スーパーマン最新作が描く「宇宙の熱的死」とミーム学:DC屈指の科学的アプローチを解説

2026年8月3日 23:16

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1852年、ケルヴィン卿は熱力学第二法則の帰結として、宇宙の不可避な終焉を「普遍的な静止と死」の状態と表現した。DCコミックスは1964年以来、その終焉の地に住むヴィランを描いてきた。水曜日(7月29日)に発売された『Superman Annual: Year One Thousand #1』は、タイム・トラッパーのエントロピー領域を脅威としてではなく、エネルギー源として用いた初のDC作品である。スーパーマンがその借り物の力で守ろうとするのは、厳密な科学的意味で、熱的死を迎えた宇宙でも生き残り得るもの、すなわち人々が語り継ぐ物語だ。

■スーパーマンの行方:タイム・トラッパーの領域と熱的死の物理学

価格5.99ドル(約946円、1ドル=158円換算)の48ページの読み切り作品である本作は、ジョシュア・ウィリアムソンが脚本、エディ・バローズが作画、ヤスミン・プトリがバックアップストーリーを担当する。2025年10月から2026年3月まで展開されたクロスオーバーイベント「DC K.O.」の公式エピローグに当たる。同イベントの結末で、スーパーマンは「アポコリプスの心臓(Heart of Apokolips)」から神のごときエネルギーを吸収したものの、それを拒絶して姿を消した。読者にとって4カ月間続いた空白は、水曜日(7月29日)に終わった。本作は彼がどこへ行ったのかを明らかにし、その説明に熱力学を用いている。

タイム・トラッパーは1964年の『Adventure Comics #317』で、DCが「時の終わり(End of Time)」と呼ぶ遠い未来に住むヴィランとして初登場した。その後62年間にわたって出自の設定が何度も大幅に変更されたが、ほぼすべての世界設定で一貫している特徴がある。彼はエントロピーの体現者であり、すべての熱力学的自由エネルギーが枯渇した状態を領域としていることだ。「DC Database」は、彼が過去の断片をかき混ぜるだけのエネルギーがかろうじて残る宇宙の時点に存在すると説明している。ケルヴィン卿の1852年の論文を直接言い換えたかのような表現である。

ケルヴィンが記述し、タイム・トラッパーが物語として体現している物理法則が、熱力学第二法則である。孤立系ではエントロピーが常に増大する。つまり、利用可能なエネルギー勾配、すなわち温度差や圧力差をはじめとする仕事を可能にするあらゆる差異は、時間とともに不可逆的に均一化していく。

その最終状態である「熱的死(ビッグ・チル)」は、劇的な爆発ではなく、あらゆる活動を可能にする差異が失われた状態だ。エントロピーは最大となり、温度は全体で均一になり、どのようなプロセスにも利用できる勾配が残っていない。アイザック・アシモフの1956年の短編『最後の質問』は、この前提を扱った最も有名な文学作品だろう。DCのタイム・トラッパーがコミックに登場したのは、その8年後である。

本作でスーパーマンは、「DC K.O.」で力を使いすぎたためにキング・オメガの能力が薄れ、すでに消耗した状態でタイム・トラッパーの領域に到着する。彼はタイムストリームを遡る旅のエネルギー源として、トラッパーの領域から残留する「アルファ/オメガ・エネルギー」を抽出する。

本作では、このエネルギーが急速かつ不可逆的に枯渇していく。現実の熱力学を物語として表現したものだ。熱的死に近い環境から引き出したエネルギーは再利用できない。それは死にゆく系から絞り出した最後の利用可能な勾配であり、使うたびに残量が減っていく。「DC K.O.」と本作を通じて描かれるスーパーマンの神のごとき力の消失は、このように読めば、宇宙規模で語られるエネルギー保存の物語である。

■スーパーマンが本当に救おうとしたもの、そしてそれが生き残った理由

本作におけるスーパーマンの使命は、物理的なタイムラインを元どおりにすることではなく、「リージョン・オブ・スーパーヒーローズ」を救うことである。より具体的には、リージョンという存在と、3026年のDCユニバースにおける希望を存続させ、ダークサイドによる未来の汚染が、本来そこにあるはずの文明を永久に置き換えないようにすることだ。「AIPT」のレビューは、ウィリアムソンが、ダークサイドに汚染されたものも含め、あらゆるバージョンのリージョンを救おうとするスーパーマンを描くことで、彼の本質を示したと評価している。

