ソフトバンクG、出資先2社で発覚した相次ぐ不具合 市場はどう動く?

2021年8月7日 16:37

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 ソフトバンクグループ(SBG)傘下のソフトバンク・ヴィジョン・ファンド(SVF)が出資している、会員制中古車レンタルアプリの米フェア・フィナンシャルが、抜本的な経営再建策を検討中と伝わっている。選択肢の中には破産申請も含まれているようだが、動向によっては出資者であるSVFに厳しい結果となることも想定される。

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 フェアのサービスはディ-ラーから中古車を買い上げて、アプリで会員に貸し出す中古車レンタルだ。利用者は5日前に通知することで、いつでもクルマを返すことが可能だ。2018年にSBGが出資を検討していた時期にはスコット・ペインター氏がCEOだった。

 フェアは、ライドシェアなどのモビリティサービスが進展することで、利用者がリースやローンなどの煩わしい手続きでクルマを所有することを嫌い、手軽に好みのクルマに乗る時代が到来すると見ていた。ウーバーとの連繋にも巧みで、ウーバーの運転手に、破格の低料金(週130ドル~)で提供していた。

 経営再建策を検討するに至った原因は明らかでないが、SBGが投資を検討する対象企業は新しい事業分野での大きなシェアの早期獲得を目指す余り、収支バランスを考慮しないケースが珍しくないため、資金運用上の齟齬が生じた可能性がある。現在CEOはブラッド・スチュワート氏に代わっているため、2年程の間にCEOが交代するような事態が発生していたことになる。

 懸念される出資先のもう1社は米ザイマージェンだ。フォーブスの報道によると、ザイマージェンは4月に上場したばかりの新興のバイオ企業だが、3日に共同創業者兼CEOであるジョシュ・ホフマン氏が退任すると発表した。同社は2021年には製品の売上が見込めないこと、2022年にもわずかな売上しか見込めないとしている。

 こうしたことが報じられた後、時間外取引でザイマージェンの売りが嵩み69%安を記録して、25億ドル(約2700億円)に及ぶ時価総額が溶けた。

 報道によると同社が市場に供給している製品は、フィルム素材の「ヒアリン(Hyaline)」のみだという。透明で耐久性があるポリマーフィルムであることから、折り畳みスマホのタッチスクリーン素材に重宝されるようだが、折り畳みスマホ自体の普及が進んでいない現状ではマーケットは知れている。

 2月に同社が米国証券取引委員会(SEC)に提出した目論見書によると、2020年の純損失が2億6200万ドルに上り、収益がわずか1300万ドルだったようだ。こんな状態で4月のIPOに臨んだ同社の姿勢や、支援したファンドに厳しい視線が向けられるのは避けられまい。

 孫正義氏に頭痛の種がまた増えた。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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