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中国・嫦娥5号、月面で水の存在を直接確認 世界初
嫦娥5号着陸地点のコンテキスト画像と含水量。(c) LIN Honglei[写真拡大]
中国の月面無人探査機嫦娥5号は、2020年11月24日に打ち上げられ、12月16日に月面サンプルを地球に持ち帰ってきている。現在は月面で収集した様々な観測データとリターンサンプルの分析が進み、その成果が公表されつつある。
【こちらも】中国の月探査機「嫦娥5号」、月面からのサンプルリターンに成功
1月7日にScienceAdvancesで公表された研究論文によれば、嫦娥5号によって月面で初めて水の存在を直接確認するデータが得られたという。これまで月から持ち帰ったサンプルにより、月面に水が存在する間接的な証拠は得られており、月面での水の存在は確実視されていた。だが月面で直接その存在を確認するデータを観測したのは、初めてのことである。
月面においては、大気は非常に希薄であり、地球の大気圧と比べ100兆分の1以下に過ぎない。つまりほぼ真空に近いため、もし仮に月面で液体の水分が存在したとしても、瞬時に沸騰して蒸発する運命にある。また0度以下では水は氷るが、月面のように大気圧がほとんどゼロの場合、氷が昇華して直接気化する。そのため月面では、液体や固体の状態を問わず、水の存在を確認することは至難の業なのだ。
だが月面において、水の存在の可能性が皆無かといえばそうでもない。その理由は太陽風から水が生成される可能性があるからだ。太陽風が水の生成に関わるのは、太陽風に含まれる水素イオンが、鉱物に含まれる酸素イオンと結びつくことによる。
嫦娥5号が着陸した月面における、土壌のスペクトル観測による水の濃度推定値は120ppmだった。これは月面から持ち帰ったサンプルの測定結果にほぼ一致していたという。ただし、月面の土壌ではなく、小さな岩石のスペクトル分析値では180ppmに及んでいた。
この結果について研究者らは、太陽風によってもたらされる水の濃度が120ppm程度であり、岩石における分析値180ppmは、月面内部から水が供給されているためだと推定している。
いずれにせよ月の土壌1トンから100%水を回収できたとしてもたった120g、岩石からでもたった180gにしかならない。月面へ物資を送るための物流コストが1kgで1億円かかるとの試算もあることから、地球から運び込むよりは安いだろう。それにしても月面での水は地球に比べて、非常に高価なものなのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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