ESAとVast、ギリシャ人初のISS飛行で契約 2027年夏以降、承認が条件
欧州宇宙機関(ESA)と米国の宇宙企業Vastは、ギリシャ人として初めて宇宙へ向かう予定のアドリアノス・ゴレミス氏を国際宇宙ステーション(ISS)へ送る契約を締結した。ゴレミス氏はミッションスペシャリストとして参加する予定だが、搭乗にはISS参加機関による審査と承認が必要となる。
ミッションは2027年夏以降の打ち上げを目標とし、SpaceXのFalcon 9ロケットとDragon宇宙船を使用する。計画通り実現すれば、ゴレミス氏は宇宙へ行く初のギリシャ国民となる。
■ESAがギリシャを代表してVastと契約
契約は2026年9月9日、フランス・パリで開かれた国際宇宙サミットで発表された。ESAがギリシャを代表して、Vastが運営するISS民間宇宙飛行士ミッション「Vast-PAM-1」への参加について合意した。発表の場にはギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が出席した。
ゴレミス氏は、ISS参加機関による多国間クルー運用委員会(MCOP)の審査と承認を条件に、ミッションスペシャリストを務める。MCOPの決定には、NASA、ESA、ロスコスモス、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、カナダ宇宙庁の代表者による合意が必要となる。
NASAとVastは2026年2月、ISSへの6回目の民間宇宙飛行士ミッションに関する発注契約を締結した。NASAでは6回目の民間宇宙飛行士ミッション、Vastでは同社初のISS民間宇宙飛行士ミッションとして位置付けられている。
打ち上げはフロリダから2027年夏以降に実施することを目標とする。具体的な日程は、ISSを訪れる宇宙船の運航状況などを踏まえて決まる。クルーはSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられるDragon宇宙船に搭乗し、ISSに最長14日間滞在する予定だ。
■フランス、チェコ、ギリシャの3人が参加予定
船長には、フランスのESA宇宙飛行士トマ・ペスケ氏が指名されている。操縦士はチェコのESAプロジェクト宇宙飛行士アレシュ・スボボダ氏が務める予定で、ゴレミス氏が3人目のクルーとして加わる。
4人目のクルーは2026年9月11日時点で発表されていない。Vastは、最後の1人を発表した後、クルー全員による訓練を開始する方針を示している。
NASAの民間宇宙飛行士ミッションでは、Vastが4人の搭乗候補者をNASAとISSの国際パートナーへ提出し、審査を受ける。承認と正式決定を経たクルーは、NASA、国際パートナー、SpaceXとともに飛行に向けた訓練を行う。
■宇宙医学に携わってきたゴレミス氏
ゴレミス氏は、テッサロニキ・アリストテレス大学で医学を学び、フランス・ストラスブールの国際宇宙大学で学際的な宇宙科学の修士課程を修了した。
2014年には南極で1年間活動し、外部から隔離された環境において、人間の生理学と心理学に関する欧州の実験に参加した。その後、フランス宇宙医学・生理学研究所のMEDESで、宇宙環境が人体にもたらす影響を地上で模擬する臨床研究に携わった。
2018年以降はESAのフライトサージャンとして、宇宙飛行士の医学的支援に従事している。現在は主任フライトサージャンを務める。2022年にはESAの宇宙飛行士選抜で全6段階を完了した初のギリシャ人となり、2026年からESAの宇宙飛行士訓練プログラムの一部に参加している。
今後は欧州と米国で、打ち上げから地球帰還までの各段階に対応する訓練を受ける。最初の取り組みの一つとして、2026年9月に米国を訪れ、Vast、SpaceX、NASAの各チームと訓練する予定だ。
SpaceXによる訓練には、Falcon 9とDragonの運用、緊急時への対応、宇宙服や宇宙船への乗り降り、ミッションの部分的および総合的なシミュレーションが含まれる。
■医学や材料、センサーなどの実験を計画
Vast-PAM-1では、生物学・バイオテクノロジー、物理科学、人体研究、技術実証を中心とする研究活動が計画されている。
ギリシャに関係する実験と技術実証では、医学、人間生理学、農業・食品、材料、センサーなどが対象分野として挙げられている。具体的な実験内容や採択される研究計画の全容は、今後の発表を待つ必要がある。
ギリシャのデジタル統治・人工知能相ディミトリス・パパステルギウ氏は、このミッションがギリシャの科学実験と技術実証に機会をもたらすとともに、若い世代が科学、技術、工学分野を目指すきっかけになることへの期待を示した。
ESAのヨーゼフ・アシュバッハー事務局長は、ギリシャの国家的な構想が具体的な有人宇宙飛行ミッションへ移行したと評価した。ギリシャによる宇宙分野への投資拡大が、同国の宇宙産業を強化し、次世代の科学者や技術者に新たな機会をもたらすとの考えも示している。
■NASAとの商業取引を通じてISSへ
NASAとVastの契約では、VastがNASAから乗員用の消耗品、貨物輸送、保管設備など、ISSで必要となるサービスを購入する。一方、NASAは、低温状態を維持する必要がある科学試料を地球へ返送する能力をVastから購入する。
NASAはこのような民間宇宙飛行士ミッションを、ISSの利用機会を民間事業者へ広げ、地球低軌道における商業活動や研究、新技術の実証を促す取り組みとして進めている。
Vastは、今回の飛行を自社にとって初のISS民間宇宙飛行士ミッションと位置付ける。同社は商業宇宙ステーションの開発も進めており、ISSでの有人飛行を通じて得られる運用経験を、将来の宇宙ステーション事業につなげる方針だ。
ゴレミス氏を含むクルー候補者が飛行するには、NASAとISSの国際パートナーによる審査と承認を受けなければならない。打ち上げ時期もISS周辺の運航計画などに左右されるため、現段階では2027年夏以降という目標が示されている。
承認と訓練が予定通り進めば、フランス、チェコ、ギリシャの宇宙飛行士が同じDragon宇宙船に乗り、ギリシャにとって初となる有人宇宙飛行へ向かうことになる。
元記事: ESA Signs Vast Deal to Send First Greek Astronaut to ISS on 2027 Mission
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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