この物語上の選択には、ほかのレビューでは取り上げられていない、社会科学上の明確な枠組みがある。リージョン・オブ・スーパーヒーローズは、1958年4月の『Adventure Comics #247』で、オットー・バインダーとアル・プラスティーノによって生み出された。その作中における創設神話は明快だ。30世紀のヒーローたちは、スーパーボーイ、すなわち若き日のスーパーマンの伝説に触発されたのである。

この創設神話は、1994年と2004年を含むリージョンの世界設定のリブートを生き延びてきた。「何が起きたか」という具体的な内容は改変されても、「スーパーマンの伝説がリージョンを生み出す」という因果構造は、68年間の出版史を通じて変わっていない。

リチャード・ドーキンスは1976年の著書『利己的な遺伝子』で、生物進化における遺伝子になぞらえ、複製され、変異し、選択圧を受ける文化伝達の単位を表す言葉として「ミーム」を提唱した。現実世界における文明の創設神話も、この論理に驚くほど正確に従っている。カトリック教会、中国の科挙制度、オリンピックは、それぞれ1000年から3000年にわたって創設にまつわる物語を伝えてきた。儀式や教育、制度的な構造に物語を組み込むことで、受動的に保存するのではなく、能動的に複製し、ミームを「生かし」続けてきたのである。

DCユニバースにおけるスーパーマンの伝説は、ミームの観点から見れば極めて高い適応力を持つ。そこには、神のごとき力を拒絶するという犠牲、力より使命を選ぶという弱者の保護、アポコリプスの心臓を返すという、武力を最初の手段にしない姿勢が組み込まれている。これらは、想定し得るほぼあらゆる社会的文脈で適応し得る価値観である。

リージョンの未来を破壊しかけたダークサイドの汚染は、物理的な未来だけでなく、リージョンを可能にした物語、すなわちミームへの攻撃だった。スーパーマンが時の終わりへ赴き、そこに残された最後の利用可能な自由エネルギーを借りてリージョンを復活させるとき、彼が守っているのは、31世紀の制度を生み出す文明の創設神話である。ミーム論の言葉で表せば、彼はミームが生き残れるようにしているのだ。

「AIPT」のレビューは、本作を「リージョン・オブ・スーパーヒーローズとDCコミックスの歴史の両方へのラブレター」と位置づけている。本作には『Batman Beyond』や、『DC One Million』の「Justice Legion Alpha」など、ファンに人気の未来も明示的に描かれる。スーパーマンが守っているのは特定のひとつの未来ではなく、生き残った神話から枝分かれしていく遺産のすべてであることが示されている。

■タイム・トラッパーのエネルギーの正体と、それが枯渇する理由

本作の中心的な科学的前提を受け入れるには、フィクションとして多少の割り切りが必要になる。タイム・トラッパーの「アルファ/オメガ・エネルギー」を、エントロピーが極限まで増大した領域にも残る、有限かつ抽出可能なエネルギー源として扱っているためだ。

現実の熱力学では、これはそのままでは成立しない。最大エントロピーに達した系には、定義上、利用できるエネルギー差が残っていない。スーパーヒーローコミックに登場するクリプトン人を動かすような仕事も含め、仕事を取り出せる勾配は存在しないのである。

物理法則を多少曲げてはいるが、フィクションとしての解決策には内部的な一貫性がある。タイム・トラッパーの領域に、真の平衡状態へ達する直前の微小な構造、すなわち最後の利用可能な勾配が残っているとすれば、そこからエネルギーを抽出することは可能であり、その過程は不可逆的になる。

一度失われた自由エネルギーは元に戻らない。スーパーマンが力を使うたびに残量は確実に減少する。これが、本作を通じて彼の力が「急速に薄れていく」理由である。これは、多くのフィクションに登場するエネルギー切れよりも物理的に精密な描写だ。単にバッテリーの残量が減っているのではなく、ほぼエネルギー差のなくなった宇宙で、最後に利用できる自由エネルギーを消費する熱力学的な過程なのである。

物理学者のフレッド・アダムズとグレゴリー・ラフリンは、1997年の論文「A Dying Universe」で、宇宙の熱的死に至る過程に「暗黒時代(Dark Era)」が訪れると記述した。その時代には、宇宙における活動は劇的に減少し、エネルギーレベルは極めて低くなり、現象の時間尺度は極めて長くなる。

