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ASMLに中国へのEUV部品輸出疑惑、米商務省が証拠提示と報道も会社側は全面否定
米商務省が、オランダの半導体製造装置大手ASMLに対し、極端紫外線(EUV)露光装置用の部品などを中国へ輸出したとする証拠書類を提示したと報じられた。ASML側は疑惑を全面的に否定しているが、これが事実と認定されれば、装置本体の輸出でなくとも米国の輸出規制違反として制裁対象になる可能性がある。今後の米政府による正式な法執行手続きの有無や、ASMLの中国ビジネスへの影響が注視されている。
■米商務省が部品輸出の証拠を提示か、ASMLは全面否定
米商務省が、オランダの半導体製造装置メーカーASMLに対し、極端紫外線(EUV)露光装置用の特殊輸送機器や部品を中国企業に輸出したとする具体的な証拠書類を提示したと報じられた。EUVは最先端の半導体製造に不可欠な技術であり、安全保障上の観点から厳しい輸出規制の対象となっている。
トランプ政権の高官が2026年6月22日、Electronics Weeklyに対し、出荷の証拠書類を保有していると明らかにした。ただし、機密情報であることを理由に書類の公開は拒否している。また、中国国内でEUV装置本体が実際に稼働しているかどうかについて、商務省からの公式な回答は得られていない。
ASMLはこの疑惑を強く否定している。同社の広報担当者は、中国にEUV装置を輸出したことは一度もなく、「EUV装置専用に設計された部品、モジュール、装置」も一切輸出していないと述べた。同社はワシントンで「中国におけるASML製EUVシステムの存在を示す兆候はない」と題した公式文書を配布しており、政府に対して異例の強硬な姿勢を示している。
■部品のみの輸出でも規制違反になる理由
今回の疑惑が重視されるのは、米産業安全保障局(BIS)が管轄する輸出管理規則(EAR)において、規制対象のシステム本体を輸出しなくても、専用部品の輸出だけで違反とみなされるためである。
2026年2月に米アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)が結んだ和解がその前例となっている。同社は、韓国の子会社を経由して中国のファウンドリ大手SMICにイオン注入装置の部品などを迂回輸出したとして、2億5,250万ドル(約409億500万円、1ドル=162円換算)の民事制裁金を支払うことで合意した。このケースでも、装置本体ではなく部品の出荷実績と、規制を認識していた事実が処分の根拠となった。もしASMLの部品出荷が事実であれば、同様の法執行プロセスが適用される可能性がある。
■ASMLの反論:技術的・商業的な不可能性
ASMLの否定主張は、技術的および商業的な2つの根拠に基づいている。
技術面では、EUV装置が極めて巨大かつ複雑なシステムであることが挙げられる。1台あたり約180トンの重量があり、10万点以上の部品で構成されている。ドイツのTRUMPF製CO2レーザーや、カールツァイス(Carl Zeiss SMT)製の超高精度ミラーなどを用い、高度な真空環境下で稼働する。このため、ASMLのエンジニアによる継続的な保守が不可欠である。同社は世界で稼働する314台のEUVシステムすべてをリモート監視しており、ASMLの関与なしに装置を移設・稼働させることは物理的に不可能だとしている。
商業面では、ASMLは2026年の売上高(予測値360億〜400億ユーロ)の約20%に相当する約70億〜80億ユーロを、すでに許可されている旧世代の深紫外線(DUV)露光装置の中国向け販売から得ると見込んでいる。CEOのクリストフ・フーケ氏は、違法な部品輸出によってこれらの輸出ライセンスを失うリスクを冒すことは「企業としての自殺行為」に等しいと主張している。
■高まる法的なリスクとMATCH法案の影
米商務省のハワード・ラトニック長官は、2026年4月にASML幹部との非公開会談でこの問題を提起していたとされる。この議論が6月中旬に報じられると、アムステルダム市場でASMLの株価は一時最大2.7%下落した。また、米政府はASMLが2024年に米国のエンティティ・リスト(禁輸リスト)に追加された中国企業SwaySure Technology(Huaweiのパートナー企業)に技術支援を行っている点についても懸念を示している。
さらに、米議会では超党派の議員によって「MATCH法案(Multilateral Alignment of Technology Controls on Hardware Act)」が2026年4月に提出され、下院外交委員会を通過している。この法案が成立すれば、ASMLによる中国へのDUV装置の輸出も全面的に禁止され、オランダなどの同盟国に対して150日以内に米国と同等の輸出規制を導入することが義務付けられる。アナリストの試算によれば、DUVの全面禁止によりASMLの総売上高は約5%減少する可能性がある。
■中国独自のEUV開発と今後の展望
一方、中国はASMLからの技術導入の有無にかかわらず、独自のEUV技術開発を急いでいる。2025年12月のロイター報道によると、中国の科学者らが元ASMLのエンジニアを起用し、深センでEUV装置のプロトタイプを完成させたという。このプロトタイプは極端紫外線の発光には成功しているものの、まだ実用的なチップの製造には至っていない。アナリストは、開発が順調に進めば、中国は2028年から2030年までに独自のEUV技術で先端チップを製造できるようになり、技術格差を従来の10年以上から約5年に縮小できる可能性があると予測している。
ASMLは現在、世界最先端のAIインフラを支えるEUV装置を独占的に供給しており、2026年には60台以上、2027年には80台(うち1台約3億8,000万ドル(約615億6,000万円)の高NA EUV装置10台を含む)の出荷を計画している。このサプライチェーンの安定性は、今後の米政府とASML、そしてオランダ政府を交えた法執行の行方に大きく左右されることになる。
■注目ポイントQ&A
●ASMLのリモート監視システムで、EUV部品の中国流出を防ぐことはできないのですか?
完全に防ぐことは困難とされています。ASMLのリモート監視システムは、世界で稼働している314台の「EUV装置本体」の稼働状況や接続状態を監視するものであり、サードパーティのサプライチェーンを経由して個別の部品や輸送機器が流通することまでを追跡する設計にはなっていないためです。
●輸出規制違反が認定された場合、ASMLにはどのような制裁が科される可能性がありますか?
米国の輸出管理規則(EAR)に基づき、民事制裁金は1件の違反につき最大100万ドル(約1億6,200万円、1ドル=162円換算)、または取引額の2倍のいずれか大きい額に達する可能性があります。EUV関連部品は極めて高額なため、違反が複数確認された場合、アプライド・マテリアルズの2億5,250万ドル(約409億500万円)を超える巨額の制裁金が科される可能性があります。
●MATCH法案とは何ですか?
2026年4月に米議会に提出された法案で、ASMLによる中国へのDUV(深紫外線)露光装置の輸出を禁止し、オランダなどの同盟国に対して150日以内に米国と同等の輸出規制を導入することを義務付けるものです。可決されればASMLの業績に大きな影響を与える可能性がありますが、現時点ではまだ成立していません。
●中国は独自にEUV露光装置を開発しているのですか?
はい。2025年12月の報道によると、中国の科学者らが元ASMLのエンジニアらの協力を得て、深センでEUV装置のプロトタイプを完成させたとされています。現時点では実用的なチップの製造には至っていませんが、2028〜2030年までに実用化され、技術格差が約5年に縮まる可能性があると予測されています。
元記事: ASML EUV Components in China: US Cites Shipment Evidence as BIS Enforcement Looms
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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