資産運用には破産リスクも 自己破産の正しい理解はもしもの時の守りに

2021年12月12日 16:12

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 乱高下する金融マーケットで投資(資産運用)をしている者には、借金苦にさいなまれ自己破産を選ぶ人も少なくない。もちろんコロナ禍で生活が困窮し、そのせいで自己破産をするケースも少なくないのだが、暴れる金融マーケットに翻弄されて負債を膨らませた人もたくさんいるのだ。

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 自己破産は、借金トラブルの最終解決策として存在している。これは、憲法における『国民が最低限度の生活をすることを保証する』上で、必須な権利でもある。もし今、投資の失敗などで大きな負債を抱え込み、生活が全く立ちいかない事態にある場合は、自己破産の選択肢も考慮すべきだろう。

 バブル期の日本社会では、主婦に至るまで財テク(資産運用)に走った時代だった。全く資産運用の知識もノウハウも持たなかった人たちが、『簡単に儲かるから』と怪しげな投資信託や不動産売買に財産をつぎ込んで、バブル崩壊ともに負債を抱え込んだ事実は歴史的大惨事として記録されている。

 ただしこの時は、自己破産を行使しなかった人が少なくない。その理由の1つには、『自己破産は人間失格』といった誤った認識が社会通念にあったからだ。そして借金地獄に落ち込み、厳しい取り立てに追われ、夜逃げをして身を隠したり、自殺してしまったりと悲惨な事件が枚挙にいとまがないほど起こってしまった。

 まずはっきりしておきたいのは、自己破産は国民全員が有する権利であり、正当な借金解決手段であることだ。決して社会で批判されることのない、社会人として責任ある解決手段の1つであることを理解しておきたい。

 また、自己破産は『人生で1度きり』の権利ではないことだ。破産者は選挙権やパスポートの取得を禁止されることもないし、全財産をはきだして弁償することもない。社会生活する上で必要な権利はそのまま与えられるし、生活に必要とされる最低限度の財産は残されることも知っておこう。

 もちろん、債務整理後は5年間(あるいは10年間)、融資を受けられず、クレジットカードやローンが組めない等のいわゆるぺナルティは受ける。その他にも制限される事項はあるが、それは破産者のその後の生活を整える身の守りだと考えることができるだろう。

 自己破産者の中には、その後生活保護を受けるケースも少なくはない。こちらも併せて理解しておきたい。生活保護も国民のまっとうな権利で、最低限の生活の糧や手段を国が無償で与えてくれるものだ。人生の落伍者になるわけではなく、再度人生を立て直すためのサポートと考えることができる。

 コロナ禍では、生活保護を受ける人が増えているが、経済的な危機は誰にでも起こりうるのだ。自己破産と生活保護、あまり受けたくはない制度だと思うかもしれないが、資産運用においては突発的な負債発生が十分起こりうるのだ。これを機に、具体的な内容を確認しておくのもいいだろう。(記事:TO・記事一覧を見る

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