変異株含む新型コロナの中和抗体を10日で取得 国内初の技術開発 広島大ら

2021年5月18日 16:40

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中和抗体の取得工程(画像:京都大学の報道発表資料より)

中和抗体の取得工程(画像:京都大学の報道発表資料より)[写真拡大]

 広島大学や京都大学などの研究グループは14日、多重変異株を含む新型コロナウイルスについて、10日で、中和抗体を取得できる技術を開発したと発表した。中和抗体は新型コロナウイルスに対する特効薬として期待されており、研究グループでは、実績のある製薬会社と連携し、できる限り早期に今回取得した中和抗体の医薬品化を図りたいとしている。

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■10日で中和抗体を取得する技術

 中和抗体には、ウイルスに結合して細胞への侵入を防ぎ、増殖させないようにする働きがある。そのため、感染者の重症化を防ぎ、その回復を早める。だが中和抗体を獲得したとしても、感染者の中にはその活性が低い人もいる。

 そこで研究グループは、さまざまな感染者の血液を分析。その結果、感染から2週間以上経過し、かつ、重症化した感染者からは、活性の高い中和抗体が効率的に得られることが解ったという。

 研究グループは、まずこのような感染者から得られた血液をもとに、独自に開発した技術を使い、抗体をつくる細胞を分離し、その遺伝子を抽出。抽出した遺伝子から人工的に合成した抗体の中から、新型コロナウイルスに強く結合する中和抗体を選別した。

 予め血液サンプルを選別し、また独自に技術を開発することで、以上の工程に要する期間はわずか10日となった。

■多重変異株にも有効

 研究グループによれば、今回この技術を用いて実際に取得された32種類の中和抗体のうち、97%の中和抗体はイギリス型変異株にも結合し、有効であることが確認されたという。

 また63%は、複数の変異が積み重なった多重変異株である南アフリカ型変異株にも結合し、有効であることが確認された。多重変異株にも有効な中和抗体を取得する技術開発は、国内では初という。

 研究グループでは、インド型変異株などこれから新たな脅威となりうる多重変異株についても、中和抗体の取得を進めると共に、実績のある製薬会社と提携し、できる限り早期に今回取得された中和抗体の医薬品化を図っていきたいとしている。

 ワクチンの開発で後れを取り、新型コロナの収束が見通せない我が国において、国内で生産できる特効薬が開発されれば、まさにゲームチェンジャーとなる可能性もあるだろう。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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