都心オフィスの需要低迷とその対策

2023年7月29日 15:40

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 東京ではテレワークの実施率が低下している。つまり、出社する人が増えているということになるだろう。東京都の調べでは、2023年5月における都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は44.0%で、4月(46.7%)に比べて2.7ポイント減少した。

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 緊急事態宣言期間では60%を超えていたことから、コロナ感染の落ち着きとともに出社率が高まっていると想定される。東京に通勤する人であれば、朝のラッシュでそのことを体感していることだろう。

 出社する人が増える傾向にあるならば、都心のオフィスの空室率は下がると考えられそうなものだが、実態は逆に空室率が上がっている。三鬼商事によると、千代田、中央、港、新宿、渋谷の5区の空室率は6月時点で6.48%となっており、供給過剰と言われる5%を上回っている。更に、1坪あたり平均賃料も1年前は2万円を超えていたが、同じく6月時点では1万9,838円となっている。

 この原因は、大規模でグレードの高いオフィスビルが次々に供給されているからに他ならない。日本橋の再開発が進み、2023年から24年には東京八重洲口に巨大なビルが3棟も竣工する。更に2027年には、「あべのハルカス」を超える日本一高いビルが建つ予定だ。

 一方、都心に拠点を構える企業にとっては、テレワークの普及により確保すべきオフィス面積は減ったものの、出社への回帰によりある程度のスペースの確保が必要だ。その際に、以前より狭くともグレードの高いオフィスに入居することが、従業員の働く意欲を保つために効果を発揮する。

 結果、最も苦しいのが築年数の経ったビルとなる。都心の1等地にあっても状況は苦しく、賃料を下げてテナントを確保する動きが続いており、空室率上昇と賃料低下傾向が続くことを、不動産業界では「2023年問題」と呼んでいる。

 富士通やNTTと言った大企業でも、リモートワークをメインとする働き方を採用していることからも、オフィス供給過剰は続くだろう。そうした中で、中小規模のオフィスビルでも工夫を凝らして企業を呼び込む動きがある。

 その1つが、採光、音響、緑の設置といった快適性を高めることである。また出社した社員のコミュニケーションが増えるよう、お洒落なカフェスペースを設置するところもある。耐震性といった安全面含め、社員がオフィスに来たくなるような改装やリノベーションが行われている。中には、オフィスで人ではなく野菜を育てる事業もある。

 都心のオフィス事業は改善が見込めない市場であるだけに、ハード面だけでなくソフト面での取り組みや異業種との連携等、生き残りに向けた本格的な施策が直近で必要となっている。(記事:Paji・記事一覧を見る

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