。6匹から始まった飼育繁殖は10地点への放野につながり、そのうち2島で世代を重ねた個体群の定着が記録された。
元記事: Giant Weta Beat Extinction: 11,000 Zoo-Bred Insects Produce 5 Wild Generations
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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