1万円札の顔:渋沢栄一が相談役を務めた若築建設は、着実な収益動向を見せている

2025年11月5日 13:55

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 若築建設(1888東証プライム市場)。会社四季報:特色欄は、「海洋土木の中堅。陸上土木にも展開。官公庁向け工事が多いが、民間設備工事や海外事業も強化」としている。

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 確かに官公庁向け工事が多い。昨年2024年竣工分をみても、こんな具合だ。<土木>:「国交省発注の清水港新興津湾岸」-「国交省の大分港岸壁築造工事」。<建築>:「下北地域新ごみ処理施設整備事業:土木建築工事」-「名瀬第2合同庁舎建築」-「東京都発注:新中川護岸耐震補強工事」etc。

 若築建設は1890(明治23)年、福岡県若松市(現北九州市若松区)で、海上交通の要衝:洞海湾(若松港)及び周辺の運河を改良/筑豊炭田の石炭の積出港とし開発・運営を目的とし設立された。福岡県知事から、「工事費用は港や運河を使用する船舶から徴収し賄う」ことを条件に認可された。時代を感じさせられる。

 そんな若築建設だが一時期、新1万円札の顔:渋沢栄一翁が相談役に就いた時期がある。「渋沢栄一と当社の関係について」という形で残されている。こんな内容が記されている。

 『設立当初、不況の影響を受け株式募集が困難を極めた。設立早々の明治24年には経営の危機に晒された。当時の社長:石野直治は、明治25年に株式会社組織の創設・育成に力を入れていた渋沢に面識を得た。石野の話に渋沢は当社の事業に賛同し、株主としかつ相談役とし就任を快諾してくれた。渋沢の相談役就任が株主募集、融資に多くの賛同者を得た。明治37年まで相談役として力を注いでもらった』。

 渋沢翁の肝いりで歩みを進め始めた若築建設の現状での収益動向は、こんな状況。2019年3月期の「24.1%営業増益、55円配」以降を追うと、「9.4%増益、60円配」-「42.1%減益、60円配」-「134.2%増益、80円配」-「8.8%減益、100円配」-「11.9%増益、120円配」-前期は「25.2%減益、126円配」。今3月期は「10.2%増益(57億5000万円)、131円配」計画。増配継続の流れから「総じて着実な歩み」と捉えられる。

 至27年3月期の中計でも「受注高1100億円以上」「売上高1100億円以上」「営業利益65億円以上」と着実な推移を掲げている。

 本稿作成時点の株価は4000円台終盤、予想税引き後配当利回り2.18%余。年初来の株価動向は2月21日安値(3375円)から8月26日高値(6170円)まで買われた後の押し目場面。過去9年10カ月の修正済み株価パフォーマンスは3.4倍強。この限りでは、中長期構えの対応も可能。対応は読者諸氏の判断に委ねたい・・・。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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