Adobe、新CEOにチャクラヴァーシー Creative Cloudとエージェント型AIの次戦略に注目

2026年9月5日 21:11

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記事提供元:Tech Times

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Adobeは2026年12月1日付で、アニール・チャクラヴァーシーを社長兼最高経営責任者(CEO)に起用する。Informaticaでクラウドとサブスクリプション型サービスへの転換を率いた経験を持ち、Adobeでは企業向け顧客体験事業と世界規模の事業運営を統括してきた。生成AIがクリエイティブソフト市場の競争構造を変えるなか、AIを組み込んだ製品の成長と既存のサブスクリプション事業をどう両立させるかが焦点となる。

■12月にCEO就任、ナラヤンはエグゼクティブチェアへ

Adobeの取締役会は9月3日、チャクラヴァーシーを次期社長兼CEOに選任したと発表した。12月1日付で取締役にも就任する。取締役会は社内外の候補者を対象とした選定を経て、全会一致で同氏を選んだとしている。

18年以上にわたってAdobeを率いてきたシャンタヌ・ナラヤンは、エグゼクティブチェアに移行する。移行後もチャクラヴァーシーと連携し、経営の引き継ぎとAdobeの事業変革を支援する。

チャクラヴァーシーは就任発表に際し、クリエイティビティー、生産性、顧客体験における「エージェント型ソフトウェア」の次の時代に向け、成長とAdobeのリーダーシップを推進する考えを示した。

エージェント型ソフトウェアとは、利用者の指示に応じて単一の生成処理を行うだけでなく、目標に沿って複数段階の作業を計画・実行するAIを組み込んだソフトウェアを指す。Adobeは企業向けのマーケティング業務を中心に、こうしたAIエージェントを製品群へ導入している。

■InformaticaとAdobeで事業変革を経験

チャクラヴァーシーは2020年1月、デジタルエクスペリエンス事業のエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーとしてAdobeに入社した。同年9月には世界規模のフィールドオペレーションの責任者となり、2021年12月にデジタルエクスペリエンス事業の社長へ昇格した。

現在は、Adobeのカスタマーエクスペリエンスオーケストレーション事業と世界規模のフィールドオペレーションを率いている。企業向け営業、プロフェッショナルサービス、カスタマーサクセスに加え、顧客体験関連製品の戦略、エンジニアリング、製品管理、製品マーケティングを統括してきた。

Adobe入社前は、企業向けクラウドデータ管理を手掛けるInformaticaで2015年から2020年までCEOを務めた。2013年にエグゼクティブバイスプレジデント兼最高製品責任者として入社し、製品開発、製品管理、製品マーケティングを担当した。

チャクラヴァーシーの在任中、Informaticaは従来型のソフトウェアライセンスを中心とする事業から、クラウドとサブスクリプション型サービスを重視する事業構造への転換を進めた。Adobeの取締役会も、同氏を変革型の経営者と位置付け、製品開発と事業拡大の実績を評価している。

それ以前にはSymantecで情報セキュリティ、エンドポイント保護、暗号化などの複数の製品部門を率い、VeriSignでは企業向けセキュリティサービスの製品管理を担当した。McKinsey & Companyでは、シリコンバレーのビジネステクノロジー部門で勤務した。

インド工科大学バラナシ校でコンピューターサイエンス・エンジニアリングの学士号を取得し、マサチューセッツ工科大学(MIT)で理学修士号と博士号を取得している。

■ワドワーニの退社で主要事業の体制整備も課題に

CEO人事と同じ日に、Adobeのクリエイティビティー&プロダクティビティー事業を率いるデイビッド・ワドワーニが、担当業務の引き継ぎ後に退社する意向を明らかにした。約5年間にわたって同事業を率いてきたワドワーニは、起業家としての活動に戻るとしている。

ワドワーニが担当する事業には、Photoshop、Illustrator、Lightroom、Adobe Express、Acrobatなど、Adobeの主要なクリエイティブ・生産性製品が含まれる。同氏はCEOの有力な社内候補とも報じられていた。

Adobeでは最高財務責任者(CFO)の交代も進行している。ダン・ダーンが6月に退任し、現在はスティーブ・デイが暫定CFOを務めている。このためチャクラヴァーシーは、CEO就任に向けた引き継ぎと並行して、主要事業と財務部門の経営体制を整える必要がある。

