Qualcomm、端末上でAI処理する「Dragonwing Q-2390/IQ-2390」を発表 商用・産業IoT向け

2026年9月7日 00:18

印刷

記事提供元:Tech Times

2026年9月4日、IFA Berlin 2026会場に掲示されたQualcommの看板(TechTimes)

2026年9月4日、IFA Berlin 2026会場に掲示されたQualcommの看板(TechTimes)[写真拡大]

Qualcommは9月1日、商用・コンシューマーIoT向けの「Dragonwing Q-2390」と、産業機器向けの「Dragonwing IQ-2390」を発表した。AI推論や画像処理、アプリケーション処理、リアルタイム制御を一つのプラットフォームに集約し、コストや基板面積に厳しい制約がある機器への導入を想定する。

両製品は早期アクセスプログラムを通じて一部顧客への提供が始まっている。QualcommはIFA Berlin 2026で搭載モジュールを展示しており、評価キットは2027年初頭に提供する予定だ。

■商用・産業IoTにオンデバイスAIを拡大

Dragonwing Q-2390は、POS端末やキオスク、入退室管理機器、スマート家電、家庭用ロボット、フィットネス機器、企業向け端末などを対象とする。Dragonwing IQ-2390は、新設した産業向けIQ2シリーズの第1弾で、産業用ヒューマンマシンインターフェース(HMI)、マシンビジョン、制御装置、ゲートウェイ、ビル管理、エネルギー関連機器などを主な用途とする。

両製品が目指すのは、カメラやセンサーから取得したデータを端末側で処理するオンデバイスAIの適用範囲を広げることだ。Qualcommは、AIや画像処理、制御、通信に必要な機能を統合することで、外付け部品、基板面積、消費電力、システム統合の負担を抑えられるとしている。

AI処理性能はいずれも最大1.1 TOPSである。TOPSは1秒間に実行できる演算回数を兆単位で示す指標だが、実際の処理性能はAIモデルの構造、演算精度、メモリ帯域、ソフトウェアの最適化などによって変わる。両製品は大規模なAIモデルを対象とする上位製品ではなく、比較的小規模な画像認識やセンサーデータ解析などを機器上で扱う用途に位置付けられる。

■Arm CPUとRISC-Vマイコンを組み合わせる

Q-2390とIQ-2390は、Arm Cortex-A78を1基、Cortex-A55を3基搭載したクアッドコアCPUを採用する。製品構成に応じて最大1.5GHzまたは1.9GHzで動作し、グラフィックス処理にはAdreno 704 GPU、AI推論にはHexagon NPUを使用する。

一部の製品構成では、最大600MHzで動作するSiFive E61 RISC-VマイコンとHexagon V66オーディオDSPも利用できる。アプリケーション処理を担うArm CPUとは別にRISC-Vマイコンを設けることで、機器制御やセンサー処理など、応答時間を管理する必要があるタスクを分担できる。

対応OSにはAndroid、YoctoベースのLinux、Ubuntu、Zephyr RTOSが含まれる。LinuxやAndroidでユーザーインターフェース、通信、AI処理などを実行し、Zephyrを利用するRISC-Vマイコンでリアルタイム処理を受け持たせる構成が可能だ。

こうした異種プロセッサーを一つのプラットフォームに組み合わせる構成は、アプリケーション処理と時間制約のある制御処理を役割ごとに分離しながら、システム全体の部品数を抑えるためのものだ。必要な機能や製品構成によっては外部部品も必要になるため、実際の削減効果は最終製品の設計によって異なる。

■画像処理とディスプレーを統合

メモリーはデュアルチャネルの16ビットLPDDR4x、ストレージはeMMC 5.1とSD 3.0に対応する。ディスプレー出力は4レーンMIPI DSIを備え、最大1080p、60Hzの表示を扱える。

カメラ入力は最大2系統の4レーンMIPI CSIに対応する。ゼロシャッターラグ構成では、30fpsで最大2500万画素の単眼カメラ、または最大1300万画素のデュアルカメラをサポートする。製品検査、設備監視、利用者認識、操作パネルなど、カメラ入力と端末上の画像処理を組み合わせる機器への搭載を想定している。

パッケージ寸法はQ-2390が12×12×0.92mmで、ボールピッチは0.4mm。IQ-2390は21.3×18.4×1.82mmで、ボールピッチは0.8mmとなる。Qualcommの製品資料では、両製品の供給期間を2036年までとしている。

