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LGディスプレー、FMM不要のOLED技術「FLiPP」公開 サムスンは折り目周辺の輝度を改善

(Lgdisplay.com)[写真拡大]
韓国のディスプレー大手、LGディスプレーとサムスンディスプレーが、韓国・釜山のBEXCOで開催された「IMID 2026」で次世代OLED技術を披露した。LGディスプレーはファインメタルマスクを使わずに画素を形成する「FLiPP」を、サムスンディスプレーはフォルダブルOLEDの折り目周辺における輝度低下を抑える7.6型「Wide View Display」を初公開した。
両技術はいずれも、既存のOLEDが抱える製造上または光学上の課題に、新たな材料やプロセスから取り組むものだ。現時点では技術展示であり、具体的な製品への採用時期は公表されていない。
■FMMを使わず画素を形成する「FLiPP」
LGディスプレーの「FLiPP」は、「FMM-Less innovative Pixel Patterning」の略称で、従来のファインメタルマスク(FMM)を使わずに赤、緑、青の画素を形成するOLEDパターニング技術である。
FMMは微細な穴を設けた金属製のマスクで、有機材料を基板上の決められた位置へ蒸着するために使われる。画面サイズや解像度が変わると、それに対応した高精度のマスクが必要になるため、コストや製造準備の負担につながる。
また、マスクが大型化すると自重によって中央部がたわみ、基板との位置合わせに誤差が生じることがある。これが画素間の混色などを招く可能性があり、大型基板で微細なRGB画素を形成する際の課題となってきた。
FLiPPでは、基板全体に赤、緑、青の画素材料を順番に塗布して所定の位置に固定し、フォトリソグラフィを用いて不要な部分を紫外線で除去する。金属マスクを介して材料を蒸着する代わりに、塗布と微細加工を組み合わせて画素パターンを作る方式だ。
■第8.5世代マザーガラスを分割せずに処理
LGディスプレーは、既存の大型タンデムWOLED生産設備と技術を活用し、第8.5世代のマザーガラスを分割せず、1枚の状態でFLiPPによる画素形成を行ったとしている。
同社が示した第8世代級の基板サイズは2,200×2,500mmである。従来のFMM方式では、使用できるマスクの大きさに制約があるため、大型のマザーガラスを分割して処理する場合がある。
LGディスプレーによると、同じ大きさのノートPC向けOLEDパネルを製造する場合、FLiPPは基板を分割するFMM方式や他のFMMレス方式と比べ、マザーガラスの利用効率を最大64%高められるという。この数値は特定のパネルサイズと製造条件に基づく同社の比較値である。
■開口率の向上を輝度、寿命、消費電力に活用
FLiPPでは、画面全体のうち実際に発光する画素領域の割合である開口率を、同一条件のFMM方式と比べて約55%高められるとLGディスプレーは説明している。
開口率が高まると、より広い面積を発光に利用できる。同社発表では、この効果を利用して、輝度を1.6倍に高める、寿命を2.4倍に延ばす、または消費電力を13%削減するといった設計が可能になるとしている。
これらは独立した製品仕様ではなく、同じ開口率向上を用途に応じて活用した場合の性能比較値である。高輝度を重視する製品、長寿命が求められる製品、電力消費を抑えたいモバイル機器など、用途ごとに異なる設計へ展開できる点がFLiPPの狙いとなる。
LGディスプレーのチェ・ヨンソク最高技術責任者は、独自のWOLED技術とノウハウを結集し、「夢の技術」と呼ばれてきた次世代OLEDパターニング技術を実現したと述べた。
■大型OLEDへの応用可能性
金属マスクの大きさに左右されにくい画素形成プロセスは、タブレットやノートPC、モニターから大型ディスプレーまで、幅広いパネルを効率的に製造するための選択肢になり得る。
スマートフォン向けOLEDでは、赤、緑、青の有機材料を個別に発光させる方式が広く使われている。一方、大型OLEDテレビ用パネルでは、白色系のOLED発光層とカラーフィルターを組み合わせたWOLED方式が採用されてきた。
FLiPPのようなFMMレス技術は、大型基板上でRGB画素を高精度に形成するという課題への新たなアプローチになる。将来の量産製品やテレビ向けパネルへの具体的な展開時期、製品仕様、製造コストは公表されておらず、今後は量産工程における歩留まりや安定性を含めた開発が焦点となる。
■サムスンはフォルダブルOLEDの見え方を改善
サムスンディスプレーが初公開した7.6型「Wide View Display」は、フォルダブルOLEDの曲面部分で生じる輝度低下を抑える広視野角技術を採用している。
同社によると、現在のフォルダブルディスプレーでは、画面を正面から見た際、中央の折り目を挟んだ曲面部分の明るさが、平らな正面部分の約40%に見える場合がある。画面が曲がることで、視角に応じた光の見え方が変化するためだ。
Wide View Displayでは、有機発光層の材料構成と構造を全面的に設計し直した。サムスンディスプレーは、これによって正面から見た際の曲面部分における輝度低下を抑え、より明るく均一な画質を実現したと説明している。
広視野角化の考え方は、中央で折り畳む端末だけでなく、画面を引き出すスライダブルディスプレーや、巻き取れるローラブルディスプレーなど、曲面を伴うフォームファクターにも応用できるという。Wide View Displayを採用する具体的な製品や発売時期は明らかにされていない。
