Google DeepMind、気象AI「WeatherNext 3」を公開 短時間予報を衛星観測で更新

(Deepmind.google)[写真拡大]
風力・太陽光発電を電力系統に組み込む際、数時間先の風速や日射量は、発電計画や需給調整、蓄電設備の運用を左右する。Google DeepMindとGoogle Researchは2026年9月3日、静止気象衛星の観測データを取り込み、全球予報を毎時生成する気象AIモデル「WeatherNext 3」を発表した。
WeatherNext 3はGoogle Search、Gemini、Google Mapsなどの気象情報に導入され、企業や研究者向けにはGoogle Cloudの各種サービスを通じて予報データが提供される。風力・太陽光発電に関係する風速、雲量、太陽放射なども予測対象に含む。
■衛星観測を取り込み毎時予報
WeatherNext 3は、全球を対象とする確率的な中期気象予報モデルである。Googleは同モデルを同社で最も高度かつ高精度な全球気象AIモデルと位置付けており、気象モデルを継続的に比較するBrightbandの「Operational WeatherBench」でも、2026年8月の評価で有力モデルを上回る成績を示した。
同モデルは同一の初期状態から64通りの気象推移を計算するアンサンブル予報を採用する。予測を一つに絞るのではなく、複数のシナリオから気象変化の幅や不確実性を表現する仕組みである。
WeatherNext 3は、静止気象衛星による低遅延の観測画像とECMWFの数値予報解析値を組み合わせ、1日に24回、毎時初期化される。従来の全球予報で一般的な6時間ごとの更新を待たず、直近の衛星観測を予報に反映できることが特徴だ。
ただし、毎時生成される予報の期間は一律ではない。協定世界時の0時、6時、12時、18時に始まる主要サイクルは15日先までを予測し、その間に生成される毎時予報は48時間先までを対象とする。
■地上観測に対応した5km予測
WeatherNext 3は、予測する変数に応じて異なる空間解像度を採用する。観測地点向けに学習した地上2mの気温と露点は最大0.05度、約5km相当の解像度で出力する。格子状の地上変数は0.1度、約10km、上空の気圧面に関する変数は0.25度、約25kmの解像度となる。
約10km格子の地上変数には、地上10mと100mの風、気圧、海面水温、雲量、太陽放射、1時間降水量などが含まれる。Googleが「従来の最大5倍」と説明する解像度向上は、前世代の約25km格子に対し、観測地点向けの気温と露点を約5km相当で表現できることを指す。
観測地点向けの予測では、METARの空港気象観測、地域のMesonet観測網、ICOADSに収録された船舶・ブイ観測などを学習に利用している。標高をはじめとする地理的特徴も条件に加え、任意の地点における地上2mの気温と露点を予測する。地形や海陸分布によって気温が変化しやすい海岸部、谷、山地などを、従来より細かく表現する狙いがある。
■数値予報と生の観測データを組み合わせる
従来の気象AIモデルの多くは、物理法則に基づく数値気象予報システムが生成した解析データを初期値や学習データとして利用してきた。この方式では、観測データの収集やデータ同化、解析値の作成を終えるまで、最新の気象状態をAIモデルへ反映できない。
WeatherNext 3は、ECMWFの解析値に加えて、低遅延で更新される11チャンネルの静止気象衛星モザイクを直接入力する。衛星観測は約0.1度の解像度で構成され、約1時間の遅延で利用できる。Googleによれば、これにより予報の基準となる情報の遅延を従来のおよそ7時間から3~4時間へ短縮できる。
中核にはFunctional Generative Network(FGN)を用いたメッシュトランスフォーマーを採用した。技術論文によると、前世代からモデルを拡大し、潜在表現のサイズを768から1024へ、メッシュの深さを24層から32層へ増やしている。
単一のモデルから、格子状の大気場、熱帯低気圧の進路、個別地点の気温・露点という性質の異なる予測を生成する構成である。観測データを予測対象として直接学習することで、従来はデータ同化、気象予報、地点別の後処理として分かれていた処理の一部を、一つのモデル内で扱う。
■風力・太陽光発電に関係する変数を出力
WeatherNext 3は、再生可能エネルギーの運用に関係する気象変数を予測対象に含む。風力発電向けには、一般的な大型風力タービンのハブ付近に相当する地上100mの風速を出力する。風速は風力発電量を見積もるための主要な入力情報の一つとなる。
