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ESA・JAXAのベピコロンボ、水星到着フェーズ開始 11月21日に軌道投入
欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星探査計画「ベピコロンボ」が、2026年11月21日の水星周回軌道投入に向けた到着フェーズに入った。9月3日には、約8年間にわたって探査機を運んだ水星遷移モジュール(MTM)の分離に成功した。
ベピコロンボは、ESAの水星表面探査機「Mercury Planetary Orbiter」(MPO)と、JAXAの水星磁気圏探査機「みお」(Mio)で構成される。2機を異なる軌道で運用し、水星の表面や内部構造、磁場、磁気圏、太陽風との相互作用を同時に観測する計画だ。
■11月21日の軌道投入へ、到着フェーズに移行
ESAは9月3日午後10時52分ごろ(日本時間)、ベピコロンボのMTMがMPOとみおから正常に分離されたことを確認した。分離そのものは同日午後9時に実施されており、スペインのセブレロスとアルゼンチンのマラルグエにあるESAの深宇宙アンテナが信号を受信した。
分離時点でベピコロンボは地球から2億km以上離れていた。ESAによると、分離後のテレメトリでは各システムが正常に動作し、MPOの太陽電池パネルが探査機のバッテリーを充電していることが確認された。
MTMは、太陽電気推進システムと長さ15mの太陽電池翼2枚を備え、ベピコロンボの複雑な惑星間航行を担ってきた。太陽光でキセノンガスをプラズマ化し、4基のイオンスラスタから噴射することで、化学推進より小さい推力を長期間にわたって加えられる仕組みだった。
この太陽電気推進システムは6月15日に運用を終了した。MTM分離後はMPOの化学推進システムが軌道制御を引き継ぎ、11月21日の水星周回軌道投入に向けて飛行経路を調整する。分離直後の時点で、探査機から水星までの距離は300万km以上あった。
MTMは独自のアンテナや搭載コンピューターを持たず、分離後は運用不能となった。今後は太陽を回る安定した軌道に残る。
■水星への航行を難しくする太陽の重力
水星への探査機投入は、単に太陽へ近づくだけでは実現できない。探査機は太陽の重力によって加速されるため、水星付近で適切に速度と軌道を調整しなければ、そのまま水星を通過してしまう。
ベピコロンボは2018年10月20日の打ち上げ後、地球で1回、金星で2回、水星で6回の計9回の惑星フライバイを実施した。惑星の重力と太陽電気推進を組み合わせ、約99億kmに及ぶ飛行を経て水星へ接近した。
2024年にはMTMの太陽電池から利用できる電力が低下する問題が発生し、ESAは当初の飛行計画を見直した。軌道を再設計した結果、水星到着は当初予定されていた2025年12月から2026年11月へ変更された。
MTMの分離後、水星への到着は単一の作業ではなく、約6カ月にわたる一連の運用として進められる。ESAはMPOのスラスタを使って軌道を調整し、2機が結合した状態で11月21日に水星の極軌道へ投入する計画だ。
■遠距離通信を前提に自律的に動作
地球から2億km以上離れた探査機との通信には、片道で約11分半を要する。地上から送った指令が到着し、探査機からの応答が戻るまでには20分以上かかるため、重要な分離や軌道制御を地上からリアルタイムで操作することはできない。
各運用では、地上で事前に作成して探査機へ送ったコマンドシーケンスを搭載システムが自律的に実行する。地上管制チームは、一定時間後に届くドップラー信号やテレメトリを解析し、予定された動作が完了したかを確認する。
9月3日のMTM分離でも、ESAの欧州宇宙運用センターは想定される分離時刻を迎えた後、信号の到着を待った。まずドップラー信号の変化から分離を示す初期情報を得て、その後にMPOからのテレメトリを受信して成功を確認した。
11月21日の軌道投入も、こうした深宇宙探査特有の通信遅延を前提として実施される。ただし、水星到着フェーズ全体は複数段階の運用で構成されており、軌道投入後も2機の分離や軌道調整が続く。
■12月に「みお」を分離、2027年4月から科学観測
11月21日にMPOとみおが結合状態で水星周回軌道へ入った後、12月9日から10日にかけて、MPOがみおを最終的な楕円極軌道へ放出する予定だ。
12月16日には、巡航中にみおを太陽光と熱から保護してきた「水星磁気圏探査機用サンシールド・インターフェース構造」(MOSIF)をMPOが分離する。その後、MPOは自身のスラスタを使って高度を下げ、独自の科学観測軌道へ移る。
みおは高度約590kmから1万1640km、周期約9.3時間の楕円極軌道で運用される。MPOは2027年3月10日に高度約480kmから1500km、周期約2.3時間の極軌道へ到達する計画だ。日程は運用上の理由で変更される可能性がある。
両機は分離後、探査機本体と観測装置の試験や調整を進める。本格的な科学観測の開始は2027年4月6日に予定されている。
■2機の同時観測で水星磁気圏を立体的に調査
