米インテルCEOが次世代メモリに意欲―「XBM」特許と元SKハイニックスCEO採用が示す戦略

2026年8月13日 22:22

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記事提供元:Tech Times

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Intelのリップブー・タンCEOが、新たなメモリアーキテクチャを自身の「肝いりのプロジェクトの一つ」と表現した。最近公開された次世代メモリ構想「XBM」の特許や、元SK hynix CEOのイ・ソクヒ氏の採用、200億ドル(約3兆1800億円、1ドル=159円換算)の株式募集が重なり、同社がメモリ分野への関与を強める可能性が注目されている。ただし、これらがIntelの正式なメモリ製品や製造事業への再参入につながるかは、現時点では明らかになっていない。

■CEOの意欲と集まりつつあるピース

IntelのCEOであるリップブー・タン氏は、8月12日に公開されたポッドキャストで、新しいメモリアーキテクチャは「私の肝いりのプロジェクトの一つ」であると語った。また、メモリ分野で豊富な経験を持つイ・ソクヒ氏の採用にも言及し、自身が検討している方向性を示唆した。CEOの関心、アーキテクチャ特許、人材獲得という一連の動きは、Intelがメモリ分野への取り組みを強めている可能性を示すものだ。

メモリ製品を主要事業として創業し、1985年にDRAM市場から撤退したIntelは、2020年にはNANDおよびストレージ事業をSK hynixへ売却すると発表した。現在の動きが単なる研究開発にとどまるのか、それとも具体的な事業戦略に発展するのかが焦点となるが、タン氏は製品化や事業化について明言していない。

■タン氏の実際の発言

投資家のマイケル・マークス氏がホストを務めるポッドキャスト「TechSurge」に出演したタン氏は、ビジネスとしてのメモリに対する考え方の変化について語った。以前はメモリを「一種のコモディティビジネス」と見なして投資を避けていたが、現在は状況が変わったという。

「多くの新しい技術が登場している。そのため、私の肝いりのプロジェクトの一つとして、新しいメモリアーキテクチャのいくつかに注目している。ニュースを見たかもしれないが、SK hynixを率いていた親友のイ・ソクヒ氏を採用した。これで私が何を考えているか、少しは分かるだろう。まだ詳細を明かす準備はできていない」とタン氏は語った。

タン氏は、このメモリプロジェクトがIntelの正式な取り組みなのか、それとも自身が関係する投資活動なのかについて明らかにしなかった。Intelの正式なプログラムであれば、ファウンドリ事業などとの間で資本や研究開発資源の配分が必要になるが、現段階ではその位置付けは不明だ。

CPUとメモリの積層については、より具体的に語った。「CPUとメモリについては、一緒に積層する多くの方法があると考えている。また、メモリの新しいアーキテクチャも見つけようとしている。ある意味で、メモリにはイノベーションが不足している。だからこそ、本当に有望な領域がある」とタン氏は述べた。

■XBMとは何か、なぜそのアーキテクチャが重要なのか

関連するとみられている特許は2024年12月26日に出願され、2026年7月2日に公開された。Tom's Hardwareによる特許の分析では、Intelのクロスバッチメモリ(XBM)と呼ばれる「バックエンドトランジスタを備えた超広帯域メモリ」が記述されている。HBM4に近い物理的フットプリントを想定しながら、DRAMの構造と接続方法を見直す設計とされる。ただし、タン氏はポッドキャストでXBMを直接名指ししておらず、自身の発言とこの特許との関係を公式に確認したわけではない。

XBMが解決しようとしているのは、HBMをプロセッサと接続する際のコストや実装上の制約だ。現在のAIアクセラレータでは一般に、HBMスタックとプロセッサをシリコンインターポーザなどを介して接続する。NvidiaのH100にはHBM3、H200とBlackwell世代の一部製品にはHBM3Eが採用されている。

HBMの広いパラレルインターフェースには多数の配線が必要となるため、シリコンインターポーザはパッケージのコストや製造能力を左右する要素になる。TSMCのCoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)は、こうしたAI向け先端パッケージングに広く用いられている。

