新星爆発によるリチウム生成量に多様性 京産大と国立天文台の研究

2021年7月8日 09:02

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新星爆発時のリチウム生成機構の模式図 (c) 国立天文台

新星爆発時のリチウム生成機構の模式図 (c) 国立天文台[写真拡大]

 原子番号3のリチウムは宇宙の中では水素、ヘリウムに次いで軽い元素である。このような軽い元素は従来、ビッグバンの際に大量に生成されたと考えられてきた。だが宇宙に現存する全リチウム量は、ビッグバンで生成されたと考えられている量の10倍程度あり、リチウム総量の9割に相当する部分の生成プロセスについては、謎のままであった。

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 一方で最近の研究では、宇宙誕生直後に生まれた古い恒星においても、大量のリチウムが生成された事実が判明している。

 京都産業大学は7日、このリチウムの生成過程の多様性に関する国立天文台との共同研究成果を発表した。国立天文台のすばる望遠鏡によって、いて座2015 No.3(V5669 Sgr)と名づけられた新星の観測したところ、史上8番目のリチウム生成現場を捉えることに成功したという。

 新星V5669 Sgrにおけるリチウムの生成量は、従来観測された新星におけるリチウム生成質量の数%程度しかないことが判明した。この事実は、新星におけるリチウム生成量には大きな(100倍程度)ばらつきがあり、リチウム生成現象には多様性が存在していることを意味している。

 ところで新星と呼ばれる現象は、新しく星が生まれる現象ではないことに注意していただきたい。新星とは比較的質量の大きな恒星が連星系となり、恒星(白色矮星)の表面で爆発的な質量放出が起きる現象を指す。

 京都産業大学によれば、新星現象における物理過程を再現した数値解析シミュレーションでは、これまでに実際に観測された新星におけるリチウム生成量を正確に再現できていないのだという。

 つまり、新星といえども様々なパターンがこの宇宙には存在しており、人類が見出したのはそのごく一部にすぎない。まだ解明がなされていないそれぞれのパターンを事細かに分類し、それぞれのパターンの宇宙における存在比を求めていかないと、この宇宙全体に存在するリチウムの生成原因の全貌はつかめないということである。

 京都産業大学の神山天文台は、日本を代表する新星研究グループであり、これまでにも様々な研究成果を収めているが、本研究でも今後の進展を大いに期待したいものだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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