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三菱ガス化学、環境変化に強い事業構造への転換で成長目指す
稼働を開始した水溶性天然ガスの生産設備。(画像: 三菱ガス化学の発表資料より)[写真拡大]
三菱ガス化学の連結子会社東邦アーステックは6月8日、新潟市で進めている水溶性天然ガスとヨウ素の生産設備工事に関して、第1期工事を終え、水溶性天然ガスの生産を一部開始したと発表した。今後も追加工事を進め、2026年に全ての設備を効率的に稼働させ、天然ガス年約2,000万立方メートル、ヨウ素約400トンを生産する見込みである。
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三菱ガス化学は、1971年に三菱江戸川化学と日本瓦斯化学工業が対等合併して発足した。
三菱江戸川化学は、1918年三菱グループの三菱製紙によって設立され、1927年にホルマリン、1933年に過酸化水素水(電解法)、1937年にプリント配線板用積載層材料の生産を、いずれも日本で初めて開始。一方の日本瓦斯化学工業は、1951年新潟県で天然ガス鉱区を入手して設立され、1957年に日本で初めて天然ガスを原料にアンモニアを生産し、1968年には世界で初めて高純度メタキシレンの生産を開始した。
2021年3月期の売上高は5,957億円。事業部門別の構成比は、メタノール・アンモニア系化学品やライフサイエンス系製品などの製造・販売を行う「基礎化学品事業部門」が54.2%、無機化学品や電子材料などの製造・販売を行う「無機化学品事業部門」が45.0%、運輸などその他部門が0.8%を占める三菱ガス化学の動きを見ていこう。
■前期(2021年3月期)実績と今期見通し
前期売上高は5,957億円(前年比2.9%減)、営業利益は前年よりも102億円増の445億円(同29.9%増)であった。
営業利益増加の要因としては、半導体向け薬液など無機化学品の好調で無機化学品部門が93億円、電力高騰などによりその他部門が25億円の増益に。一方、コロナ影響の販売減、原料市況の高騰、修繕費の増加で基礎化学品部門が16億円の減益であった。
今期は、コロナ影響を受けた製品の需要回復などにより、売上高6,400億円、営業利益480億円(同7.8%増)を見込んでいる。なお今期より「収益認識に関する会計基準」を適用するため、売上高前年比は記載していない。
■中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)による推進戦略
「環境変化に強い収益構造への転換」と「社会的価値と経済的価値の両立」により、2024年3月期に売上高7,300億円、営業利益700億円(対前期比57.3%増)を目指して次の戦略を推進する。
●1. 競争優位性と成長性を有する差異化事業の更なる強化
・超純過酸化水素のグローバル展開と光学樹脂ポリマーの生産能力増強。
・5G進展による半導体パッケージ用BT材料需要の取り込みと、芳香族アルデヒドの水島工場生産能力増強。
●2.研究体制の強化により、新事業の創出と育成の加速
・ICT、AI、ロボット、自動運転などDX技術の開発。
・食品保存技術の高度化。
●3.基盤事業の強化と不採算事業の整理、再編による事業採算性の改善
・高付加価値ポリカーボネートの販売比率向上。
・CO2排出の少ない地熱発電所の安定操業と水溶性天然ガス、ヨウ素の開発。
独自技術により化学にもとづく幅広い価値の創造を通じて、社会への貢献を目指す三菱ガス化学の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
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