地球外生命の存在を左右する、赤色矮星の短時間閃光現象 東大らの研究

2022年8月10日 08:19

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赤色矮星の表面で発生した短時間フレアの想像図。(Image credit: 東京大学木曽観測所)

赤色矮星の表面で発生した短時間フレアの想像図。(Image credit: 東京大学木曽観測所)[写真拡大]

 太陽系外惑星プロキシマケンタウリbは、地球からの距離がおよそ4.2光年と、現在発見されている中で最も地球に近い太陽系外惑星だ。水が液体として安定して存在できる領域(つまりハビタブルゾーン)にあるため、生命存在の可能性があることでも注目の的となっている。

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 さらに2020年12月19日、プロキシマケンタウリbが周回する赤色矮星プロキシマケンタウリの方向から、知的生命体からの信号かもしれない電波を捉えたとのニュースが、SETI研究所によって報じられ、ますます脚光を浴びている。その後、知的生命体からの信号説は否定されたが、現在においても赤色矮星プロキシマケンタウリが生命を育むことのできる恒星かどうかは、科学者たちの注目を集める研究課題だ。

 プロキシマケンタウリとプロキシマケンタウリbとの距離は750万km、つまり地球と太陽との距離に比べ20分の1しかなく、強力なフレアに頻繁にさらされる環境で果たして生命が誕生し進化できるのか、現在のところ誰も正確な答えを持ち合わせていない。その理由は、赤色矮星で頻繁に発生するフレア現象について、従来正確なデータを観測する術がなく、詳細な研究を進められる状況にはなかったためだ。

 東京大学は9日、複数の赤色矮星から、数10秒の短時間かつ強力なフレアの検出に成功したと発表した。この研究は、上海交通大学や東北大学などと共同で行なわれたもので、東京大学木曽観測所の広視野動画観測システム”トモエゴゼン”を用いて、2019年から2020年にかけて合計5700個にも及ぶ赤色矮星の明るさの短時間変動を調べ、22件の短時間かつ強力なフレアの検出に成功したという。

 赤色矮星の閃光現象を捉えることが難しい理由は、撮像範囲が狭い大望遠鏡では、一度に多くの観測対象を捉えられず、撮像に振り向けられる時間も限られるためだ。だが”トモエゴゼン”では、20平方度の広視野撮像が可能で、一度の撮像で視野内に数百個の赤色矮星を捉えられるという。

 東大のホームページでは、閃光の継続時間や頻度、増光強度などより詳しい情報が公開されている。赤色矮星が生命を育むことができるかどうかの結論は、今後のさらなる研究で明らかにされるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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