SKハイニックスが米国で前工程工場を検討、AI向けHBM需要が招く「チップフレーション」

2026年8月16日 16:21

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記事提供元:Tech Times

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Digitimesの報道によると、韓国の半導体大手SKハイニックス(SK hynix)が、米国内で前工程のメモリウェハー工場を建設できるか検討し、1カ月以上にわたって候補地を調査している。同社を傘下に持つSKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長は、2027年にメモリの需要と供給の不均衡が一段と深刻になり、半導体価格の上昇がPCやスマートフォンなどの完成品に波及する「チップフレーション」が起きる可能性を指摘した。米国工場への投資は決定しておらず、仮に計画が具体化しても、現在の供給不足を短期的に解消するものではない。

■後工程パッケージングから前工程ウェハー製造へ、米国内拠点の検討が浮上

SKハイニックスは、米国内に前工程メモリ工場を建設する可能性について、電力、水、土地、サプライチェーンなどの条件を検討している。崔会長はCNBCのインタビューで、建設する意思はあるものの、適切な場所を見つけるのは難しいとの認識を示した。

米国での建設費は韓国のおよそ2倍となり、土地や電力、水のコストに加えて規制面の負担も大きいという。今回の候補地調査は初期の実現可能性調査に当たり、取締役会による投資承認や建設決定には至っていない。

これまでSKハイニックスが米国で進めてきた製造投資は、インディアナ州ウェストラファイエットの先端パッケージング・研究開発施設が中心だった。前工程工場の検討は、米国内での事業範囲をチップの組み立てからウェハー製造へ広げる可能性を示す動きとなる。

■インディアナ拠点との違い:なぜ「前工程」が重要なのか

SKハイニックスがパデュー・リサーチ・パークに建設している施設の投資額は38億7,000万ドル(約6,153億円、1ドル=159円換算)である。米CHIPS法に基づき、最大4億5,800万ドル(約728億円)の直接補助と、最大5億ドル(約795億円)の融資が決定している。

同施設は、HBMの先端パッケージング生産ラインと研究開発機能を設ける拠点で、2028年後半の量産開始を予定している。2026年8月27日には起工式が予定されており、その後、本格的な建屋工事へ移る見通しだ。

ただし、インディアナ施設はシリコンウェハー上にDRAMの回路やメモリセルを形成する前工程工場ではない。韓国などで製造されたDRAMダイを薄化・積層・接合し、HBM製品として仕上げる先端パッケージングを担う。ウェハー製造を韓国に依存する基本構造は変わらない。

前工程工場では、露光、成膜、エッチング、イオン注入など多数の工程を繰り返し、シリコンウェハー上に回路を形成する。HBMではさらに、TSV(シリコン貫通電極)の形成やウェハーの薄化、複数のDRAMダイを積層する先端パッケージング工程が必要となる。

■「チップフレーション」の脅威、AI需要が民生機器にも影響

崔会長はCNBCのインタビューで、半導体価格の上昇が完成品の価格に波及する現象を「チップフレーション」と表現した。

SKハイニックス、サムスン電子、マイクロン・テクノロジーの大手3社は、世界のDRAM市場の大半を占める。各社がAIアクセラレーター向けのHBMに生産能力を振り向ければ、スマートフォン向けLPDDR、PC向けDDR5、車載機器や一般サーバー向けDRAMに割り当てられる能力が圧迫される。

TrendForceは、大手3社のDRAMウェハー投入量に占めるHBM向けの比率が、2026年末の約22%から2027年末には約30%へ上昇すると予測している。一方、HBMがDRAM全体のビット供給量に占める割合は、2027年末でも約13%にとどまる見通しだ。HBMはダイ面積や積層後の歩留まりなどの影響により、同じビット量を供給するために汎用DRAMより多くのウェハー能力を必要とする。

Gartnerは、DRAMとSSDの価格が2026年末までに2025年比で合計130%上昇し、それによってPC価格が17%、スマートフォン価格が13%上昇する可能性があると予測している。

AMDも、メモリやその他の部品コスト上昇がゲーム関連需要に影響すると説明し、2026年下半期のゲーム部門売上高が上半期比で20%超減少するとの見通しを示した。アップルもメモリコストの上昇を認めており、コストを吸収しにくいメーカーでは製品価格や構成、出荷数量に影響が及ぶ可能性がある。

■2027年に供給不足が一段と深刻化する可能性

崔会長によれば、顧客が2027年向けに求めているメモリの量は、現時点で生産可能と見込まれる量の約2倍に達している。主要顧客からは、AIメモリの供給を現在より60~100%増やすよう求められているという。

