半導体の効率化と高性能化を推進して来た原動力、微細化に限界の可能性!

2023年7月16日 07:56

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 現代の生活を形成している大きな要素の1つ、と言えるのが半導体だ。PCやスマホなどの情報通信機器はもちろん、 自動車や家電などあらゆる電化製品には何らかの半導体が組み込まれていると言っていい。それどころか、今や半導体を抜きにしては、現代の生活を維持することすら不可能と言える存在だ。

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 21年から22年にかけて、自動車業界を襲ったのが半導体ショックによる生産停止問題だ。部品件数が3万とも言われる自動車も、半導体なしには製造できないことを如実に示した事例だろう。

 単純に「半導体」と呼ばれるチップの源流は、トランジスタが進化したIC(インテグレーション・サーキット)や集積回路である。トランジスタ、抵抗、コンデンサやダイオードなども含む微細な多数の電子部品と、部品を接続する金属配線を小さな半導体基盤上に一体として形成される。この統合的に複雑な機能を帯びたチップ(小片)は、ICから集積回路、LSI(大規模集積回路)などへと段階的な進化を遂げながら、現在は単に半導体と呼称されている。

 どんな用途にも応用できて汎用性の高い性格を有していた集積回路は、半導体と呼ばれるようになってから、徐々に明確な利用目的に沿った製品としての個性を高めてきた。

 大きく分けると、(1)1つの素子が1つの機能を持つ「デイスクリート半導体」(2)電気を光に、光を電気に変換する「オプト半導体」(3)温度、光、色、圧力、磁気、速度、加速度などの情報を検出する「センサー半導体」(4)制御や加工、演算処理等を行う「ロジック半導体」(5)情報を電気的に格納・蓄積する「メモリー半導体」、がある。

 マスコミでは大雑把に「半導体が不足」「半導体の供給が過剰」などと伝えられるが、過剰になったり不足したりするのは特定の機能を持つ半導体だ。少なくとも「半導体全て」が不足したり、過剰になったりしているわけではない。

 好天に恵まれて「キャベツ」が豊作になったり、悪天候に祟られて不作になったりという変動があったとしても、「野菜が豊作」とか「野菜が不作」とは言わないから、報道のスタンスとして配慮が足りないと指摘されるのはやむを得まい。

 絶え間なく進化を続けてきた半導体は、電子部品の集積に並行して進められて来た金属配線の微細化が、極限近くに到達している。配線の線幅を細くするほど限られたスペースの活用が進む。こうして生み出された、より小さくて高性能で電気効率の高い製品は、他社製品との差別化を一気に進める。

 現在量産されている最先端半導体の配線線幅は、3ナノメートル(1nmは10億分の1メートル)で、量産できるのはTSMC(台湾)とサムスン(韓国)の2社だけと言われている。

 北海道に設立されたラピダスが、線幅2nmの半導体の量産に挑戦するとして話題になっているが、コンマnmのレベルになれば電子顕微鏡ですら確認が困難となる。配線線幅の競争は極限に迫っているようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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