入院生活を支える、エランとはどんな会社か

2021年9月10日 15:31

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 またぞろ自身の入院体験に基づく投稿をお許しいただきたい。3回の入院で私は、エランという企業(東証1部)を知った。入院に際し看護師からパンフレットを示され、「利用しますか」と問われた。いま思うに「利用して欲しい」という意図が含まれていたようにも思える(何故かは後述する)。

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 パンフレットには「CSセット」と記され、具体的に品物が印されていた。入院中に身に着ける院内着にはじまり、歯磨きセット(コップ・歯ブラシ・歯磨き剤)・複数枚のタオル・(院内用)履物・入れ歯入れ(洗浄剤付き)・白湯飲み器・テッシュペーパー・ウエットティシュetc日常生活の必需品、そう紙おむつもあった。

 「1日定額制で、例えば食事をこぼし院内着を汚せば新しいものに交換できる」という。私も紙おむつは除いて数点のCS(ケアサービス)品を利用した。退院後に送られてきた請求書を見て妥当な価格だと受け止めた。

 最大のメリットは、下着の類はともかく生活必需品を自前で持ち込み適宜交換・洗濯等で(家人の)手を煩わせなくて済む。また病院側にとってもCS品はエランが回収し自前のリネンサプライ専用洗浄施設で洗うため手間暇(コスト)がかからず、時節がらからして「院内感染」の懸念も払拭できる。

 エランは1995年に寝具販売事業で始まった。病院や介護施設向けにCSセット事業を開始したのは、2003年。全国に21拠点を構え21年3月末で「1627施設」で導入され、「月間の利用者29万3899人」に達している。

 事業拡大の背景には、高齢化社会がある。総務省の「人口推計―2021年1月報―」によると65歳以上の人口は3622万人、総人口の28.8%を占める。エランのキャッチコピーを流用すると「手ぶらで入所、手ぶらで退所」が持つ意義は大きい。

 そうした時代への便宜さが、収益動向にも反映されている。前12月期は「21.1%増収、38.6%営業増益、46.2%最終増益、株式分割を勘案すると5円増配14円配」。今期も「15.1%増収、11.7%営業増益、5.8%最終増益」で立ち上がり、5月13日の中間期開示と同時に「18.9%の増収(310億円)、20.8%の営業増益(25億円)、16.2%の最終増益(16億8000万円)」へ上方修正された。

 「エラン」は哲学用語とか。「生命の躍動・飛翔」を意味するという。14年11月の上場初値に対し本校作成中の時価は分割等を勘案した修正値で7倍近くに躍動している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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