■株価は人事発表後に下落

Adobe株は9月3日のCEO人事発表後の時間外取引で約2%下落した。ワドワーニの退社も伝わった4日の通常取引では、下落幅がさらに拡大した。

市場では、生成AIによって画像制作やデザインの参入障壁が下がり、Creative Cloudを中心とするAdobeのサブスクリプション事業に競争圧力が加わるとの懸念が続いている。一方、Adobeが既存製品へのAI機能の統合と有料化を進め、保有する顧客基盤を新たな収益につなげられるとの見方もある。

Adobe株は2024年に約25%、2025年に約21%下落し、2026年もCEO人事の発表前までに約18%下落していた。経営トップが決まったことで後継者を巡る不透明感は後退したが、新体制がAI時代の製品戦略と成長見通しをどのように示すかが次の焦点となる。

Adobeは9月10日に2026年度第3四半期決算を発表する予定である。AI関連製品の成長、顧客獲得を重視するフリーミアム戦略、Creative Cloudを含むサブスクリプション事業の動向が注目される。

■AI関連ARRは5億ドルを突破

Adobeの2026年度第2四半期売上高は、前年同期比13%増の66億2000万ドルとなり、四半期として過去最高を記録した。サブスクリプション売上高は63億9000万ドルで、全社の年間経常収益(ARR)は四半期末時点で271億ドルだった。

同社が「AIファースト」と分類する製品・サービスのARRは5億ドルを超え、前年同期の3倍以上となった。この指標にはFireflyだけでなく、生成AIやエージェント型AIを中心に設計された複数の製品・サービスが含まれるため、Firefly単体の売上高を示すものではない。

Adobeは、AIが利用者の行動とソフトウェアへの期待を急速に変えているとして、クリエイター、企業のマーケティング担当者、ビジネス利用者、一般消費者のそれぞれに向けた製品戦略を進化させる方針を示している。

■Fireflyは学習データと法人向け補償で差別化

Adobeの生成AI基盤Fireflyの自社モデルは、利用許諾を得たAdobe Stockのコンテンツ、オープンライセンスのコンテンツ、著作権の保護期間が満了したパブリックドメインのコンテンツなどを学習に使用する方針で開発されている。

Adobeは対象となる法人向け契約について、Fireflyの一部機能から生成・書き出された出力に知的財産権侵害の申し立てが生じた場合の契約上の補償を提供している。補償はすべての利用者や生成機能へ一律に適用されるものではなく、対象となる契約、機能、利用方法などの条件が定められている。

FireflyではAdobe独自のモデルに加え、外部企業が提供するモデルも利用できるようになっている。学習データに関するAdobeの方針や同社の知的財産権補償は、主にAdobeが開発した対象モデルと対象機能に関するものであり、利用時には選択したモデルと契約条件を確認する必要がある。

こうした学習データと契約面の設計は、作成したコンテンツを広告や製品素材として利用する企業にとって、生成AIを選ぶ際の判断材料となる。Adobeは、画像生成機能だけでなく、PhotoshopやIllustratorなどの制作工程全体へFireflyを組み込み、既存のクリエイティブ作業と生成AIを接続しようとしている。

■企業向けではAIエージェントを業務フローへ

チャクラヴァーシーが率いてきた企業向け事業では、Adobe Experience PlatformやGenStudioなどを基盤に、制作、顧客データ、キャンペーン運用を連携させる取り組みが進められている。

Adobeが発表したCX Enterprise Coworkerは、企業の顧客体験に関する状況を把握し、目標に沿って複数の作業を調整するAIエージェントとして位置付けられている。個別のコンテンツを生成するだけでなく、データの分析、コンテンツ制作、顧客への配信といった複数の工程をつなぐ点が、エージェント型ソフトウェアの基本的な構造となる。

チャクラヴァーシーのCEO就任は、企業向け事業で培ったAI、データ、コンテンツ、顧客接点を統合する考え方を、Adobe全体の成長戦略へ反映する人事とみることができる。ただし、Creative Cloudの個人利用者向け製品にどのような機能や料金体系を導入するかについて、Adobeは今回の人事発表で具体的な計画を示していない。

■FigmaやCanvaとの競争が続く

Adobeは生成AI企業に加え、FigmaやCanvaなど、ブラウザーを中心に展開するデザインプラットフォームとの競争にも直面している。

AdobeとFigmaは2023年12月、約200億ドル規模の買収に関する合併契約を双方の合意で終了した。欧州委員会と英国競争・市場庁から必要な承認を得る明確な道筋がないと両社が判断したためで、規制当局が最終的に買収を禁止したものではない。

