地方再生は「掛け声」だけでは実現しない、政府はCFで再生資金を集めたらどうか

2023年2月14日 08:11

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 昨年12月に政府は「デジタル田園都市国家構想」を閣議決定した。その中で「東京圏からの地方移住者、年1万人」を掲げた。

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 が、依然として「東京への転入超過」は増えこそすれ減る傾向にないことが1月30日の総務省の発表で明らかになった。例えば31日の読売新聞は、『東京転入超過3万8000人 昨年3年ぶり拡大』とする見出しで実態を伝えている。閣議決定とは真逆の事態が進んでいる。

 こうした流れの加速は、表現は乱暴だが「少子高齢化に伴いすたれる地方の進捗」を意味する。「改善の方向は見届けられないものか」と期待し、各種資料を漁ってみた。

★総務省統計局は「東京圏」を最高に、「大阪圏」「福岡圏」「沖縄圏」が転入顕著としている。

★内閣府は「第5回生活意識・行動の変化に関する調査」で、「地方移住への関心を持つ層は全年齢層で34%と増加している。特に20代ではその傾向がより強い」としている。だが一方で大東建託の「街の住み心地&住みたい街ランキング2022<都道府県版>」は、東京都・福岡県・神奈川県・沖縄県・北海道がベスト5。「地方」の臭いが感じられない。

◎国交省「地方の機能確保に向けた関係人口との連携」では、地方再生に向けた成功事例を伝えている。

 関係人口とは、「定住人口」でも「交流(観光)人口」でもない。こんな風に定義されている。「風の人(行き来することが多い人)」や、「何らかの係わりがある人(過去に勤務や居住など滞在実態がある人)」。そして「地域内にルーツがある人」。

 ここに振り分けられる人の属性は、主に2通りに分かれる。「近居者」は日常的に往来が可能な範囲に居住している人で、具体的には自転車・自動車・電車で1時間程度に居住している人。「遠居者」は定住者ではないが、定期的にor機に応じ訪れる人。「親の面倒をみる必要がある人」といったニュアンスが捉えられる。

 さて成功例だが・・・徳島県神山町。テレワークで人気のある地。そこに着目したNPO法人が、関係人口からのふるさと納税(個人)・企業版ふるさと納税などの寄付金を募り、CF方式で学校設立資金21億円を集め高専を開講し地方再生の道筋をつけた。

 新潟県長岡市。関係人口との縁を強める目的で一人暮らしの都市部居住の学生に、地元米や地元便りを送り続けることで地方再生の気運を高めている。

 そういった道づくりを行いたいとする自治体は少なくない。が、多くの自治体は「自治体の職員不足」「予算不足」で歩みを進められないとしている。

 ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏(人口動態シニアリサーチャー)が発信したレポートに触れた。転入・転出状況をはじめ、人口動態を多面的にリサーチしている。手元に総務省のデータに基づき作成された、『2022年1月から10月合計 転出超過(社会減) 男女合計都道府県ランキング(人)』がある。県別にみると、「女性減」が圧倒的。

 天野氏は、「古き時代の女性像に基づく多様性に欠ける価値観で設計されている対策であることが、人口減に直結していることが認知されていないことが残念でならない」としている。的を射た指摘である。

 こうした専門家の箴言を、国は耳にしっかりと叩きこんでおくべきだ。

 地方再生⇔東京への転入超過解消は、「断固たる決意で措置を講じる」という言葉だけでは進まない。暴論かも知れないが、政府は例えばCF(クラウドファンディング)で「促進資金」を募る方法も視野に入れるべきではないだろうか!?(記事:千葉明・記事一覧を見る

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