ベピコロンボの大きな特徴は、水星を2機の探査機で同時に観測する点にある。MPOは水星の表面、内部構造、組成、重力場などを主に調べ、みおは磁場、磁気圏、プラズマ、太陽風との相互作用を観測する。
NASAの水星探査機MESSENGERは2011年から2015年まで水星を周回し、地形や組成、磁場に関する重要なデータを収集した。一方、単独の探査機では、ある場所で観測された磁気圏の変化が、時間的変動によるものか、場所の違いによるものかを切り分けることが難しかった。
MPOとみおは異なる高度と周期の軌道を飛行するため、水星近傍と外側の磁気圏、あるいは磁気圏内部と太陽風の状態を同時に測定できる。複数地点の観測結果を組み合わせることで、水星固有の磁場と太陽風によって引き起こされる変動を区別し、磁気圏の構造や時間変化を詳しく調べられる。
MPOとみおにはそれぞれ磁力計が搭載される。MPOの粒子観測装置と、みおのプラズマ粒子観測装置を連携させることで、水星の表面、希薄な外気圏、磁気圏、太陽風の間で物質がどのように移動するかを調査する。
■計16の科学観測装置で水星の成り立ちを探る
MPOは11、みおは5の科学観測装置を搭載する。MPOはカメラや分光計、レーザー高度計、磁力計、電波科学実験などを用いて、水星の地形、鉱物組成、内部構造、重力場、磁場を調査する。
みおは磁力計、プラズマ粒子観測装置、プラズマ波動・電場観測装置、水星ナトリウム大気スペクトルイメージャ、ダストモニターを搭載し、水星の磁気圏と周辺の宇宙環境を調べる。
水星は半径に対して大きな金属核を持ち、小さな惑星でありながら固有磁場を備える。磁場は地球より大幅に弱く、南北で強さが異なることも分かっている。ベピコロンボは表面と内部、磁場、周辺環境を総合的に測定し、水星がどこで、どのように形成・進化したのかを探る。
水星表面には「ホロー」と呼ばれる浅く不規則なくぼみも存在する。MESSENGERの観測で詳しい形状が明らかになったが、その形成過程には未解明の点が残る。ベピコロンボによる高解像度観測や組成分析は、こうした地形と表面物質の関係を調べる手掛かりとなる。
MPOの電波科学実験「MORE」は、探査機の軌道と速度を精密に測定し、水星の重力場や内部構造を調査するほか、重力理論の検証にも利用される。太陽に近い水星を周回する軌道を精密に追跡することで、一般相対性理論に関わるパラメーターを検証する計画だ。
■新たに注目される水星の一時的な放射線帯
2026年7月に学術誌「Nature Astronomy」で発表された研究では、MESSENGERの観測データを再解析した結果、水星の周囲に高エネルギー電子による一時的な放射線帯が形成されることが示された。
研究によると、この電子放射線帯は太陽風の影響が比較的弱いときに維持されやすく、太陽風による強い擾乱を受けると不安定になる。水星が太陽から遠い軌道上の位置では観測される割合が高く、太陽に近い位置では低下していた。
MESSENGERでは、高エネルギー電子が観測装置に生じさせた影響を利用して放射線帯の存在を調べた。ベピコロンボは磁場やプラズマ粒子を測定する複数の装置を備えており、水星の放射線環境が太陽風に応じて形成・変化する仕組みを詳しく調査できると期待される。
■強い日射と熱に耐える探査機
太陽に最も近い惑星である水星では、探査機は地球軌道付近の最大約10倍に達する日射を受ける。さらに、太陽からの直接的な加熱だけでなく、高温になった水星表面から放射される赤外線にも対応しなければならない。
MPOは、高温環境での発電量と熱負荷を調整するため、太陽電池パネルに太陽光が斜めに当たるよう向きを制御する。放熱器や多層断熱材を備え、観測装置を水星側に配置するなど、機器を適切な温度に保つ設計が採用されている。
みおは巡航中、MOSIFの内部で太陽光と熱から保護されている。水星周回軌道で分離された後は、八角形の機体を毎分15回転させるスピン安定方式で姿勢を保ち、各面が太陽光にさらされる時間を分散する。
■欧州と日本が共同で挑む水星探査
ベピコロンボの名称は、NASAの探査機Mariner 10による水星探査に重力アシスト軌道を応用することを提案したイタリアの数学者・技術者、ジュゼッペ・「ベピ」・コロンボに由来する。
ベピコロンボはESAが主導し、JAXAと共同で実施する水星探査ミッションである。ESAはMPOやMTM、打ち上げ、惑星間航行、水星周回軌道への投入を担当し、JAXAは磁気圏探査機みおを担当している。
11月21日の軌道投入後も、2機の分離、MOSIFの放出、MPOの軌道降下、各観測装置の試験が続く。計画通りに進めば、2027年4月から2機による本格観測が始まり、水星の表面から内部、磁気圏、太陽風との相互作用までを同時に調べる初の探査計画となる。
元記事: BepiColombo Targets Mercury Orbit: Nov. 21 Burn Has One Attempt and No Real-Time Fix
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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