崔会長は2027年をメモリ需給が最も厳しくなる年と予想し、価格上昇がデータセンターだけでなく社会全体に影響することへの懸念を示した。SKハイニックスの郭魯正(クァク・ノジョン)CEOも、2027年は供給面で業界史上最も厳しい年になるとの見方を示している。

Counterpoint Researchのアナリスト、ニール・シャー氏は、各社が生産能力を増強してもAI需要がそれを上回るため、メモリ価格が2028年末より前に軟化する可能性は低いとみている。ただし、価格動向は今後のAI投資、生産能力の立ち上がり、長期供給契約の状況によって変わり得る。

■韓国では新工場に約54兆ウォンを投資

SKハイニックスは2026年8月、韓国の龍仁(ヨンイン)Y2工場と清州(チョンジュ)M17工場に、合計約54兆ウォンを投資する計画を承認した。内訳はY2が35兆2,000億ウォン、M17が19兆1,000億ウォンである。

Y2はHBMを含む次世代DRAMの生産拠点で、2027年7月に着工し、2029年6月に最初のクリーンルームを開設する計画だ。M17は企業向けSSDなどに使われるNANDフラッシュの生産を担い、2027年2月に着工、2028年12月の最初のクリーンルーム開設を予定している。

建設中の龍仁Y1工場は、2027年2月に最初のクリーンルームを開設する予定である。ただし、クリーンルームの開設後も製造装置の搬入、工程の認定、歩留まりの改善が必要となるため、新工場が市場への供給を本格的に増やすまでには時間を要する。

■米国での前工程工場実現に向けた高いハードル

最先端のメモリ工場には、大規模で安定した電力、超純水、製造装置、特殊ガスや化学薬品の供給網、経験を積んだ技術者が必要となる。崔会長は、米国での候補地選定に当たり、電力、水、土地、人材、サプライチェーンなどの条件を重視している。

TSMCのアリゾナ工場でも、建設費や人材確保が課題となり、台湾から技術者を派遣する対応が取られた。米国でウェハー工場を運営した実績がないSKハイニックスにとっては、インフラだけでなく、現地の技術者育成や部材調達網の構築も課題となる。

前工程DRAM工場には150億~200億ドル(約2兆3,850億~3兆1,800億円)以上を要するとの業界推計もある。ただし、実際の投資額は工場の規模、製造世代、装置構成、建設地域などによって大きく変わる。

米CHIPS法によるインディアナ施設への支援は先端パッケージングを対象としており、米国内の大規模な前工程メモリ工場に必要な支援制度や資金が確保されたわけではない。建設コスト差を埋められる支援策が用意されるかどうかは、投資判断を左右する要素となる。

仮に近く建設を決定しても、候補地選定、許認可、インフラ整備、建屋建設、装置搬入、量産立ち上げには数年を要する。このため、米国の前工程工場は、2027年から2030年にかけて予想される供給不足への即効性のある対策にはなりにくい。

■注目ポイントQ&A

●「チップフレーション」とは何ですか? 一般消費者にどのような影響がありますか?

SKグループの崔泰源会長が、半導体価格の上昇がスマートフォン、PC、家電、自動車などの完成品価格に波及する現象を表すために用いた言葉です。メーカーがコストを吸収できない場合、製品価格の引き上げ、搭載メモリ容量の変更、出荷数量の減少などにつながる可能性があります。

●SKハイニックスの候補地調査により、米国でHBM用ウェハーの生産がすぐに始まりますか?

すぐには始まりません。候補地調査は実現可能性を検討する初期段階で、投資や着工は決定していません。計画が承認された場合も、工場建設や製造装置の導入、量産工程の立ち上げに数年を要します。

●インディアナ州の施設と、今回検討されている前工程工場は何が違うのですか?

インディアナ施設は、製造済みのDRAMダイを積層・接合してHBMに仕上げる先端パッケージングと研究開発の拠点です。前工程工場は、シリコンウェハー上に回路やメモリセルを形成し、DRAMダイそのものを製造します。

●メモリ価格はいつ頃下落する見込みですか?

Counterpoint Researchのアナリストは、メモリ価格が2028年末より前に軟化する可能性は低いと予測しています。ただし、価格はAIインフラ投資の規模、新工場の立ち上がり、メーカーによる生産配分などに左右されるため、下落時期が確定しているわけではありません。

元記事: SK Hynix Scouts US Wafer Sites as Chipflation Threatens Device Prices Worldwide

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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