XBMは、主に2つのアーキテクチャ上の変更によって、こうした課題にアプローチする構想だ。

トランジスタの変更:従来のDRAMは、1トランジスタ・1キャパシタ(1T1C)のメモリセルをウェハーのシリコン層に形成する。特許に関する複数の技術分析によると、XBMは薄膜トランジスタを使用し、メモリセルのトランジスタをバックエンド・オブ・ライン(BEOL)、つまりトランジスタ層の上に形成される配線層側へ移す構造を想定している。

この構造では、シリコン側の領域をシリコン貫通電極(TSV)などに利用しやすくなり、よりコンパクトなスタックでメモリ密度や帯域幅を高められる可能性がある。また、メモリをロジックダイの近く、あるいは上部に配置し、プロセッサとメモリの間のデータ転送が性能上の制約となる「メモリウォール」への対応を図る構想でもある。

インターフェースの変更:XBMは、HBMの広いパラレルインターフェースの代わりに、UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)を利用したシリアル接続を採用する構想とされる。特許の分析では、32GT/s(ギガトランスファー毎秒)で動作するUCIeリンクが想定されている。

UCIeは、異なるダイやチップレットを接続するためのオープンな業界規格だ。XBMがこの規格に準拠して製品化されれば、専用インターフェースへの依存を抑えながら、UCIe対応のコンピュートダイと接続できる可能性がある。XBMスタックのベースダイは、シリアル化、ルーティング、組み込み自己修復などの機能を担う設計とされる。

注目すべきトレードオフもある。BEOLトランジスタを使ったDRAMは、大規模量産で実証された技術ではない。また、32GT/sはUCIe 2.0で規定されるデータレートの上限に当たるため、将来の帯域幅向上には、リンク数の増加や規格の進化などが必要になる可能性がある。TrendForceは、XBMの商用化時期を2030年以降とする見方を伝えている。

■パラレルバスからシリアル接続への変更は実際に機能するのか?

これはXBM特許が提起する重要なエンジニアリング上の疑問だ。HBMの広いパラレルインターフェースは、比較的低い信号速度で多数の配線を同時に動作させることにより、大きな帯域幅を実現している。UCIeを使ったシリアル接続は、配線や実装を簡素化できる可能性がある一方、リンク全体の帯域幅がHBMのパラレル接続と競争できなければならない。

Intelの特許には、製品として実現した場合の具体的な総帯域幅は記載されていない。HBM4と比較して最大2倍とする一部の推定値も報じられているが、これはIntelが公式に発表した製品性能ではなく、特許の解釈に基づく試算として扱う必要がある。

組み込み自己修復ロジックは、製造歩留まりを改善するための機能だ。積層するダイが増えるほど、各ダイの欠陥がスタック全体の歩留まりに影響する。組み立て後に冗長なチャネルなどを利用できれば、製造上の利点となる可能性がある。

この特許から分かるのは、IntelがXBMという具体的な技術構想を検討していることだ。一方、2030年前後までに量産可能になるのか、その時点のHBM4Eや後継規格と帯域幅、電力効率、コストで競争できるのかは、まだ証明されていない。

■XBMだけではないIntelのメモリへの取り組み

XBMは、IntelがSAIMEMORYと協力するZAM(Z-Angle Memory)とは別の構想だ。SAIMEMORYは2024年12月に設立されたソフトバンクの完全子会社で、Intelとの協業契約は2026年2月2日に締結された。

両社の公式発表によると、Intelは技術、イノベーション、標準化の面で協力し、SAIMEMORYがZAMの技術開発と商用化を主導する。したがって、ZAMをIntel単独の製品や、両社が対等に共同開発するIntel製メモリと位置付けるのは正確ではない。

ZAMは、IntelのNext Generation DRAM Bonding(NGDB)イニシアチブなどで得られた技術的知見を活用する積層DRAM構想だ。SAIMEMORYは2027年度中にプロトタイプを作製し、2029年度中の実用化を目指している。Intelの英語版発表では、2027年に試作品を作り、2030年までの商用化を目指すとの表現も使われている。