■20型ストレッチャブルディスプレーも公開
サムスンディスプレーは、同社が世界最大としている20型の「Wide Stretchable Display」も公開した。伸縮可能なディスプレーパネル2枚をタイル状に接続し、1つの画面として動作させる技術を採用している。
超精密なパネル設計とモジュールのラミネーション技術により、2枚のパネルの境界を目立ちにくくした。従来展示していたストレッチャブルディスプレーと比べ、画面サイズは2倍以上になったという。
用途として、曲面を取り入れた車載デジタルコックピット、ヒューマノイドロボット、デジタルサイネージなどを想定している。このほか、視線追跡機能を備えたヒューマノイド向けディスプレー、ネックレス型の「AI OLED Pendant」、車載用ディスプレー、4K解像度と360Hzのリフレッシュレートに対応する31.5型QD-OLEDなども展示した。
■AI時代のディスプレーに3つの方向性
サムスンディスプレーのディスプレー研究所長を務めるチョ・ソンチャン副社長は、IMID 2026の基調講演で、AI時代のディスプレーが進む方向として「Every Space」「Ultra Low Power」「Context Awareness」の3点を挙げた。
Every Spaceは、ウェアラブル機器、ロボット、XR、車載機器などへディスプレーの利用空間を広げる考え方である。Ultra Low Powerは、AI処理による電力需要の拡大を見据え、表示に必要な消費電力を抑える方向性を示す。
Context Awarenessは、ディスプレーに組み込まれたセンサーとAIを組み合わせ、利用者や周囲の状況に応じて表示や動作を変化させる構想だ。今回展示されたヒューマノイド向けディスプレーやウェアラブル型OLEDは、こうした方向性を具体的な形で示したコンセプトに位置付けられる。
サムスンディスプレーはIMID 2026で57本の技術論文を発表した。同社によると、参加企業の中で最多となるのは2年連続である。
■HDSとプライバシーディスプレーも受賞
IMID 2026では、LGディスプレーの「Hyper Double Scanning(HDS)」と、Galaxy S26 Ultra向けのサムスンディスプレー製OLEDが「Display of the Year Award」を受賞した。
HDSは、OLEDテレビ向けパネルの画素駆動方法を改良し、データ伝送速度を従来の2倍にする技術である。リフレッシュレートを144Hzから165Hzへ高めるとともに、温度を安定させる設計や制御アルゴリズム、配線を簡素化する回路設計を取り入れている。
LGディスプレーによると、HDSは同社のOLEDテレビ向けパネル全製品ですでに量産適用されている。
サムスンディスプレーは、Galaxy S26 Ultra向けに供給するプライバシーディスプレー技術搭載OLEDで受賞した。この技術は、画面を正面から見る利用者には通常の表示を見せながら、周囲の方向から内容を見えにくくすることを目的としている。
FLiPPとWide View Displayは、直ちに消費者向け製品として発売される技術ではない。一方で、金属マスクによる製造制約と、曲面OLEDにおける視角依存の輝度低下という異なる課題に対し、画素形成プロセスと発光層設計の両面から改善を試みた点で、今後のOLED開発の方向を示す展示となった。
■注目ポイントQ&A
●ファインメタルマスクとは何ですか?
OLEDの赤、緑、青の画素を所定の位置に形成するため、微細な穴を設けた金属製のマスクです。有機材料を穴越しに蒸着することで画素を作りますが、サイズや解像度ごとに高精度のマスクが必要となり、大型化するとたわみや位置ずれが課題になります。
●FLiPPはどのように画素を形成するのですか?
基板全体に赤、緑、青の画素材料を順番に塗布して固定し、フォトリソグラフィを用いて不要な部分を紫外線で除去します。FMMの穴を通して有機材料を蒸着する従来方式とは、画素パターンの作り方が異なります。
●FLiPPでOLEDテレビの方式は変わりますか?
大型基板上でRGB画素を形成する選択肢になり得ますが、テレビ向け製品への採用時期や仕様は公表されていません。量産工程での歩留まり、安定性、コストを含む今後の開発が焦点となります。
●Wide View Displayは何を改善する技術ですか?
フォルダブルOLEDを正面から見たとき、折り目周辺の曲面部分が暗く見える現象を抑える技術です。サムスンディスプレーは、有機発光層の材料と構造を再設計することで、曲面部分でも明るく均一な画質を実現したと説明しています。
●両技術を採用した製品はいつ発売されますか?
現時点では、FLiPPとWide View Displayを採用する具体的な製品や発売時期は公表されていません。今回の発表は、IMID 2026における技術展示です。
元記事: LG Display FLiPP OLED Kills Metal Mask Barrier; Samsung Fixes Foldable Brightness Gap
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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