米国の戦略石油備蓄政策、原油価格を左右するのか

2023年1月14日 09:34

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●米国が戦略石油備蓄を補充

 米国エネルギー省は2022年12月16日、戦略石油備蓄(SPR)の補充を開始すると発表したと、ロイター通信などが報じた。2月の受け渡し分として、最大300万バレル購入すると見られる。

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 2022年4月から米国は日本などと協調して備蓄石油の放出を決め、2022年の1年間でSPRから1億8000万バレルを放出したと見られている。

 ロシアのウクライナ侵攻により、高騰する国内のガソリン価格を抑えるためであり、11月に行われた米国中間選挙に向けた政策とも揶揄された。

 2022年後半から事情が変わり、原油価格は落ち着き、今度は補充するために購入することとなる。今度は原油価格の上昇を招きかねないが、米国の戦略備蓄政策が原油価格に影響を及ぼすのだろうか?

●2022年の原油市場

 2022年の原油市場は、ロシアのウクライナ侵攻から波乱の連続だった。G7やEUはロシア産原油の原則禁輸、他国へも販売価格に上限設定を設ける等、厳しい制裁を強めている。

 ウクライナ問題は未だ収束の目途が立っていないが、WTI原油先物価格は6月の1バレル=120ドルをピークに、低下し始めた。

 背景には中国のゼロコロナ政策、米国の急速な利上げ、世界景気の減速で原油の需要が減少する懸念が高まり、年初の価格へと落ち着いていった。

●戦略備蓄が左右するか?

 そもそも戦略備蓄の放出が報道されたときには、原油価格はしばらく下がらなかった。短期的な効果であることは当初から想定されていたことだ。

 だが戦略備蓄の放出は大規模であったため、SPRの4割を失ったと言われており、補充する必要があった。

 戦略備蓄の補充には、供給面や価格面への影響が出ないように内密に行われるが、どの価格で買われたかは市場で意識されることは間違いない。

 その底値が80ドルという一部報道もあったが、実際のところはわからない。少なくとも70ドルか80ドルあたりが意識されるだろうというのが大勢の見方ではある。

 いずれにしても、ウクライナ情勢、米国の利上げ終了時期、中国のコロナ感染状況が意識される状況が中心となり、戦略備蓄はあくまでも安値の一時的な歯止めに過ぎないだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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