XBMとZAMは技術的なアプローチが異なる。XBMはBEOL側のトランジスタとUCIe接続を利用する構想であるのに対し、ZAMは積層DRAMとボンディング技術の改良を中心とする。両方の取り組みが製品化されるか、またIntelの将来の事業でどのように位置付けられるかは未確定だ。

■SK hynixとのつながり

Intelは2026年6月18日、イ・ソクヒ氏をIntel Foundryのエグゼクティブ・バイスプレジデントに任命した。同氏はタン氏に直属し、先端パッケージング、システム統合、バックエンド技術開発、バックエンド製造を率いる。

イ氏はIntelでエンジニアリング部門の要職を経験した後、SK hynixの社長兼CEOやSK Onの社長兼CEOを務めた。Intelの公式発表は、同氏が高度なプロセス技術と大規模製造に関する豊富な経験を持つとしている。

Intelは、イ氏の職務に独立したメモリチッププログラムが含まれるとは発表していない。公式に示されている担当領域は、Intel Foundryの先端パッケージング、システム統合、バックエンド技術開発および製造だ。

一方、AIアクセラレータでは、ロジックダイとHBMを同じパッケージ内で高速に接続する必要がある。Intelもイ氏の採用発表で、ロジック、メモリ、ネットワーキングなどを緊密に統合する能力を強化すると説明している。このため、同氏の経験がIntelのメモリ関連技術やパッケージ戦略に生かされる可能性はあるが、メモリ製造事業への再参入を直接意味するものではない。

■Intelが撤退した理由と、状況が変化した理由

Intelは1968年にロバート・ノイス氏とゴードン・ムーア氏によって設立され、初期には半導体メモリを主要製品としていた。1970年に発売されたIntel 1103は、世界で初めて商業的に成功したDRAMの一つとされ、磁気コアメモリから半導体メモリへの移行を促した。

1980年代に入ると、日本の半導体メーカーとの競争が激化し、IntelのDRAM事業は厳しい状況に陥った。同社は1985年までにDRAM事業から撤退し、経営資源をマイクロプロセッサへ集中させた。

その後、IntelはRDRAMへの関与、NANDフラッシュ事業、3D XPointを使ったOptaneなど、複数のメモリ関連事業や技術に取り組んだ。しかし、いずれもIntelの長期的な中核メモリ事業としては残らなかった。2020年にはNANDおよびストレージ事業をSK hynixへ売却すると発表し、関連取引は段階的に実行された。

現在は、AIデータセンターの拡大によって、高帯域幅かつ低消費電力のメモリや先端パッケージングの戦略的重要性が増している。特にHBM市場ではSK hynix、Samsung Electronics、Micron Technologyが主要サプライヤーとなっている。

タン氏は別のインタビューで、AIデータセンター需要に伴うメモリ供給の逼迫について、主要サプライヤーから2028年まで大幅な緩和は見込みにくいとの見方を聞いたと述べている。ただし、すべての種類のメモリがコモディティではなくなったという意味ではなく、AI向け高性能メモリの供給能力や技術が、以前より戦略的な要素になったとみるのが適切だ。

IntelはEMIBやEMIB-T、HBIといった先端パッケージング技術を開発している。Intelはイ氏の採用発表で、EMIB-TとHBIを顧客やパートナー向けに量産規模へ拡大する準備を進めていると説明した。一方、Googleの次世代TPUがEMIB-Tを採用した、Amazonが同様のサービスを協議している、SK hynixがIntelのEMIBを評価しているといった情報は報道に基づくもので、Intelや各社がすべてを公式に確認したものではない。

■再参入には実際に何が必要か?

