AIに考える作業を任せると何が起きる? 子どもの発達への影響、研究はまだ初期段階

2026年10月2日 12:14

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記事提供元:International Business Times

Photo by Steve A Johnson on Unsplash

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 人工知能(AI)は子どもや10代の日常に急速に浸透している。一方、頻繁なAIチャットボット利用が発達途上の認知機能や社会・情緒面に長期的にどのような影響を及ぼすのかについては、研究が利用拡大に追いついておらず、未解明の部分が多い。

 研究者は現在、注意力や創造性、批判的思考、感情面の発達に加え、本来は自分で行う難しい思考作業をAIに任せる「認知的オフローディング」の影響などを調べ始めている。

■10代の64%がAIチャットボットを利用

 学術誌「AI & Society」が9月25日に公開した査読付き研究では、青少年とテクノロジーを研究する研究者ら141人への調査と、15人への半構造化インタビューを実施した。

 研究チームは、AIチャットボットが青少年の発達に及ぼす影響について「ほとんど分かっていない」と指摘。AIの変化が速く、研究成果が公表されるころには対象となる技術や利用実態が変わっている可能性もあり、研究分野や手法をまたいだ取り組みが必要だとした。

 AI利用はすでに10代に広く浸透している。米ピュー・リサーチ・センターが2025年9〜10月に13〜17歳を対象に実施した調査では、64%がAIチャットボットを利用していると回答した。

 用途では54%が学校の勉強に使った経験があり、10%は学校の課題の「すべて」または「大半」でチャットボットの支援を受けていると回答した。感情面の支援や助言に利用したとの回答も12%あった。

■6〜7歳の脳活動を成人と比較

 子どもが生成AIを使っている際の脳活動を直接調べる研究も始まっている。

 イスラエル工科大学(テクニオン)の研究チームは、6〜7歳の子ども15人と成人16人が、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)の装置内でChatGPTと5分間の創造的な会話を行っている際の脳活動を比較した。

 プレプリントとして公表された研究によると、子どもは成人に比べ、認知制御や注意に関連する複数の脳内ネットワークで内部の機能的結合が弱かった。成人では認知制御に関わるネットワークの結合と創造性との関連も確認されたが、子どもでは同様の関係はみられなかった。

 ただし、この研究の参加者は計31人と少なく、査読を経ていないプレプリントである。子どもと成人を1回の短時間の課題で比較した研究であり、ChatGPTの利用が子どもの発達に悪影響を与えることや、脳に長期的な変化を起こすことを示したものではない。

■「考える作業」をAIに任せる影響

 焦点の一つとなっているのが、本来自分で行う認知作業を外部の道具に任せる「認知的オフローディング」である。

 学術誌「Frontiers in Developmental Psychology」に7月掲載された論文は、計画、情報の評価、論理的な主張の組み立てといった実行機能が発達途上にある青年期では、この問題が特に重要になる可能性を指摘した。

 研究者らはこれを「認知的オフローディングのパラドックス」と呼ぶ。生成AIが最も役立つのは、計画や証拠の評価、議論の構築といった負荷の高い作業だが、こうした作業を自分で繰り返すこと自体が、青年期の実行機能の発達に重要である可能性があるためだ。

 もっとも、論文はこれを検証すべき仮説として提示している。特定のAI利用が青少年の実行機能の発達を長期的に損なうことを示す縦断研究や実験的証拠は現時点ではないとしている。

■答えを出すAIと、考えるのを助けるAI

 教育分野では、AIが学習者の思考を支える場合と、思考そのものを代替する場合で結果が異なる可能性を示す実験結果がある。

 米ペンシルベニア大学などの研究チームは、トルコの高校で約1000人の数学履修者を対象に無作為化比較試験を実施した。一般的なChatGPTに近い「GPT Base」、答えを直接与えずヒントを出すよう設計した「GPT Tutor」、AIを使わない対照群を比較した。

 AIを利用できる練習問題では、GPT Base群の成績は対照群を48%、GPT Tutor群は127%上回った。一方、AIを使えないその後の試験では、GPT Base群の成績は対照群を17%下回った。

 ヒントを中心に与えるGPT Tutor群は、AIを使わない対照群との間に統計的に有意な成績差がなかった。

 研究チームは、生成AIが利用中の課題遂行を高める一方、適切な仕組みがなければ技能習得を妨げる可能性があると指摘した。ただ、実験はトルコの1校の数学授業で行われた短期研究であり、結果をあらゆる科目やAI利用にそのまま当てはめることはできない。

■メンタルヘルスの相談にもAI

 AI利用の影響をめぐる研究対象は学習だけではない。

 「JAMA Pediatrics」が6月に公表した全米調査では、12〜21歳の19.2%が2025年時点でAIチャットボットをメンタルヘルスに関する助言を得るために利用した経験があると回答した。前年の類似調査の13.1%から増加した。

 利用者の42.8%は少なくとも月1回利用しており、63.3%はAIに相談していることを誰にも伝えていなかった。

 青年期の発達を研究する専門家は、AIとの社会的な交流が、人間関係を通じて身につける能力にどのような影響を及ぼすのかにも注目している。

 学術誌「Perspectives on Psychological Science」が8月28日に公表した論文は、青年期を、社会への帰属意識や感情調整、自律性、アイデンティティー形成といった重要な発達課題が進む時期と位置付けた。

 生成AIは、対人交流を試したり、感情を整理したり、自分の考えやアイデンティティーを探ったりする場を提供する可能性がある。一方で、人間同士の関係や困難への対処を通じて得られる経験を置き換える可能性もあるとしている。

 こうした恩恵やリスクの多くについて、長期的な影響を示す研究はまだ不足している。

■子どもの86%が何らかの形でAIを利用

 研究が急がれる背景には、子どものAI利用がすでに広範囲に及んでいることがある。

 米Common Sense Mediaが2026年に9〜17歳の1204人を対象に実施した調査では、86%が何らかの形でAIを利用・体験したことがあると回答し、4人に1人近くが毎日利用していた。

 一方、4割を超える子どもは、保護者からAIの安全な利用について一度も話をされたことがないと回答した。

 現段階の研究から、AI利用そのものが子どもの脳や認知能力に長期的な悪影響を及ぼすと結論付けることはできない。研究者が重視しているのは、単純な利用時間ではなく、年齢や利用目的、AIが思考を支援するのか代替するのか、人間との交流を補完するのか置き換えるのかといった具体的な利用方法を区別して調べることである。

※この記事はInternational Business Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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