■Q-2390は商用・コンシューマー機器を対象

Dragonwing Q-2390は、小型化、消費電力、部品コストに制約がある商用・コンシューマー機器向けの製品である。アプリケーション処理、グラフィックス、画像入力、オンデバイスAI、リアルタイム処理、接続機能を一つのプラットフォームにまとめる。

製品構成には「Q-2390S」と「Q-2390M」がある。Q-2390Sは別途接続するソリューションを通じてWi-FiとBluetoothに対応し、Q-2390Mは4G LTE Cat 4のデータ通信機能を内蔵する。遠隔地に設置する端末や、固定回線を利用しにくい機器では、LTE内蔵モデルによって外付けのセルラー通信モジュールを減らせる可能性がある。

想定用途としては、店舗のPOS端末やセルフサービス端末、入退室管理パネル、スマート家電、農業用機器、家庭用ロボット、フィットネス機器などが挙げられている。実際に利用できるAI機能や通信方式は、採用するSKU、メモリー容量、周辺部品、搭載ソフトウェアによって決まる。

■IQ-2390はTSN対応Ethernetを搭載

Dragonwing IQ-2390は、産業用途向けに設計したIQ2シリーズ初のプロセッサーである。オンデバイスAI、画像処理、リアルタイム制御に加え、Time-Sensitive Networking(TSN)に対応した1GbEを2系統備える。

TSNは、Ethernet上で時刻同期や通信スケジュール、遅延管理などを行うためのIEEE 802.1規格群である。必要な規格やネットワーク構成を組み合わせることで、一定の時間要件を持つ産業用通信をEthernet上で扱いやすくする。IQ-2390では、産業用ネットワークとアプリケーション処理、画像処理、AI推論、リアルタイム制御を同じプラットフォームに統合できる。

動作温度範囲はマイナス30℃からプラス115℃で、産業用パッケージやECCメモリー保護機能も備える。工場設備、産業用ゲートウェイ、ビル制御、エネルギー管理機器など、長期運用と耐環境性が求められる用途を対象としている。

Q-2390についても、AAバリアントはマイナス30℃からプラス95℃、ABバリアントはマイナス30℃からプラス115℃の動作温度範囲が示されている。搭載機器の設計では、製品名だけでなく、選択するバリアントの温度仕様や搭載機能を確認する必要がある。

■SECOなどが搭載製品を開発

Qualcommは、SECO、Fibocom、Engicam、Eight Developmentなどが早期アクセスプログラムに参加していることを明らかにしている。IFA Berlin 2026では、これらの企業によるQ-2390またはIQ-2390ベースのシステムオンモジュールなどが展示された。

SECOはIQ-2390を搭載する5インチ産業用HMI「Compact Vision 5 Dragonwing IQ-2390」と、シングルボードコンピューター「SBC-Dragonwing-IQ-2390」を発表した。いずれも同社のClea OSと組み合わせ、産業用機器のアプリケーション開発、遠隔管理、ソフトウェア更新などを支援する構成だ。

Compact Vision 5は、画面と操作インターフェースを一体化した産業用HMIとして提供する。一方、SBC-Dragonwing-IQ-2390は、独自の筐体や周辺機器を組み合わせるカスタム組み込みシステム向けの基板である。SECOは両製品について早期アクセスの登録を受け付けている。

■評価の焦点は統合効果と導入コスト

Q-2390とIQ-2390は、AI演算性能そのものを競う上位プロセッサーではなく、これまでAI専用アクセラレーターを搭載しにくかった商用端末や小型産業機器への導入を狙う。1.1 TOPSのNPUに加え、CPU、GPU、カメラインターフェース、リアルタイム処理機能などを統合した点が製品の中心となる。

IQ-2390では、TSN対応Ethernet、広い動作温度範囲、ECCメモリー保護、長期供給を組み合わせ、産業機器で求められる通信、制御、信頼性への対応を強めた。Q-2390では、小型パッケージとLTE内蔵モデルを用意し、店舗端末やスマート機器などへの組み込みやすさを重視している。

現段階では早期アクセス中であり、評価キットの提供は2027年初頭が予定されている。処理性能、消費電力、熱設計、部品コスト、ソフトウェア開発の負担が既存の構成に比べてどの程度改善するかは、評価キットや量産向けモジュールを使った検証が判断材料になる。

元記事: Qualcomm Dragonwing Q-2390 and IQ-2390 Bring Local AI to Industrial IoT at IFA

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード