仏Univity、26GHz帯の衛星5G通信を軌道上で実証 TDDと衛星搭載基地局を組み合わせ

2026年9月11日 23:22

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記事提供元:Tech Times

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フランスの宇宙スタートアップUnivityは9日、軌道上の衛星に搭載した5G基地局と地上端末の間で、ミリ波と時分割複信(TDD)を使った双方向の5G非地上系ネットワーク(NTN)接続に成功したと発表した。

軌道上実証機「uniSpark」を使い、衛星上で信号を処理する再生中継型の5G基地局、ミリ波通信、TDDという3要素を組み合わせた。同社によると、この組み合わせによる軌道上実証は初めてであり、通信事業者の地上ネットワークと連携する衛星通信基盤の実現に向けた技術的な節目となる。

一方、今回の実証は単一の技術実証機と専用の地上端末を使ったもので、一般のスマートフォンを接続する商用サービスではない。通信事業者が保有する地上向け周波数を衛星通信に利用するには、各国・地域の制度に基づく認可や他システムとの干渉調整も必要になる。

■地上5Gの技術を使った衛星通信

試験はフランス南西部トゥールーズにあるフランス国立宇宙研究センター(CNES)の施設で実施された。uniSparkは2025年6月に打ち上げられ、高度375km未満の超低軌道(VLEO)に投入された。CNESは試験場所や地上設備を提供し、France 2030プログラムも実証を支援した。

その後の試験では各構成要素を段階的に検証し、地上端末をuniSparkのネットワークに5G端末として同期・登録した。地上端末は衛星上の5G基地局を経由し、標準的な5Gコアネットワークに接続された。

Univityは、衛星が単に電波を中継するのではなく、軌道上で5Gの無線アクセス処理を担う構成を採用した。通信事業者が地上網で使う5G関連技術を衛星通信にも活用し、地上と宇宙を別々の通信基盤として扱うのではなく、連携したネットワークとして運用する構想である。

創業者兼CEOのCharles Delfieuxは、「宇宙はついに、地上5Gネットワークの自然な拡張になり得る」と述べた。

■26GHz帯とTDDを採用

今回の接続では、欧州の地上5Gにも割り当てられている26GHz帯に対応するミリ波技術とTDDを組み合わせた。TDDは、一つの周波数帯で上り通信と下り通信の時間を切り替えて利用する方式である。

Univityは将来、通信事業者が保有する5G用周波数やネットワーク技術を生かし、衛星回線を卸売型で提供する事業を計画している。衛星事業者がエンドユーザーへ直接サービスを販売するのではなく、通信事業者が顧客やブランド、サービス管理を維持できる基盤を目指す。

もっとも、地上向けに割り当てられた周波数免許が、そのまま衛星からの送信にも適用されるとは限らない。実際のサービスには、利用地域ごとの周波数制度への対応や、地上局、衛星、周辺システムとの干渉を防ぐための調整が不可欠となる。uniSparkが実証したのは、こうした事業構想の前提となる通信方式を軌道上で動作させられることだ。

■高速移動する衛星で同期を維持

地上のTDDネットワークでは、基地局と端末が決められた時間に送信と受信を切り替える。基地局が高速で移動する衛星に搭載される場合、地上設備とは異なる同期上の課題が生じる。

衛星と地上端末の距離は通過中に変化し続けるため、信号の伝搬時間も一定ではない。高度375kmを真上方向に伝わる電波の片道時間は約1.25ミリ秒だが、実際の距離と遅延は衛星の位置によって変わる。送受信を切り替える際には、この変化を見込んだタイミング制御が必要となる。

衛星と端末の相対運動によって生じるドップラーシフトへの対応も欠かせない。受信側で観測される周波数が送信時からずれるため、補償しなければ5G信号の同期や復調が難しくなる。今回の実証では、こうした軌道上特有の条件下で地上端末の同期とネットワーク登録まで確認した。

CTOのLaurent Bouscaryは、地上5Gから派生した技術や開発成果を広く利用し、独立した通信体系を一から構築せずに衛星インフラを構成できる可能性を今回の実証が確認したと説明した。

■衛星自体が5G基地局として処理

衛星通信の構成は、大きく透明中継型と再生中継型に分けられる。透明中継型は「ベントパイプ型」とも呼ばれ、衛星が受信した電波の周波数変換や増幅を行って地上へ再送信する。5G基地局であるgNBの主要機能は地上側に置かれる。

これに対して再生中継型では、衛星上に基地局機能を配置する。受信信号を衛星上で復調・復号し、5Gプロトコルに基づく無線アクセス処理やスケジューリングを行う。uniSparkはこの再生中継型を採用し、地上端末と直接TDDのタイミングを合わせた。

衛星上で基地局処理を行えば、地上の基地局から衛星を往復して応答する構成に比べ、無線区間のタイミング制御を衛星と端末の間で完結させやすくなる。軌道上の基地局と地上端末が一つの周波数を時間で共用するという構造は、地上のTDDネットワークを衛星区間へ広げるUnivityの構想の中核となっている。

