Intel EMIBとTSMC CoWoS、AIチップ大型化で競争の軸は用途と設計へ

2026年9月12日 09:43

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記事提供元:Tech Times

Photo by Slejven Djurakovic on Unsplash

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AIチップの大型化を背景に、先端パッケージング技術の選択肢が広がり始めた。Nvidiaの主力AIアクセラレータではTSMCのCoWoSが引き続き重要な役割を担う一方、Googleの次世代TPUやAmazonのTrainium 3では、IntelのEMIB-Tを採用するとの観測が伝えられている。ただし、これらの顧客計画には正式発表されていない情報が多く、学習用と推論用で採用技術が明確に二分されたとまではいえない。

■AIチップの大型化を支える先端パッケージング

高性能なAIアクセラレータでは、演算を担うロジックダイと高帯域幅メモリ(HBM)を短距離かつ高密度に接続する必要がある。単一の大型ダイだけで性能を伸ばすことが難しくなるなか、複数のロジックダイやHBMを一つのパッケージに統合する技術の重要性が増している。

TSMCのCoWoSは、NvidiaをはじめとするAIアクセラレータで広く採用されてきた2.5Dパッケージング技術である。CoWoSには複数の方式があり、CoWoS-Sは大面積のシリコンインターポーザ、CoWoS-Rは再配線層(RDL)インターポーザを使用する。CoWoS-LはRDLベースの中間層に、必要な場所だけ高密度配線を担うLSI(Local Silicon Interconnect)を組み込む。

このため、CoWoS全体を「パッケージ全面を覆うシリコンインターポーザ方式」と捉えるのは正確ではない。TSMCもパッケージの大型化とコストの抑制に向け、用途に応じて異なる構造を提供している。

■EMIBは基板内の局所ブリッジでダイを接続

IntelのEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)は、有機パッケージ基板の内部に小型のシリコンブリッジを埋め込み、隣接するダイを高密度に接続する技術である。大面積のシリコンインターポーザを用いず、接続が必要な場所にだけ微細配線を配置できることが特徴だ。

Intelによると、EMIBは2017年から量産され、サーバー、ネットワーク、高性能コンピューティング向け製品で使われている。EMIB-Mはブリッジ内にMIMキャパシターを組み込み、EMIB-Tはシリコン貫通ビア(TSV)を追加することで、HBMを備えた大型パッケージの電力供給に対応する。

Intelが2026年の国際会議で示した研究成果では、EMIB-Tを使った120mm角のパッケージに、レチクル面積の9倍を超える演算・メモリ用シリコンを統合した。HBM4e向けでは毎秒12ギガビット超、チップレット間接続規格UCIeでは毎秒64ギガビットの信号伝送性能を示したとしている。これらはIntelによる技術実証の数値であり、特定顧客の量産製品における性能を示すものではない。

IntelはEMIB-Tについて、2026年にレチクル面積の8倍超、2028年には12倍超へ対応範囲を広げる計画を示している。大型のシリコンインターポーザを作らずにパッケージを拡張できる点は、ロジックダイやHBMの搭載数が増えるAIチップで有力な選択肢となる。

■GoogleとAmazonで採用観測

Googleの次世代TPU「Humufish」では、IntelのEMIBまたはEMIB-Tが採用されるとの報道が相次いでいる。報道では2027年後半の生産開始や、2028年までに300万個を超える規模が取り沙汰されているが、IntelとGoogleによる正式な顧客発表ではない。

GoogleのTPUは世代や製品によって学習と推論の双方に使われる。Googleは第8世代TPUで、大規模な事前学習向けのTPU 8tと、推論や応答処理を重視したTPU 8iを分けている。したがって、GoogleによるEMIB採用観測を、そのまま「推論用チップがEMIBへ移行した」と一般化することはできない。Humufishについても、対象となる製品構成や用途、TSMCとの分担は正式には明らかにされていない。

AmazonのTrainium 3についてもEMIB-T採用が報じられている。Trainiumシリーズは名称の印象とは異なり、現在はAIモデルの学習と推論の両方を対象とするアクセラレータとして展開されている。Trainium 3の事例も、EMIBが推論専用のパッケージング技術であることを示すものではなく、大型化、電力供給、コスト、調達先の分散などを含む総合的な設計判断とみるのが妥当だ。

■歩留まり改善の報道と残る量産課題

KeyBanc Capital Marketsのサプライチェーン調査を引用した報道では、EMIB-Tのパッケージ工程の歩留まりが2026年7月に約98%へ達したとされる。数カ月前に伝えられた約90%から改善し、外部顧客向け量産に向けた重要な進展となる。

