安価で安全にコロナウイルス用N95マスクを再利用する方法を開発 東大

2020年12月20日 18:16

印刷

N95マスクの構造(a)と、ポリプロピレンの静電気を測定するためのセットアップ(b)(画像: 東京大学の発表資料より)

N95マスクの構造(a)と、ポリプロピレンの静電気を測定するためのセットアップ(b)(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 新型コロナウイルス感染症が流行していることから、医療機関向けのN95マスクの需要が高まっているが、その供給は不足している。そこで世界中の研究機関がN95マスクを再利用する方法を探っているが、性能を保ったまま滅菌することは難しいとされてきた。東京大学の研究グループは18日、そのような課題を克服する安価で安全な方法を開発したと発表した。

【こちらも】新型コロナに対するマスクの防御効果と使用法は? 東大が検証結果を発表

 N95マスクは静電気を帯びたポリプロピレンの不織布が主な原料である。不織布は通気性が高いため、マスクにした場合に息をすることは可能であるが、静電気によってウイルスなどをフィルターすることが可能である。

 「N95」という名称は防塵マスクの規格を示しており、捕集効率が95%以上であることが保証されている。その性能から特に医療機関では、コロナ流行下でその需要が高まっているが、日本国内では製造できる箇所が限られており供給が不足していた。

 このような背景からN95マスクの再利用が望まれてきたが、滅菌のために洗浄などを行うとマスクの静電気は失われてしまう。つまり、N95マスクのフィルター性能を保ったまま再利用することは簡単ではなかった。

 そこで東大の研究グループが着目したのが、ヴァンデグラフ起電機と呼ばれる装置で静電気をリチャージする方法である。ヴァンデグラフ起電機は安価かつ安全であるため、科学博物館などの静電気のデモなどにも使用されている。

 煮沸して静電気が完全に失われたマスクをヴァンデグラフ起電機でリチャージすることによって、フィルター性能が復活することが確認されたという。

 今回の実験においては煮沸のときにマスクが変形するなどの課題も残されているが、N95マスクの再利用法が確立される可能性が示された。また、ヴァンデグラフ起電機を用いる手法はマスク以外にも応用可能である。例えば空気清浄機のフィルターなども同様のメカニズムで再利用可能であるため、ゴミが減りサステイナブルな技術への期待もされる。

 今回の研究成果は17日付の「Soft Matter」誌オンライン版にて掲載されている。

関連キーワード

関連記事