このモデルに照らせば、タイム・トラッパーの領域は、暗黒時代に相当する物語上の表現である。完全な熱的死には至っていないものの、それに限りなく近い。スーパーマンによる残留エネルギーの抽出は、ほとんど何も与えるものが残っていない宇宙から力を借りる物語なのである。

■レビューの評価:本作は期待に応えたか

『Superman Annual: Year One Thousand #1』に対する批評家の反応は概ね肯定的だが、結末については注目すべき留保もある。

「AIPT」のコリアー・ジェニングスは本作に9.8点を付け、「リージョン・オブ・スーパーヒーローズとDCコミックスの歴史の両方へのラブレターであり、『DC K.O.』の感情的なコーダ(終結部)」と評した。複数のタイムラインを同時に描いたバローズの作画についても、「新たな限界に挑んでいる」と称賛している。ヤスミン・プトリによるバックアップストーリーについては、「『All In Saga』の次なる展開への布石となる、いくつかの衝撃的な事実」が含まれていると評した。

「ComicBook.com」のレビューは、より慎重だった。スーパーマンの行方をめぐる4カ月間の空白には満足できる答えが示されたものの、クライマックスでは、スーパーマンが「どうにか問題の答えを見つけ、一発のパンチで無理やり窮地を切り抜けたように見える」ため、それまでの盛り上がりから期待されたほどの力強さはなかったと指摘している。それでもレビュアーは、本作を「絶対に見逃したくないアニュアルのひとつ」と評価した。

「But Why Tho」は、本作の構成力に注目している。物語はロイスとクラークの静かな家庭生活の場面から始まり、DCのタイムラインを描く一連の見開きページを通じて、「変化する宇宙の果てへと飛び出していく」。

「Fanlight Zone」は、「ウィリアムソンはケントに高潔な本能を決して見失わせない」と評している。本作の感情面における中心は、神のごとき力ではなく、ロイスの元へ帰ろうとするクラークの決意だ。それが、エントロピーをめぐる宇宙規模のドラマに、人間的な切実さを与えている。

アドリアーノ・ルーカスの彩色も一貫して称賛を受けた。荒れ狂うタイムストリームを走る鮮やかな青い稲妻、タイムラインをのみ込む人物を包む白い光、スーパーマンがロイスを思うコマで使われる暖色などについて、「AIPT」のレビューも高く評価している。

■今後の展開:リージョン・オブ・スーパーヒーローズへの布石

ヤスミン・プトリが作画を担当した本作のバックアップストーリーは「Legion Found」と題されている。物語を締めくくると同時に、ウィリアムソンが脚本、ヘイデン・シャーマンが作画を担当する新たな継続シリーズ『Legion of Super-Heroes #1』へ直接つなぐ役割を果たしている。

同作は2026年9月2日にコミックショップで発売される予定だ。ヒーローが非合法化された未来を舞台に、ブレイニアック1・オブ・5がR・J・ブランデ殺害事件を捜査する。これらの詳細は、DCの公式発表で確認されている。

新シリーズが始まる前に、本作を読む価値はある。本作では、ダークサイドの汚染を生き延びたのがどのバージョンのリージョンなのか、また彼らがどのような状態にあるのかが示される。新シリーズの殺人ミステリーは、そうした状況を直接の前提としている。本作を読まずに新シリーズから読み始めると、すでに起きた出来事の結果から物語に入ることになる。

「AIPT」による発表記事では、DCの出版企画「Next Level」により、リージョンと同じ発売日に『Teen Titans』と『Doom Patrol』のシリーズも始まるとされている。この9月のラインアップは、DCにとって2026年最大規模の新シリーズ同時展開となる。

■本作の科学的妥当性

本作は、熱力学的エントロピー、エネルギー保存則、そしてミームによる文化伝達という3つの物理学・社会科学上の概念を扱っている。エネルギー保存則は、失われていくスーパーマンの力に対する暗黙の制約として機能する。3つはいずれも実在する枠組みであり、本作のフィクション上の仕掛けは、多くのスーパーヒーローのタイムトラベル作品よりも慎重にその制約を踏まえている。

読者が受け入れなければならないのは、エントロピーが極限まで増大した領域にも抽出可能なエネルギーが残っていることと、クリプトン人が物理的な装置ではなく意志の力でそのエネルギーを取り出せることである。どちらも物語上の許容範囲にある設定だ。

その代わりに本作は、エネルギーの不可逆性をドラマとして描いている。薄れていく神のごとき力、「永久に失われる力」、そして自らの力が尽きる前に目的を果たそうとするスーパーマンの姿は、同種のスーパーヒーロー作品のほとんどよりも物理学的な整合性を備えている。