■3GPPのNTN標準との関係

携帯通信の標準仕様を策定する3GPPは、Release 17から5G NRへの衛星などの非地上系ネットワークの統合を進めてきた。Release 17とRelease 18では主に透明中継型を前提とし、Release 19では衛星などの飛行体に5Gシステム機能を置く再生中継型の構成が追加された。

uniSparkはRelease 19の策定期間中に設計、打ち上げられた技術実証機であり、商用の標準チップセットではなくUnivity独自の実装を使用している。今回の成果は、再生中継型基地局とミリ波TDDを実際の軌道環境で組み合わせた実装例となる。

標準仕様への対応状況や相互接続性、通信性能の詳細については、今後の実証が必要となる。Univityは今回、接続速度や遅延、衛星が低い仰角にある場合を含む通信可能時間、安定性など、商用サービスを評価するための詳しい測定結果を公表していない。

■26GHz帯利用の利点と課題

Univityは、既存の衛星通信で広く使われるKu帯やKa帯とは異なり、欧州の通信事業者が地上5G向けに利用しているミリ波帯を活用する方針である。周波数利用が集中する既存の衛星帯域とは別の選択肢を開き、地上ネットワークとの技術的な共通性を高める狙いがある。

26GHz帯のような高い周波数では、利用できる帯域幅を広く取りやすい半面、伝搬損失が大きく、降雨や大気の影響も受ける。Univityが高度375km未満のVLEOを選ぶ背景には、通信距離を短くして伝搬損失と遅延を抑える狙いがある。

今回使われたのは実証用の地上端末であり、一般的なスマートフォンによる26GHz帯の衛星直接通信を確認したものではない。端末のアンテナ性能や送信電力を含む商用時のリンク設計は、次段階で検証される項目となる。

■2機の実証衛星で商用構成を検証へ

Univityは開発を3段階で進めている。uniSparkを使った今回の試験を第1段階と位置付け、続く「uniShape」では、商用時の構成を想定した自社設計のVLEO実証衛星2機を開発する。

uniShapeでは衛星の組み立て、統合、試験、打ち上げ、軌道上運用を進め、地上インフラと衛星を組み合わせたエンドツーエンドの5G NTNサービスを検証する。一般的なスマートフォンとの直接接続や、商用サービスを想定した通信性能の確認も目標に掲げる。計画期間は2026年4月から2028年2月までであり、打ち上げ時期や商用サービスの開始日は今後の開発状況に左右される。

第3段階の「uniSky」は、少なくとも1,600機からなるVLEO衛星群の構築を目標とする。Univityは2028年から産業化と商用規模への拡大を始める計画を示しているが、大規模な衛星群の製造、打ち上げ、周波数調整、通信事業者との接続試験が残っている。

■累計資金調達額は6,700万ユーロ超

Univityは2026年4月、Blast、Expansion、フランス政府に代わってBpifranceが運用するDeeptech 2030ファンドなどから2,700万ユーロを調達した。これにより、同社の累計資金調達額は6,700万ユーロを超えたとしている。

CNESは2025年、France 2030の枠組みでUnivityに3,100万ユーロの戦略的資金を付与した。Univityによる産業側の共同資金を含む契約総額は4,400万ユーロで、uniShapeによる5G NTNサービス実証を支援する。

通信インフラ事業者TDFも同プログラムに参加し、フランス本土の2カ所と海外領土の1カ所に置く計3カ所のゲートウェイ局について、設置場所の提供、導入、運用、保守を担当する計画である。

■欧州発の衛星通信基盤を目指す

欧州では、EUの衛星通信計画「IRIS2」が2029年の初回打ち上げに向けて本格的な配備段階へ進んでいる。既存のEutelsat OneWebに加え、政府、企業、通信事業者向けの主権的で安全な通信基盤を整備する取り組みである。

一方、SpaceXのStarlinkやAST SpaceMobile、Amazonによる衛星直接通信への投資も進んでいる。Amazonは2026年4月、Globalstarを約116億ドルで買収する契約を締結した。取引は規制当局などの承認を条件としており、2027年の完了が見込まれている。

Univityは、衛星事業者がエンドユーザーとの契約を直接持つのではなく、通信事業者へ衛星容量と基盤を提供する卸売モデルによって差別化を図る。通信事業者の既存周波数や5Gネットワークとの連携を重視する点が特徴である。

uniSparkは、この構想を支える再生中継型基地局、ミリ波通信、TDDの組み合わせが軌道上で動作することを示した。今後は2機の実証衛星を通じて、通信性能、端末との直接接続、大規模運用時の干渉管理、標準仕様との相互接続性を確認し、通信事業者が導入できる商用基盤へ発展させられるかが焦点となる。

元記事: French Startup Pulls Off Satellite 5G Using Telecom Operators’ Own mmWave Bands

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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