一方、約98%という数値はIntelが顧客製品の量産実績として公式発表したものではなく、調査会社によるサプライチェーン情報である。また、別工程となるEMIB-T用基板については、供給企業が量産立ち上げに取り組んでいる段階だと報じられている。パッケージ工程の歩留まりだけを基に、供給網全体がすでに成熟したと判断することはできない。

高価なロジックダイと複数のHBMを組み込む先端パッケージでは、組み立て後の不良が製造コストへ大きく影響する。今後の焦点は、パッケージ工程だけでなく、基板を含む供給網全体で安定した歩留まりと生産能力を確保できるかにある。

■CoWoSとEMIBは用途だけでは決まらない

CoWoSとEMIBの選択には、必要な接続密度、パッケージ面積、HBMの数、電力供給、量産コスト、利用できる生産能力など、複数の条件が関係する。学習では常にCoWoS、推論では常にEMIBが適するという単純な対応関係ではない。

TSMCのCoWoSは、先端プロセスとHBMを組み合わせたAIアクセラレータで豊富な量産実績を持つ。CoWoS-Sの大面積シリコンインターポーザは高密度な接続に対応し、CoWoS-LとCoWoS-Rは、より大型で複雑なシステムの統合に向けた選択肢となる。

EMIBも、局所的なブリッジしか持たないため学習用途には向かないと一律に判断することはできない。IntelはEMIB-TをAIと高性能コンピューティングの双方に向けた技術と位置付け、高帯域幅のロジック間接続とロジック・HBM間接続を主要用途としている。採用技術はワークロードの名称よりも、個々のチップの構成とシステム設計によって決まる。

■TSMCもブリッジ型技術とパネル方式を模索

TSMCは、台湾のパッケージ基板メーカーKinsus Interconnect Technologyと、IntelのEMIBに似た新しいパッケージング方式を開発していると報じられている。報道では「EMIB-like」または「準EMIB」と呼ばれているが、TSMCとKinsusは構造や正式名称、量産時期を公表していない。

CoWoS-Lもすでに局所的なシリコン接続部を使用しているため、新方式の焦点は、単にシリコンブリッジを導入することではない。ブリッジを有機パッケージ基板へ直接組み込むのか、RDLインターポーザや組み立て工程をどのように変えるのかが注目点となる。

TSMCは、円形ウエハーではなく長方形パネルを利用するCoPoS(Chip-on-Panel-on-Substrate)の開発も進めているとされる。パネル方式は大型パッケージを効率的に配置しやすく、AIチップのさらなる大型化に対応する手段になり得る。ただし、量産時期や個別顧客への採用は正式に確定していない。

■大型パッケージの次を担うガラス基板

さらに先を見据えた技術として、ガラスコア基板の開発も進む。ガラスは有機材料より寸法安定性に優れ、シリコンに近い熱膨張特性を持つため、大型パッケージの反りを抑えやすい。表面の平たん性を生かした微細配線や、ガラスを貫通する配線の形成も期待されている。

Intelは2026年1月のネプコン ジャパンで、EMIBを組み込んだ78mm×77mmのガラスコア基板を展示した。展示品は10-2-10の積層構造と2個のEMIBブリッジを備え、Intelは試験で「SeWaRe」と呼ばれる微小亀裂の問題が確認されなかったとしている。現段階では技術展示であり、大規模な商用量産の開始を意味するものではない。

ガラス基板は、EMIBやCoWoSを直ちに置き換える単一の後継技術というより、将来の大型パッケージを支える基板材料の候補である。今後は製造コスト、加工精度、信頼性、量産歩留まりを含めた実用化競争が続く。

■競争の軸は性能、面積、コスト、供給力

AI半導体のパッケージング市場では、TSMCのCoWoSが引き続き中心的な地位を占める一方、IntelのEMIBが外部顧客向けの選択肢として存在感を高めている。特に、ロジックダイと多数のHBMを組み合わせる大型パッケージでは、EMIBの構造と拡張性が注目される。

ただし、現時点で確認できるのは、CoWoS一極集中だった市場に別の有力な技術が加わりつつあるという段階である。顧客名、発注量、歩留まり、コスト削減率には非公式情報や企業側の主張が含まれ、Intelの外部顧客向けEMIB-Tも本格的な量産実績を積む途上にある。

今後の競争は、学習か推論かという二分法ではなく、必要な帯域幅、搭載するダイとHBMの数、電力、パッケージ面積、製造コスト、供給能力をどう組み合わせるかを軸に進む。CoWoSとEMIBは、成長するAI半導体市場で設計ごとに選ばれる競合技術として、並行して発展していくことになりそうだ。

元記事: EMIB vs. CoWoS: Google, Amazon Back Intel for Inference as Nvidia Keeps Training on TSMC

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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