英アーム、AI処理をGPUに統合した「Mali G2-Ultra NX」―超解像・フレーム生成を専用回路で加速

2026年9月9日 16:16

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記事提供元:Tech Times

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ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計アーム(Arm)は2026年9月8日、AIを利用したモバイルグラフィックスとオンデバイスAIを主眼とするコンピューティングプラットフォーム「Arm CSS for Mobile 2」を発表した。新GPU「Arm Mali G2-Ultra NX」は、各シェーダーコアに専用ニューラルアクセラレータを統合し、超解像、フレーム生成、レイトレーシング映像のノイズ除去をGPU内で処理する。

Qualcommも9月2日に、専用のAdreno Matrix Coreと18MBのローカルメモリを利用する「Adreno Neural Fusion」を公表している。両社はAI処理をグラフィックスパイプラインの近くに配置してデータ移動を減らすという方向性を共有する一方、演算回路やメモリの構成は異なる。実際の画質、消費電力、応答性、持続性能の比較には、製品版SoCを搭載した端末による第三者検証が必要となる。

■CSS for Mobile 2を構成するCPU、GPU、システムIP

CSSは「Compute Subsystem」の略で、CPU、GPU、システムIP、ソフトウェア、開発ツールなどを組み合わせた構成可能なプラットフォームである。チップメーカーや端末メーカーは、各IPを個別に採用したり、独自設計や第三者のIPと組み合わせたりできる。

CSS for Mobile 2は、新しいC2 CPUクラスター、Mali G2-Ultra NX GPU、SI L2システムインターコネクト、物理実装、ソフトウェア、開発者向けツールなどで構成される。C2 CPUクラスターには、高性能コアのC2-Ultra、C2-Pro、行列演算を効率化するSME2が含まれる。

SI L2は、CPUやGPUを含む異種演算ブロックの間で、キャッシュコヒーレンシー、QoS制御、低遅延・高帯域の接続を提供する。Armは、個別の演算器だけでなく、システム全体のデータ移動や処理の連携を最適化することをCSS for Mobile 2の狙いとしている。

■シェーダーコアにニューラルアクセラレータを統合

Mali G2-Ultra NXは、Armとして初めて専用ニューラルアクセラレータを組み込んだMali GPUである。アクセラレータは各シェーダーコアに統合され、通常のグラフィックス処理やコンピュート処理と並行してニューラルグラフィックスのワークロードを実行する。

この構成では、ニューラル処理がGPUのメモリシステム、コヒーレントキャッシュ、制御機構を再利用できる。画像データをGPU外部の演算器へ送って結果を戻す処理を減らすことで、データ移動に伴う遅延や消費電力を抑える設計だ。

QualcommのAdreno Neural Fusionも、AI処理をグラフィックスパイプラインに統合するという点で共通する。同技術では、次世代Adreno GPUの処理エンジンに専用のAdreno Matrix Coreを配置し、18MBのAdreno High Performance Memoryを組み合わせる。画像やAI演算用データをGPUの近くに保持し、外部メモリへのアクセスを減らす構成である。

Armはニューラルアクセラレータをシェーダーコアに緊密に統合し、Qualcommは専用の行列演算コアと大容量のローカルメモリを利用する。どちらが同じ電力条件で優れた画質や性能を提供するかは、アーキテクチャの説明だけでは判断できない。

■超解像、フレーム生成、ノイズ除去に対応

Mali G2-Ultra NXで利用するArmニューラルテクノロジーは、Neural Super Sampling、Neural Frame Rate Upscaling、Neural Super Sampling and Denoisingの3技術を中心に構成される。

Neural Super Sampling(NSS)は、低い解像度でレンダリングした映像から高解像度画像を再構築する技術である。GPUがネイティブ解像度ですべての画素を描画する場合に比べ、レンダリング負荷を減らしながら出力解像度を高めることを目指す。

Neural Frame Rate Upscaling(NFRU)は、レンダリング済みフレームや動きの情報を利用して中間フレームを生成し、表示上のフレームレートを引き上げる。Armは、30fpsから60fps、または60fpsから120fpsへの変換を想定している。

フレーム生成では、合成フレーム自体に直近の操作結果が直接反映されない場合があるため、表示の滑らかさと入力応答のバランスが重要になる。効果はゲーム側の実装、基礎となるレンダリングフレームレート、遅延低減技術などによって変わる。

Neural Super Sampling and Denoising(NSSD)は、ニューラル超解像とノイズ除去を組み合わせ、複雑な照明や影を含むレイトレーシング映像の品質向上を図る。少ないサンプルで生じるノイズを補正できれば、限られた電力や演算資源の中で、より高度な光源処理を利用しやすくなる。

■「Neural Dawn」でニューラルグラフィックスを実演

Armは、Sumo DigitalとUnreal Engine 5を使って共同開発したゲームデモ「Neural Dawn」で、NFRUとNSSDを含むニューラルグラフィックスを実演している。リアルタイムレイトレーシングやUnreal Engineの多数光源向け技術「MegaLights」も組み合わせた。

