仮想素粒子アクシオンが明らかにする宇宙の始まり カリフォルニア大学の研究

2021年6月11日 17:30

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 宇宙の始まりの際に放射された電波のことを、3K波あるいは宇宙マイクロ波背景放射(CMB;
cosmic microwave background)と呼んでいるが、この電波は宇宙のあらゆる方向からやってきているため、天球のどの方向を観測してもキャッチできる。そのスペクトル特性が、2.725Kの黒体放射に極めてよく一致しているために3K波とも呼ばれているわけだ。

【こちらも】果たして宇宙に始まりの瞬間はあったのか?

 この電波がビッグバンの瞬間と同時に放出されたという誤解が一般に広まってしまっていることを、読者の皆さんはご存じだろうか?実を言うと厳密にはこの3K波の光子は、ビッグバンの瞬間からおよそ40万年が経過したのちに発せられたものなのだと言う。つまり3K波をいくら詳細に調べたところで、厳密な意味では、宇宙の始まりの瞬間に何が起こったのかは解明ができない。

 カリフォルニア大学は、この問題に関して真の意味で宇宙始まりの謎に迫れるかもしれないアイデアを発表しており、6月7日アメリカ物理学会が発行する学術雑誌フィジカルレビューDに掲載された。そのアイデアは、仮想上の素粒子であるアクシオンなるものを想定して、それを観測できれば、宇宙の始まりの際に何が起きていたのかを解明できるというものである。

 宇宙に存在する謎の1つとして、「強いCP問題」がある。この問題に関する詳細な説明は紙面の関係で割愛するが、結論だけ言うと、なぜ中性子の電気双極子モーメントがまだ測定されていないのかという疑問を指す。アクシオンはこの疑問を解くカギを握る存在として、研究者たちからの注目を集めているのだ。

 アクシオンの質量は電子の約1億分の1以下という非常に微小なもので、今回発表された論文は、このアクシオンに類似した素粒子が、宇宙が誕生して1秒後に放出された可能性があると主張している。また最近の別の研究では、アクシオンが暗黒物質の有力な候補ではないかとも考えられており、アクシオンの研究を進めていくことで宇宙誕生の謎の解明とともに、ダークマターがなぜ宇宙の中でかなりの質量比をもって存在しているのかを解明できるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワードダークマター暗黒物質ビッグバン

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