ミーム論について言えば、創設神話の伝達経路、すなわち「スーパーマンの伝説→リージョンという組織→31世紀の文明」が成立するために、その神話が事実として正確である必要はない。必要なのは、神話が確実に複製されることだけだ。

本作は、スーパーマンが自分を記憶してもらうためではなく、伝説を記憶できる条件そのものを存続させるために未来へ向かうことで、この仕組みを文字どおりの物語にしている。ミーム論の観点から言えば、彼はミームが生き残るための宿主集団を確保している。これは単なる比喩ではない。現実の人類史において、長期間存続してきた創設神話が実際に受け継がれてきた仕組みそのものである。

■注目ポイントQ&A

●「DC K.O.」の結末でスーパーマンに何が起こり、本作はどこから始まるのか?

「DC K.O.」の結末で、スーパーマンは「アポコリプスの心臓」を吸収してキング・オメガとなり、ダークサイドをアブソリュート・ワールドへ押し戻せるほどの、神のごとき力を得ました。その後、彼はその力を拒絶し、メインのDCユニバースから姿を消しました。

本作は、現実の出版スケジュールではその4カ月後に登場し、スーパーマンが「時の終わり」へ向かったことを明らかにします。そこは、DCが1960年代からエントロピーの生きた体現者として位置づけてきたヴィラン、タイム・トラッパーの領域です。スーパーマンはトラッパーの残留エネルギーを利用して歴史を遡り、ダークサイドのリージョンが31世紀の未来に与えた損害を修復します。

●タイム・トラッパーとは何か、なぜ本作ではエネルギー源として使われているのか?

タイム・トラッパーは1964年に初登場しました。互いに矛盾する複数の出自が描かれてきた一方で、「時の終わり」に存在し、エントロピーを体現する人物という特徴は一貫しています。

エントロピーに関する原理によれば、孤立系では利用可能なエネルギーの差がなくなるまで変化が進み、最終的にはいかなる仕事もできなくなります。1852年にケルヴィン卿が記述した熱力学第二法則が示すこの状態は、「宇宙の熱的死」と呼ばれることがあります。

タイム・トラッパーをその終焉に存在する人物として位置づけ、スーパーマンに彼の領域からエネルギーを抽出させることで、ウィリアムソンは、このヴィランが持つ概念的な設定を最も文字どおりの形で用いています。スーパーマンは、最後にもう一度だけ創造的な行為を成し遂げるため、枯渇していく宇宙から力を借りるのです。

●本作でスーパーマンは死ぬのか、あるいは新たなタイム・トラッパーになるのか?

いいえ。「ComicBook.com」のレビューでも指摘されているように、タイムストリームで迷ったスーパーマンが「時の終わり」に縛られ、家へ帰ることなく新たなタイム・トラッパーになってしまうのではないかという危険が、本作の中心的な緊張を生み出しています。

「ComicBook.com」がやや唐突だと評した結末では、スーパーマンはダークサイドに「汚染された」バージョンを排除せず、あらゆるバージョンのリージョンを守ることを選びます。その選択によって、彼は束縛から逃れます。そしてロイスの元へ帰還します。

続くヤスミン・プトリによるバックアップストーリー「Legion Found」では、31世紀でリージョンが再結集し始める様子が描かれ、2026年9月開始予定の新シリーズへ直接つながります。

●『Superman Annual: Year One Thousand #1』は『Legion of Super-Heroes #1』の前に読む必要があるか?

概ね、読む必要があります。本作では、どのバージョンのリージョンがダークサイドの汚染を生き延びたのか、新たな状況が始まる時点で彼らがどのような状態にあるのかが示されます。また、創設神話、文明の希望、伝説が1000年にわたって存続する意味など、ウィリアムソンが登場人物を描く際の感情的、主題的な基盤も示されています。

DCの2026年9月の公式発表で確認されたように、『Legion of Super-Heroes #1』では、ヒーローが非合法化された未来で、ブレイニアック1・オブ・5がR・J・ブランデの死を捜査します。この殺人ミステリーは、本作によって再編されたリージョンの存在を前提としています。

本作の価格は5.99ドル(約946円、1ドル=158円換算)です。新シリーズは2026年9月2日に始まる予定で、各号3.99ドル(約630円、同レート換算)です。

元記事: Superman Annual Year One Thousand Is DC’s Most Scientifically Precise Superhero Story in Years

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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