太陽光発電向けには、雲量や地表に達する太陽放射を約10km格子で予測する。これらの情報と毎時更新を組み合わせることで、発電事業者や系統運用者は、発電量の見通し、蓄電設備の運用、他の電源による需給調整を検討しやすくなる。
国際エネルギー機関(IEA)は2024年の報告書で、各国が必要な系統統合策を適時に実施できなければ、2030年に見込まれる世界の太陽光・風力発電量の最大15%、約2000TWhが失われる可能性があると試算した。この約2000TWhは、2023年に中国と米国で発電された太陽光・風力電力の合計に相当する。
IEAが挙げる対策は気象予報だけではなく、送電網の増強、調整可能な電源、蓄電設備、需要応答、制度整備など多岐にわたる。そのなかで、発電量予測を運用判断へ反映することは、変動する太陽光・風力を系統に取り込むための要素の一つとなる。
■降水と地上気温の精度向上を報告
WeatherNext 3は、NASAの全球降水観測計画に基づく衛星降水データ「IMERG」や、衛星レーダー観測から構築した実験的な降水再解析データなどを学習に利用する。Googleの評価では、IMERGを観測基準とした場合、数値予報モデルと比べて降水確率の評価指標で最大50%の誤差低減を記録した。
学習に使用していない観測地点を対象とする評価では、短い予報時間における地上2m気温の確率予報精度が、WeatherNext 2比で最大30%、ECMWFのアンサンブル予報システム比で最大40%向上したとGoogleは報告している。
Google SearchやGoogle Mapsなどで1日以上先の天気を確認する用途では、Googleは降水予報の精度が従来比で最大50%向上すると説明する。こうした数値は、使用する観測データ、指標、予報時間、地域によって変わるため、特定条件におけるGoogleの評価結果として見る必要がある。
■外部評価と技術上の制約
BrightbandのOperational WeatherBenchは、AIモデルと物理ベースの気象モデルを実際の予報条件に近い形で継続比較している。同社によると、WeatherNext 3は2026年8月、地上2m気温について直近30日中26日で比較対象中の誤差が最も小さかった。
この評価は実運用に近い予報を継続比較する材料となる一方、WeatherNext 3の技術論文は2026年9月3日に公開された査読前論文である。モデル全体の性能については、今後、異なる観測データや地域、現象を対象とした第三者による検証の蓄積が重要になる。
技術論文では、個々のアンサンブルメンバーに、モデル内部のメッシュ構造を反映したハニカム状の模様が現れる場合があることを報告している。一部の出力には、6時間ごとの数値予報解析値の境界をまたぐ際の時間的な不連続も確認されている。
観測地点向けの気温出力では、アンサンブルを構成する個々のメンバーに全球的な高温または低温方向の偏りが生じる場合がある。一方、複数メンバーをまとめた分位点などの統計値では、南極を除いて、この影響はおおむね抑えられるとしている。
WeatherNextは自動生成される実験的な予報システムであり、公式な気象警報や防災情報を提供するものではない。悪天候や災害への対応では、各国・地域の気象機関や防災当局が発表する情報を確認する必要がある。
■Google製品とクラウドで提供
WeatherNext 3による気象情報は、2026年9月3日からGoogle Search、Geminiアプリ、Google Maps、Google Maps PlatformのWeather APIに導入された。研究者や開発者はGoogle DeepMindの「Weather Lab」で予報を可視化できる。
予報データはGoogle Cloud Storage、BigQuery、Earth Engineでも提供される。Google Cloud Storageでは64メンバーのアンサンブルデータをZarr形式で扱えるほか、地上変数の要約統計も用意される。利用にはGoogleアカウントによるアクセス申請が必要となる。
企業向けには、専用の計算資源を使ってアンサンブルの規模や予報期間を調整するカスタム推論も提供される。WeatherNext 3は、高頻度の衛星観測、確率予報、地点別予測、再生可能エネルギーに関係する変数を一つのモデルへ統合し、全球気象AIを実際の運用判断へ近づける取り組みとなっている。
元記事: WeatherNext 3: Google DeepMind Targets Renewable Grid Gap With Hourly Satellite Forecasts
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