独立を維持したFigmaは2026年第1四半期に、前年同期比46%増となる3億3340万ドルの売上高を計上した。同社はFigma Make、MCP、Figma WeaveなどのAI関連製品の利用拡大が、顧客企業における契約席数の増加を支えたとしている。

Canvaは2025年末時点で年間経常収益が40億ドルに達したと説明している。同社は画像生成AIを手掛けるLeonardo.Aiや、クリエイティブソフト群を展開するAffinityを傘下に収め、AI機能とプロ向け制作機能の拡充を進めている。

AdobeはPhotoshop、Illustrator、Acrobat、Adobe ExpressなどへAI機能を組み込みながら、ウェブやモバイルで無料利用者を増やし、有料サービスへつなげるフリーミアム戦略を展開している。短期的なARRの上積みだけでなく利用者の拡大を優先する方針であり、無料利用者を継続的な有料契約へ転換できるかが中期的な課題となる。

■サブスクリプションを巡る米政府との和解

チャクラヴァーシーは、米国におけるサブスクリプション契約を巡る問題への対応も引き継ぐ。

米司法省は2026年3月、Adobeと同社幹部2人に対する訴訟を解決するため、裁判所に和解命令案を提出した。政府は、Adobeが早期解約手数料などの重要な条件を分かりにくく表示し、解約手続きに不要な段階や遅延を設けたことが、オンライン消費者信頼回復法に違反したと主張していた。

和解案では、Adobeが7500万ドルの民事制裁金を支払い、対象となる顧客へ総額7500万ドル相当の無償サービスを提供する。早期解約手数料とその計算方法を契約前に明確に表示し、簡単に解約できる手段を設けることなども求めている。和解の成立には裁判所の承認が必要である。

Adobeは政府の主張に同意せず、不正行為を否定する一方、問題を解決するため和解に合意したと説明している。対象顧客には、必要な裁判所提出書類が受理された後、Adobeから連絡する方針である。

■Content Credentialsで制作履歴を示す

Adobeは生成AIの開発と並行して、デジタルコンテンツの作成・編集履歴を示すContent Credentialsの普及にも取り組んでいる。

Adobeが2019年に設立したContent Authenticity Initiative(CAI)は、メディア、テクノロジー、学術機関、市民社会などの5000を超える参加組織・メンバーで構成される。CAIは、コンテンツの来歴と透明性を広めるための教育活動やオープンソースツールの提供を進めている。

Content Credentialsの技術標準を策定しているのは、Adobeなどが設立に関わったCoalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA)である。作成者や作成日時、使用した機器やソフトウェア、加えられた編集などの情報をコンテンツへ関連付け、検証可能な形で提示する仕組みで、「デジタルコンテンツの栄養成分表示」に例えられる。

生成物の出所や編集履歴への関心が高まるなか、AdobeにとってContent Credentialsは、生成機能そのものだけでなく、制作から公開までの信頼性を製品価値として提供する取り組みとなっている。

■ナラヤンが築いたサブスクリプション事業の次へ

ナラヤンは2007年にCEOへ就任し、Adobeを永続ライセンス販売中心のソフトウェア企業から、サブスクリプションを基盤とする事業へ転換させた。2012年にCreative Cloudを本格展開し、主要なクリエイティブソフトを継続課金型のサービスとして提供する体制を確立した。

Adobeの売上高は、ナラヤンのCEO就任当時の年間約30億ドルから、2026年度第2四半期には四半期だけで66億2000万ドルへ拡大した。一方、生成AIによる制作手段の多様化を受け、株式市場では既存のサブスクリプション事業の成長持続性に慎重な見方が広がっている。

チャクラヴァーシーに求められるのは、Adobeが築いたクリエイティブ製品と顧客基盤を維持しながら、生成AIとエージェント型ソフトウェアを新たな収益へ結び付けることである。InformaticaとAdobeの企業向け事業で経験してきた事業変革を、Creative Cloudを含むAdobe全体でどのように進めるかが、新体制を評価する中心的なポイントとなる。

元記事: Adobe Names Chakravarthy CEO: Agentic Bet Puts Informatica Playbook at Photoshop Scale

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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