おうし座かに星雲の中心星からX線パルス増光を初めてキャッチ JAXA

2021年4月14日 07:49

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かに星雲とかにパルサーの多波長合成イメージ(提供:NASA)

かに星雲とかにパルサーの多波長合成イメージ(提供:NASA)[写真拡大]

 彗星と紛らわしい存在である星雲や星団を集めて、18世紀にフランスの天文学者シャルル・メシエによって作られたのが、メシエカタログだが、その最初に出てくるのがおうし座のかに星雲M1である。この星雲は、1054年に超新星爆発を起こした恒星の残骸で、それによって拡散したガスが、爆発のあとに残った中性子星が放つ光を反射して輝いており、その形がかにとよく似ていることから、この名称で親しまれている。またこの時の超新星爆発は鎌倉時代の公家である藤原定家が、自身の日記「明月記」で取り上げており、科学好きだけでなく、古典好きの人たちにもよく知られた存在であろう。

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 このかに星雲の中心星は、かにパルサーとも呼ばれ、規則正しい周期で電波パルスを発している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9日、この星が時折見せている電波パルスの増光現象が、これと同期する形でX線でも起こっていることを発見したと発表した。

 中性子星とは、1立方センチ(角砂糖1個の体積に相当)の中に1億トンもの物質が詰まっている超高密度星である。かにパルサーは半径10kmの中に太陽の1.4倍もの質量が詰まっており、超高速で自転している。その自転周期に応じた周波数の電波が地球に届いているが、昔はその電波周期が規則正しいため、地球外知的生命体が発した電波と間違われたこともあった。

 この正確な電波パルスが時折、10倍から1000倍程度に強まる現象があり、これを巨大電波パルス(GRP)と呼んでいるが、GRPがなぜ起きるのかは謎である。銀河系には約2,800個の中性子星があるが、GRPが起きているものは十数個しかない。

 また、GRPはかつて電波でしか観測されなかったが、より波長の短い可視光でもGRPに同期した増光が2003年に初めて発見されたため、可視光よりもさらに波長の短いX線やガンマー線でも、GRPに同期した増光現象があるのかどうかに関心が集まっていた。だが、過去20年間複数の研究チームが観測を試みたが、そのような現象は観測できないままであった。

 今回観測に成功したX線の増光量は4%に過ぎないが、X線は電波と比べ、波長が短く、より高いエネルギーを持っている。そのためGRPの発生時に放出されるエネルギー量は、これまで考えられていたよりも数百倍以上大きいことが分かった。この発見は中性子星のGRP発生メカニズムの解明に役立つと期待されているという。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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