朝日ラバーは反発の動き、23年3月期減益予想だが保守的

2022年6月2日 12:19

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 朝日ラバー<5162>(東証スタンダード)は自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の事業拡大も推進している。22年3月期は自動車向けゴム製品の需要回復や卓球ラケット用ラバーの増加などで営業黒字転換した。23年3月期は販管費の増加を見込むため減益予想としている。ただし保守的だろう。原材料価格高騰に伴う販売価格転嫁や原価低減効果などで上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は5月の年初来安値圏から切り返して反発の動きを強めている。底打ちして出直りを期待したい。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

 シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップASA COLOR LEDなどを主力としている。

 22年3月期のセグメント別構成比は、売上高が工業用ゴム事業83%、医療・衛生用ゴム事業17%、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が工業用ゴム事業84%、医療・衛生用ゴム事業16%だった。

■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信

 2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。

 中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。

 そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円としている。

 光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。

 22年3月期の中期事業分野別売上高は、光学事業が21年3月期比7.4%増の31億03百万円、医療・ライフサイエンス事業が2.1%増の12億32百万円、機能事業が22.5%増の21億55百万円、通信事業が15.7%減の5億32百万円だった。主要製品の売上高は、ASA COLOR LEDが5.6%増の28億64百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が3.7%増の11億80百万円、卓球ラケット用ラバーが36.2%増の4億21百万円、そしてRFIDタグ用ゴム製品が34.5%減の3億12百万円だった。

 技術開発では、簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LED、超親水性シリコーンゴム、ウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムなどの開発を推進している。

 20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。

 20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術の開発を発表した。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。

 また20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。

■SDGsへの取り組みを強化

 21年8月には「サステナビリティビジョン2030」を策定した。SDGsへの取り組みを強化し、持続可能な社会の実現に貢献する。

 21年12月には、福島県にある生産4拠点の購入電力をCO2フリー電力に転換した。年間約3000tの温室効果ガス排出削減を見込んでいる。また、みずほ銀行のホームページに、SDGs推進サポートローン実行事例として、同社の取り組みが紹介された。

■22年3月期営業黒字転換、23年3月期減益予想だが保守的

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用だが利益への影響なし)は、売上高が21年3月期比8.3%増の70億24百万円、営業利益が2億91百万円の黒字(21年3月期は92百万円の赤字)、経常利益が3億13百万円の黒字(同18百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が2.1倍の2億38百万円だった。配当は10円増配の20円(期末一括)とした。収益認識会計基準適用の影響として、従来方法に比べて売上高と売上原価がそれぞれ80百万円減少したが、利益への影響はなかった。

 自動車向けゴム製品は半導体不足・部品調達難に伴う自動車減産の影響で期後半にかけて鈍化傾向となったが、前期比では自動車向けゴム製品の需要回復や卓球ラケット用ラバーの増加などで営業黒字転換した。経常利益と親会社株主帰属当期純利益は大幅増益だった。売上総利益率は4.8ポイント上昇して24.1%となった。

 工業用ゴム事業は売上高が9.3%増の58億30百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が4.4倍の5億29百万円だった。RFIDタグ用ゴム製品は経済環境や生産調整の影響で減収だが、ASA COLOR LEDなどの自動車向けゴム製品や卓球ラケット用ラバーの需要が増加した。

 医療・衛生用ゴム事業は売上高が3.6%増の11億93百万円だが、セグメント利益が12.4%減の98百万円だった。プレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム栓の需要が回復傾向となったが、原材料価格高騰の影響で減益だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が17億97百万円で営業利益が78百万円、第2四半期は売上高が18億35百万円で営業利益が98百万円、第3四半期は売上高が16億47百万円で営業利益が82百万円、第4四半期は売上高が17億45百万円で営業利益が33百万円だった。

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比6.1%増の74億54百万円、営業利益が12.5%減の2億55百万円、経常利益が19.8%減の2億51百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が21.6%減の1億87百万円としている。配当予想は22年3月期と同額の20円(期末一括)としている。

 セグメント別売上高の計画は工業用ゴム事業が6.0%増の61億80百万円、医療・衛生用ゴム事業が6.7%増の12億74百万円としている。中期事業分野別売上高の計画は光学事業が11.1%増の32億12百万円、医療・ライフサイエンス事業が2.0%減の11億82百万円、機能事業が29.1%増の22億71百万円、通信事業が7.1%減の5億86百万円としている。

 中期事業分野別売上高計画は、光学事業が2.2%減の30億36百万円、医療・ライフサイエンス事業が6.6%増の13億14百万円、機能事業が20.4%増の25億94百万円、通信事業が4.2%減の5億10百万円、主要製品の売上高計画は、ASA COLOR LEDが3.4%減の27億66百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が9.3%増の12億90百万円、卓球ラケット用ラバーが35.4%増の5億70百万円、RFIDタグ用ゴム製品が16.0%増の3億62百万円としている。

 下期に経済活動が広がり、市場回復や新規受注で増収を見込むが、withコロナ環境下で活動を広げるため販管費の増加を見込むため減益予想としている。ただし保守的だろう。原材料価格高騰に伴う販売価格転嫁や原価低減効果などで上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株価は反発の動き

 株価は5月の年初来安値圏から切り返して反発の動きを強めている。底打ちして出直りを期待したい。6月1日の終値は540円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円22銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1030円86銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約25億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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