ソフトバンクGが久し振りの3連騰も、スケール”ちっちゃい”?

2021年12月31日 16:47

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 ソフトバンクグループ(SBG)の株価が、久し振りに3日連騰して21年を締めくくった。最近で3日以上連騰したのは、11月の11日~17日までの5営業日(土日除く)と10月7日~11日までの3営業日(同)以来という出来事だ。

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 但し、11月の11日~17日には合計578円の値を上げ、10月7日~11日には合計514円の値を上げていたのに対して、今回は合計214円だったからスケールは随分小さくなった。

 11月8日に開催された21年7~9月期の決算説明会で、連結決算の最終損益がマイナスの3979億円だったことを公表した孫正義会長兼社長は、当該決算を評して「真冬の嵐のど真ん中にある」と表現していた。だが同時に1兆円の自社株買いを発表したこともあって、翌日には終値で647円上昇の6808円を記録した勢いを維持して、11月17日には7132円の終値で気を吐いた。

 ところが、12月1日に米ドアダッシュが急落。中国政府の規制強化で滴滴出行(ディディ・中国配車サービス最大手)の株価が下落しことや、苦境にあるアリババ集団への連想が続いて、投資家の弱気の虫が目を覚ました。そこに既成事実化していた英半導体設計企業アームの米半導体大手エヌビディアへの売却問題に、米連邦取引委員会(FTC)が明確な計画阻止の方針を決定したと報じられたことが、決定打となった。

 FTCは、アームがエヌビディアへ売却されることにより競争環境が弱体化し、技術革新に深刻な影響を与えると指摘して提訴に及んだ。訴訟が22年8月に開始されることになったため、SBGの傘下ファンドによる最大400億ドル(約4兆5000億円)の売却計画が相当厳しい状況に追い込まれたという見方が急速に広まり、その後はダラダラと売り優勢の展開が続いた。

 21年大納会の終値が5434円だから、11月17日の7132円から見ると1698円の下落になる。1カ月半で20%超の値下がりは流石にこたえるだろう。

 SBGは今後、中国株への投資を控えて所謂リスク分散を進めると伝えられている。投資の王道に回帰することは喜ばしいが、問題は既に投資済みの案件がどう動くかということだ。

 新規上場狙いの未公開株が多いから、市場取引でさりげなく持分を減らすことは出来ない。相対で取引する相手がいたとしても、足元を見られて買い叩かれるのが関の山だろうし、そんな動きが話題になったら得になることはない。

 中国政府のスタンスが変わった以上、マイナスの影響は確実に表面化するだろうが、投資先企業の個々の努力が業績に結実する余地は非常に限られる。

 投資のカリスマだった筈の孫会長は、深刻化する米中対立の狭間で、何が出来るかという難題に挑むことになる。最近3日間の上昇には、孫会長の手腕に対する投資家の期待が込められていたと考えてもいいだろうが、3日合計で214円の上昇は如何にも迫力不足感が否めない。

 ユニコーンを成長企業に仕立てる手腕を発揮する以前に、今後は投資家注目の中で窮地脱出の離れ業を見事演じて欲しいものである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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