地球と公転軌道を共有する小惑星、その軌道安定性は バルセロナ大の研究

2022年2月4日 15:27

印刷

ラグランジュ点の解説図 L4,L5の位置にトロヤ群小惑星が存在するとされている。 出典:NASA

ラグランジュ点の解説図 L4,L5の位置にトロヤ群小惑星が存在するとされている。 出典:NASA[写真拡大]

 恐竜絶滅の原因が小惑星であったことはよく知られているが、天体力学理論上、地球と公転軌道を共有する小惑星(専門家は"地球のトロヤ群小惑星"と呼ぶ)が存在することは、あまり知られていない。

【こちらも】トロヤ群の小惑星存在領域で捉えられた非常に珍しい彗星 NASA

 太陽と地球の引力のつり合いを考えた場合、ラグランジュ点と呼ばれる重力の安定点が2カ所存在する。この点をL4とL5で表すのだが、L4は地球の60度先に位置する点であり、L5は60度後ろに位置する点である。

 このような重力安定点では、地球の質量と比べ、約25分の1以下の天体が存在できる。SFの世界では、この位置にスペースコロニーを建設して人類が移り住むといったストーリーが展開されたりするが、科学者たちの間では、この位置で長い間小惑星探索が進められてきた。

 トロヤ群小惑星は、地球誕生直後に地球と同じ母天体から発生した可能性が高く、地球誕生当時の状態を現在も保っている天体として注目されている。

 イリジウムは地球誕生後間もなく、地表が高温で液状化し、その重さから中心核に沈み込み、地表には存在しない。トロヤ群小惑星は質量が小さく、表面が高温にならずに液状化を免れたため、表面にイリジウムが存在する。つまりトロヤ群小惑星で表面に転がっている石ころを調べれば、地球の中心核に沈み込んでしまっている地球誕生当時の成分が分かるのだ。

 Nature Communicationsで2月1日に公表されたバルセロナ大学の科学者らの研究論文によれば、トロヤ群小惑星は2011年までに2010TK7が初めて発見され、2020年12月12日には2番目の2020XL5が発見されたとしており、この2020XL5の軌道安定性について論じている。

 研究によれば、2020XL5は直径約300mで、少なくとも今後4000年間はラグランジュ点に居続けるが、永久にそこに安住している存在ではないという。

 また2010TK7も、2020XL5も地球の公転軌道面からの傾斜角が大きく、ランデブー対象として直接探査するには適さないという。一方でL4、L5のポイントには、未発見のトロヤ群小惑星がたくさん存在している可能性もあるとしている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事