Armの測定では、ニューラルグラフィックスの利用により、一定の電力枠におけるフレームレートまたは処理効率がネイティブレンダリング比で最大4倍となり、外部メモリへのトラフィックも最大70%減少したという。これらはArmのデモ環境と測定条件に基づく公表値であり、市販端末や各ゲームで同じ結果が得られるとは限らない。

Armは、ニューラルグラフィックスの開発環境として、Unreal Engine向けプラグイン、Vulkan向け機械学習拡張、サンプルコード、学習可能なモデルなどを含むNeural Graphics Development Kitを用意している。ゲームスタジオやエンジン開発者が、実際の制作工程へNSS、NFRU、NSSDを組み込めるようにする狙いだ。

■第3世代レイトレーシングユニットを搭載

Mali G2-Ultra NXは、第3世代のRay Tracing Unitを搭載し、Opacity Micromapsをハードウェアでサポートする。Opacity Micromapsは、植物、金網、髪、布地など、透明部分と不透明部分が細かく混在する形状のレイトレーシング処理を効率化する技術である。

従来は、レイとこうした形状が交差するたびに、透明か不透明かをシェーダーで評価する必要があった。Opacity Micromapsでは、三角形をさらに細かい領域へ分け、それぞれの透明状態を事前に分類する。明確に透明または不透明な領域をレイトレーシング用ハードウェアが直接処理し、判断できない領域に限ってシェーダーを呼び出すことで、演算負荷を減らせる。

Armによると、対応するシーンではレイトレーシングのワークロードを前世代比で最大70%削減できる。実際の改善幅は、透明形状の量、シーン構成、ゲームエンジン側の実装などに左右される。

■実行エンジンを7世代ぶりの規模で刷新

Mali G2-Ultra NXでは実行エンジンも再設計された。Armは、Mali GPUとして過去7世代で最大規模の命令セットアーキテクチャ更新としており、ワープ当たりに利用できるレジスタ数を前世代比で最大2倍に増やしたほか、動的なレジスタ割り当てを導入した。

レジスタはGPUの演算器が直接利用する高速な記憶領域である。複雑なシェーダープログラムが利用可能なレジスタを超えると、データをより低速なメモリへ退避させる処理が発生し、性能低下につながる。レジスタを増やし、必要に応じて柔軟に割り当てることで、レイトレーシング、高度な照明、ポストプロセスなどの処理を効率化できる。

Armの公表値では、Mali G2-Ultra NXは前世代のMali G1-Ultraと比べ、従来型ゲームの持続性能が最大14%、ピーク時のグラフィックスベンチマーク性能が最大24%向上したという。

■C2 CPUクラスターでオンデバイスAIを強化

CSS for Mobile 2のC2 CPUクラスターは、C2-Ultra、C2-Pro、2基のSME2を組み合わせる。SME2は、ニューラルネットワークで広く用いられる行列演算をCPU上で効率的に実行するための拡張機能である。

Armは、前世代のリファレンスプラットフォームと比べ、C2 CPUクラスターのシングルスレッド性能が最大15%向上し、アプリの起動速度も最大12%改善したとしている。音声処理、メモリー検索、推論などに使う小規模言語モデルでは、SME2を利用した処理が最大70%高速化し、対象となるAIモデルの実行性能は最大1.7倍になるという。

Armが想定するエージェント型AIでは、単一モデルの推論性能だけでなく、ユーザーの意図の把握、コンテキストの保持、複数モデルの実行、アプリやサービスの呼び出しを継続的に連携させる必要がある。CSS for Mobile 2は、CPU、GPU、システムIP、ソフトウェアを一つのプラットフォームとして最適化し、こうした処理を端末の電力・発熱条件内で実行しやすくする。

■性能と画質は搭載端末での検証が必要

Mali G2-Ultra NXについて示されている最大4倍のフレームレートまたは効率、最大70%のメモリトラフィック削減、14%のゲーム性能向上、24%のベンチマーク性能向上などは、Armが自社環境で測定した公表値である。

QualcommがAdreno Neural Fusionについて示す画質や省電力の改善も、同社による測定や従来技術との比較に基づく。両プラットフォームは設計、GPU構成、メモリ階層、対応ソフトウェアが異なるため、各社の数字をそのまま横並びにして優劣を判断することはできない。

今回の発表により、次世代モバイルGPUでは、ニューラル処理をGPUのグラフィックスパイプラインへ統合する動きが一段と明確になった。Armは各シェーダーコアへの緊密な統合を選び、Qualcommは専用のMatrix Coreとローカルメモリを組み合わせた。市販端末における画質、電力効率、入力遅延、発熱時の持続性能は、それぞれのSoCとゲームへの実装が明らかになった段階で評価されることになる。

元記事: Arm Answers Qualcomm: Mali G2-Ultra NX Puts Neural AI Inside Shader Cores

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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