Intelがメモリの量産事業へ本格的に再参入する場合、競争力のある製造技術、研究開発投資、生産設備、量産歩留まりの確立が必要になる。SK hynix、Samsung Electronics、Micron Technologyなど、長年DRAMを量産してきた企業と競争するには、製品設計だけでなく、大規模製造の経験や顧客基盤も求められる。

Intelのファウンドリ事業は依然として多額の投資を必要としている。新たなメモリ製造プログラムを同時に進める場合、ファウンドリや既存製品との間で資本と研究開発資源をどう配分するかが重要になる。

Intelが7月23日に発表した2026年第2四半期決算では、売上高が161億ドルで前年同期比25%増となり、同社によれば15年以上で最も高い増収率となった。データセンターおよびAI部門の売上高は63億ドルで、前年同期比59%増だった。一方、同四半期には会計上の評価損などにより、Intel帰属のGAAP純損失110億ドルも計上している。

Intelは8月11日、200億ドル(約3兆1800億円、1ドル=159円換算)規模の普通株式募集の条件を決定した。調達資金は設備投資や運転資金を含む一般的な企業目的に使用する予定とされている。ただし、Intelはこの資金をXBMやメモリ製造事業へ振り向けるとは発表していないため、資金調達とメモリ構想を直接結び付けることはできない。

タン氏の「まだ詳細を明かす準備はできていない」という言葉は、現在の状況を端的に表している。ポッドキャストでの発言、XBM特許、メモリや先端パッケージングに精通した人材の採用、そして大規模な資金調達は、Intelが新たな選択肢を検討できる環境にあることを示す。

しかし、これらはまだ確約された製品ロードマップではない。IntelがXBMを製品化するのか、自社でDRAMを量産するのか、パートナーとの協業やファウンドリ向け技術として展開するのかは、いずれも明らかになっていない。現時点では「メモリ事業への再参入」ではなく、「メモリとパッケージングに関する複数の技術的選択肢を検討している段階」と捉えるのが妥当だ。

■注目ポイントQ&A

●Intel XBMメモリとは何ですか?HBMとはどう違いますか?

XBM(クロスバッチメモリ)は、Intelの公開特許に記載された高帯域幅メモリの構想です。薄膜トランジスタを使ってメモリセルのトランジスタをバックエンド・オブ・ライン(BEOL)側に配置し、HBMの広いパラレルインターフェースに代えてUCIeによるシリアル接続を利用する設計とされています。これにより、専用のシリコンインターポーザへの依存を抑えられる可能性があります。ただし、具体的な製品性能や発売計画は発表されておらず、量産規模での実現性もまだ確認されていません。商用化時期については、2030年以降になるとの予測が報じられています。

●なぜIntelはそもそもDRAM事業から撤退したのですか?

Intelは、日本メーカーとの競争激化やDRAM事業の収益性低下を背景に、1985年までにDRAM事業から撤退しました。その後、経営資源をマイクロプロセッサに集中させ、PC市場における成長につなげました。ただし、Intelがメモリ技術全般から完全に離れたわけではなく、その後もRDRAM、NAND、3D XPointおよびOptaneなどに取り組んでいます。

●XBMはIntelのパッケージング戦略でどのような役割を果たしますか?

XBMが製品化されれば、UCIeを介してコンピュートダイと接続し、Intelのチップレット技術や先端パッケージング技術と組み合わせられる可能性があります。これは、ロジック、メモリ、ネットワーキングなどを同一システム内で緊密に統合するIntel Foundryの方針と整合します。ただし、IntelはXBMを正式な製品として発表しておらず、EMIB-TやHBIとの具体的な組み合わせも公表していません。

●Intelは本当にメモリチップ製造事業に再参入するのでしょうか?

現時点では分かりません。タン氏は新しいメモリアーキテクチャへの関心を表明しましたが、Intelの正式な事業計画であるかどうかや、製品化、量産時期、製造主体については明らかにしていません。XBM特許、ZAMをめぐるSAIMEMORYとの協業、イ・ソクヒ氏の採用は、Intelがメモリと先端パッケージングの技術を重視していることを示しますが、メモリ製造事業への再参入を確定するものではありません。

元記事: Intel CEO Declares Memory His Pet Project as XBM Patent and $20B Raise Converge

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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